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『たけくらべ』の人々 その5  田中 優子

2015年09月19日 00時16分19秒 | 古典
 『たけくらべ』の人々 その5  田中 優子

 田中屋正太郎は美しい弱気な少年だ。3歳のときに母を失った。父親は田舎の実家に引っ込んでしまい、質屋はそれ以来営業していない。町内一の金持ちの家に、64歳の祖母とふたりきりで暮らしている。祖母は大きな髷を結って猫なで声で金貸しをする。取立てが厳しく、色気たっぷりのその媚びゆえに、町内の評判はすこぶる悪い。借金の取立てには正太郎もかり出されていて、正太郎はそれを苦にしている。ゆくゆくは質屋を復活しよう、と正太郎は思っている。しかし今は、ともかく寂しい。美登利を姉と思い慕っているが、それは女性への恋慕の気持ちと重なっている。ここには、金銭に価値を見出せず、失った家族の愛を求めながら、孤独に生きる少年の姿がある。

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