民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「醒睡笑(せいすいしょう)」 安楽庵策伝 宮尾 興男

2016年09月01日 00時04分03秒 | 古典
 「醒睡笑(せいすいしょう)」 安楽庵策伝 宮尾 興男(よしお)訳注 講談社学術文庫 2014年

 56 (P-133)小僧あり。小夜(さよ)ふけて。長棹をもち。庭をあなたこなたふりまはる。坊主是(これ)を見つけ。それは何事をするぞととふ。空の星がほしさに。かちをとさんとすれと(ど)も。落ちぬといへば。さてさて鈍なるやつや。それ程さくがなふてなる物か。そこからは棹がどどくまい。やねへあがれといはれたおでしはさも候へ。師匠の指南有がたし

 星ひとつ見つけたる夜(よ)のうれしさは
 月にもまさる五月雨のそら

 (注)底本の本文には多くの「。」がある。句点の「。」ではなく、読むための間を取る、間を空けるためのしるしである。

 <現代語訳> ある僧の弟子がいた。夜更けに長棹をもって、庭のあちらこちらを振りながら動き廻っている。これを住職が見つけて、「その長棹で何をしているのだ」とたずねる。弟子が、「空の星がほしいので、たたき落とそうとするが、落ちない」とこたえると、「いやはや間抜けなやつだなあ、そんなことの考えが浮かばないで、いいものか。そこからでは棹が届くはずがない。屋根へあがれ」といわれた。弟子なりの考えしか及ばないのは仕方ないが、住職の教えはありがたいものだ。

 星一つを見つけた夜の嬉しさは、月の美しさを超えるほどの五月雨の空である

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