民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「蟹(さる)のかたき討ち」 リメイク 2 by akira

2012年05月02日 21時19分08秒 | 民話(リメイク by akira)
 オレがちっちゃい頃 ばあちゃんから 聞いたハナシだ。
ほんとかうそか わかんねぇハナシだけど ほんとのことだと思って 聞かなきゃなんねぇ。

 むかしの ことだそうだ。

 波が打ち寄せる海岸に 一匹の蟹(かに)さんが住んでいたと。
毎日、海の水をくんできては (鉄の)ナベにあけ、また 海の水をくんできてはあけてを くり返し、
一杯になると、それを煮つめては ちっとばかしの塩をとって 暮らしていたと。
 そんなことしたって、たいした金になるわけじゃねえけどな、
なんにもしなけりゃ、一銭にもなりゃしねえ、
蟹(かに)さんは 毎日 もくもくと 海の水を運んでいたと。

 蟹(かに)さんは 貧しいけれど 一生懸命 生きていたんだ。

 そんな ある日のこと 蟹(かに)さんが(浜辺を)歩いていると おにぎりを見つけたと。
「これはいいものを見つけた。うちで ゆっくり 食べよっと。」って、運んでいると、
山から 猿(さる)のヤツがやってきて、
「おっ、うまそうなの持ってんじゃねぇか、オレに寄こせ。」って、そのおにぎりを 取ってしまったと。
「猿(さる)さん、ひどい!」(って、言うと)
「その代わり、これをやるわい。」って、柿のタネを投げつけてな、
「それを蒔(ま)けば、毎年 柿(の実)が食えるわい。」って、行ってしまったと。

 蟹(かに)さんは 柿のタネを持って帰ると 庭のすみっこに蒔(ま)いたと。
そして 毎日 水をやり、肥やしをやりながら、
「早く、芽を出せ、柿のタネ。(可愛い声で、歌うように)
出さねぇと ハサミでほじくんぞ。(脅かす声で)」って、声をかけていたと。
柿のタネは ほじくられちゃ かなわんって 思ったのかな、ちっこい芽を出したと。

 「よぉし、いい子だ。」って、言いながら、また 水をやり、肥やしをやりながら、今度は、
「早く、木になれ、柿の芽や。(可愛い声で、歌うように)
ならねぇと ハサミでちょん切るぞ。(脅かす声で)」って、声をかけていたと。
柿の芽は ちょん切られては かなわんって 思ったのかな、大きな木になったと。

 「よぉし、その調子、調子。」って、言いながら、また水をやり、肥やしをやりながら、今度は、
「早く、実がなれ、柿の木や。(可愛い声で、歌うように)
ならねぇと ハサミでぶっ切るぞ。(脅かす声で)」って、声をかけていたと。
柿の木は ぶっ切られては かなわんって 思ったのかな、(一杯の)柿の実を ならせたと。
 
 「わぁーい、わぁーい。」蟹(かに)さんは うまそうな 柿(の実)を見上げて 嬉しくなったと。
そして さぁ、食おうと思って、はい登ったけど、
蟹(かに)さんの横ばいでは なかなか登れるもんじゃねぇ。
しゃがしゃが、登っちゃ落ち、しゃがしゃが、登っちゃ落ちを 何度もくり返していたと。

 すると 山(の上)から それを見ていた 猿(さる)のヤツが 山を下りてきて、
蟹(かに)さんに言ったと。
「ほうら、うまそうな柿(の実)がなったじゃねぇか。オレの言った通りだべ。」
そして するっするっと 木にかけ登ると、むしゃむしゃ 柿(の実)を食い始めたと。
「こりゃー、うめぇ。・・・ちょうど 食べごろじゃわい。」
自分ひとりで 食ってばっかりで、ちっとも 蟹(かに)さんに くれようとしないんだと。

 「オイラにもおくれよぅー。」蟹(かに)さんが たまらず言うと、
猿(さる)のヤツ、食い意地がはってるもんだから、全部 自分で食いたくなっちまった。
そんで、蟹(かに)さんにやるのが惜しくなって、まだ 青くてかたい柿(の実)を、
「これでも くらえっ!」って、蟹(かに)さんに投げつけたと。
それが 蟹(かに)さんの背中に当たって、蟹(かに)さんは、ぶくぶく泡ふいて 死んでしまったと。

 「ああ、食った、食った。うまかった(うしまけた)。」って、猿(さる)のヤツ、山へ帰って行ったと。
すると 死んだ蟹(かに)さんの甲羅(こうら)の下から、
ずっく ずっくと たくさんの子蟹(こがに)が 生まれてきたと。

 「悲しんでなんかいられない、生きていかなきゃ。」
 
 子蟹(こがに)たちは 力をあわせて、畑をこしらえ、キビのタネを蒔(ま)いて 育てたと。
キビが実ると 子蟹(こがに)たちも立派な大人になった。
そして キビの実で きびだんごを作って、それを腰にぶらさげて、
「さあ、みんなで 親のかたき討ちに行こう。」
蟹(かに)の大将を先頭に 猿(さる)のいる山、猿の番場(ばんば)に向かったと。

 すると(向こうから)熊ん蜂(くまんばち)が ブーン ブーンと やってきた。
槍(やり)をかまえて 勇ましい。
「やあ、やあ、蟹(かに)さんたち、みんなそろって どこ行くの?」
「これから 猿(さる)のヤツを やっつけに。」
「そうか、(猿のヤツには)ひどい目にあったからね。
ところで 腰につけているものは なんだい?」
「きびで作った きびだんご。ひとつ食べれば 百人力。」
「オイラにも ひとつおくれ。仲間になろう。」

 熊ん蜂を仲間に 向かっていると(今度は)いが栗(ぐり)が ころっ ころっと やってきた。
針の山が 鎧(よろい)みたいで 凛々(りり)しそう。
「やあ、やあ、蟹(かに)さんたち、みんなそろって どこ行くの?」
「これから 猿(さる)のヤツを やっつけに。」
「そうか、(猿のヤツには)ひどい目にあったからね。
ところで 腰につけているものは なんだい?」
「きびで作った きびだんご。ひとつ食べれば 百人力。」
「オイラにも ひとつおくれ。仲間になろう。」

 熊ん蜂、いが栗を仲間に、向かっていると 石臼(うす)が どすん どすんと やってきた。
がっしりした体つきが 頼(たの)もしい。
「やあ、やあ、蟹(かに)さんたち、みんなそろって どこ行くの?」
「これから 猿のヤツをやっつけに。」
「そうか、(猿のヤツには)ひどい目にあったからね。
ところで 腰につけているものは なんだい?」
「きびで作った きびだんご。ひとつ食べれば 百人力。」
「オイラにも ひとつおくれ。仲間になろう。」

 熊ん蜂、いが栗、石臼を仲間に加え、
蟹(かに)さんたちは 意気揚々と 山へ向かった。
猿(さる)の番場(ばんば)が見えてきた。

 「ちょっと ここで待ってて。様子を見てくる。」熊ん蜂どんが 飛んで行った。
やがて 戻ってくると
「今はいないけど、すぐに帰ってくるだろう。いろりに鍋(なべ)がかかってた。」

 「どうやって やっつけようか。」蟹(かに)の大将が言った。
「オイラにいい考えがある。みんな こっちにおいで。」石臼どんが みんなを集めて言った。

 いが栗どんは いろりの灰の中に隠れていて、そうして・・・(ごそごそと 耳打ちしたと)
「そっか、わかった、まかせときっ!・・・オイラ 火の中 大好きだい。」

 熊ん蜂どんは 味噌(みそ)がめのフタに隠れていて、そうして・・・(ごそごそと・・・)
「そっか、わかった、まかせときっ!・・・オイラ 小さいから 見つかるまい。」

 オイラは 屋根の上にのっかってて、そうして・・・(みんなに ごそごそと・・・)

 蟹(かに)どんは 外にある 水がめの中に隠れていて、そうして・・・(また ごそごそと・・・)
「そっか、わかった、まかせときっ!・・・水の中なら こっちのもんだい。」

「さぁー、みんな きびだんごを食べておくれ。・・・元気を出して出陣じゃ。」
蟹(かに)の大将の掛け声で、
「エイ! エイ! オー!」

 猿(さる)の番場に着くと、(打ち合わせしたように)みんな それぞれの持ち場に 散って行った。

 やがて 猿(さる)のヤツが ばたっばたっと 駆け込んできた。
「おおー、さむっ、さむっ!」いろりのふちにしゃがんで 火箸(ひばし)で 火種をほじくった。

 すると いが栗どんが パーンって はじけて(勢いよく)猿(さる)のヤツのおでこにすっとんだ。
「アチチチ!」猿(さる)ヤツ、おでこを手で押さえながら、
やけどにゃ味噌(みそ)だと、味噌がめのフタをあけた。

 すると フタに隠れていた 熊ん蜂どんが 「待ってました」と、
猿(さる)のヤツのおしりに 「ブスッ!」と 槍を突き刺した。
「ギャー!こりゃ、たまらん。」猿(さる)のヤツ、おしりを両手で押さえて 外へ 飛び出した。
 ところが あわてていたから 敷居につまづいて、「バタッ!」って、すっ転んだ。

 そこに 屋根の上にいた 石臼(うす)どんが 「ドッスンコ!」って 飛び降りた。
猿(さる)のヤツ、石臼(うす)どんに のっかかられて ぺっしゃんこ。

 そこを 水がめに隠れていた 蟹(かに)さんたちが いっせいに飛び出して、
猿(さる)のヤツのおしりを ハサミでチョッキン、チョッキン、まる裸。

 猿(さる)の(ヤツの)おしりが 真っ赤っか なのは このせいだとさ。

 おしまい(めでたし めでたし)


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