民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「千人行列」 マイ・エッセイ 4

2013年11月05日 00時25分03秒 | マイ・エッセイ&碧鈴
 「千人行列」

                         
 私が所属している民話の会は「宇都宮伝統文化連絡協議会」に入っている。
郷土芸能や伝統工芸、郷土料理の担い手、それに民話語り部の集まりで組織された会である。
 今年の五月十八日、そこの主催で、日光の千人行列(正式には百物揃千人武者行列)を見学するツアーがあった。私は前から一度見てみたいと思っていたので参加し、専門家の解説つきで千人行列を充分楽しむことができた。
 そして十月十六日、日光、霧降高原のホテルで一泊する懇親会があった。総勢十七人(男、十三人、女、四人)みんな宇都宮近辺に住む、同じ趣味を持つ仲間たちだ。朝まで台風二十六号(伊豆大島で大変な被害があった台風)が吹き荒れていた午後、ホテルの屋上の露天風呂から眺める景色は格別で、遠く、東京のビルディング街が見えたのには驚きだった。
 次の朝、みんなで朝食をとっていると、女性のひとりが「今日は千人行列やってるから行ってみない?」と言う。私が「えっ、千人行列、春に行ってきたよ」って言うと、「秋にもやるんだよ」と言う。「へぇー、知らなかった」結局、行くことに決まって、私もつきあうことになった。六十余年生きてきて、今年初めて見れたというのに、春と秋の両方を見れることになった。けっこう早めに着いたので観光客はそれほどいなかったが、始まる時間になると一キロほどの道の両側にびっしりと人だかりができた。仲間たちは最前列に場所を確保している。私は春に見ているので余裕、後ろの石垣にすわって、隣の地元から来たというおばさんとずっと話をしていた。そのせいで、仲間のみんなは新聞の写真に出たり、テレビに写ったりしたのに、私はそのチャンスをのがしてしまった。まぁ、当事者にしかわからないような米粒ほどの大きさだし、後姿なので、そんなに悔しくはない。
 それからまもなくの十月十九日は宇都宮伝統文化連絡協議会が主催する「伝統文化フェスティバル」が宇都宮城址公園であった。私は「昔遊びを体験」というブースでスタッフとして手伝った。手伝ったといってもベイゴマや竹馬をして、みんなと遊んでいただけだったが。
 その次の日、十月二十日は「宇都宮城址まつり」で社参行列に参加した。一昨年に続いて二度目の参加。だが、あいにくの雨模様、主催者は決断に苦労しただろう。結局、市役所から城址公園までの行列となった。距離にして二百メートルくらいか。それでも、風邪をひかせては大変と、行列に参加するのは、体力に自信のある人だけでいいと言う。私はリタイアを選んだ。
 行列を見学し、駐車場にしてある一条中学の校庭に戻った時、六十台ほど停めてあった車の中で、すでに帰った車は二台しかなかった。私より年上もだいぶいたはずなのに、みんな元気いいんだな、オレが参加したら「千人行列」が「仙人行列」になっちまう、と自嘲して家路に着いた。

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