民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「講座マニア」 マイ・エッセイ 11

2015年01月11日 23時08分43秒 | マイ・エッセイ&碧鈴
 「講座マニア」 マイ・エッセイ
                                                 
 一枚のチラシがその後のわたしを変えた、と言ってはおおげさだろうか。それは、みやシニア活動センターが主催する「シニア世代の地域デビュー講座」の案内チラシだった。全四回、仕事をリタイアした人を対象に、シニア世代を明るくいきいきと暮らすにはどうしたらいいか、一緒に考えようという講座である。
 二年前の十一月、わたしはシルバー大学を卒業してボンヤリしていた。
(これじゃ、いかん)
 新しい刺激を求めて、受講を申し込んだ。
 第一回目の講座のとき、自己紹介のコーナーがあり、参加者のひとりがあいさつした。
「生涯学習センターの『講座マニア』です」
(講座マニア? へぇー、そんなのがあるんだ)
 初めて聞く言葉だった。それまでわたしは生涯学習センターというものがあることさえ知らなかった。宇都宮には中央、東、西、南、北、河内、上河内と七ヶ所あり、その他にもいろんなところで生涯学習の講座をやっていることは後で知ることになる。
 それから、講座の案内チラシを注意して見るようになり、最初に見つけたのが、上河内生涯学習センターの主催する「ライフアップセミナー・イン・かみかわち」の講座だった。全八回、毎回違ったテーマの講座である。その中に気になるテーマがいくつかあったのと、また生涯学習とはどんなものかという興味もあって受講することにした。と言えば聞こえはいいのだが、ほんとうのことを言えば、
(無料だし、まぁ、ヒマつぶしになればいいか)くらいの、軽い気持ちだった。
 講座の日を迎えて、浮き浮きした気分と若干の不安を胸に会場に行った。受付に四、五人立っていて、その中にどこかで見た顔があった。向こうも同じ思いだったのだろう。お互いにどこであったのか思い出そうとしている空白の間があった。
「シルバー大学? 」
 ほとんど同時に同じ言葉が出た。そう、シルバー大学の同窓生だった。クラスは別だったが、二年も通っていれば顔くらいは見ている。話がはずむうち、この講座は運営委員と呼ばれる人たちが企画していて、彼もそのうちのひとりということがわかった。
 月に一回の講座を受講しているあいだ、時間の許すかぎり、あっちこっちの生涯学習の講座を受講しまくった。無料の講座だけではものたらず、有料の講座も受講した。わたしはまさに「講座マニア」になっていた。 
 上河内の講座が終わるころ、同窓生から声をかけられた。
「一緒に運営委員をやってみないか? 人が足りなくて困っているんだ」
(オレなんかにできっかな)
 不安もあったが、ただ受身で参加しているより、もっと積極的に参加してみたい気持ちにもなってきていて、やってみることにした。
 運営委員になって、いろいろな集まりに参加しているうち、生涯学習センターのシステムもだんだんわかってきた。運営委員制でやっているのは「上河内」だけで、ほかではコーディネーターと呼ばれる人がやっている。名前が違うだけで、やっていることはほとんど変わりはない。 

 去年の六月、「中央」の主催で「コーディネーター養成講座」があった。
(おっ、グッ・タイミング)
 わたしは運営委員としての仕事にプラスになると思って受講した。全八回の講義と、実際に講座を企画する実習を修了して、コーディネーターの資格を取った。一緒に学んだ十五人の受講生はそれぞれ希望のセンターに所属して活動することになった。わたしは一番近い「東」を選んだ。
 コーディネーターになってよかったと思うことは、他の人はどんなことに興味を持っているのか、関心を持つようになったことである。頭の上に情報をキャッチするためのアンテナがのっかった、と言ったらいいだろうか。いままで自分の興味あることにしかほとんど関心がなかったわたしには、画期的なことである。

 宇都宮市教育委員会が主催している「宇都宮市民大学」という講座がある。年に二回、前期(五月~七月)と後期(十月~十二月)があり、それぞれ、「ふるさと地域学」、「今を読み解く現代社会」、「暮らしを彩る教養・文化」、「コミュニケーション学」、の四つの専門的なコースがある。こちらは有料で、一回の講座が五百円、それに講座回数倍が受講料となる。
 この講座を企画するのもコーディネーターの仕事のひとつ。ひとりで、またはグループを組んで、まず講座企画書を提出する。書類審査があり、それをクリアすると、次は有識者で組織された選考委員の前でプレゼンテーションを行う。そこでゴー・サインが出て、はじめて企画が決まる。
 生涯学習センターの講座とくらべて、ぐっとハードルが高いので、参加するメンバーは限られている。
 今年の夏、この企画にチャレンジしようと、養成講座で一緒だった七人が集まった。
 グループ名は「宙」と書いて「そら」。いま、来年前期の講座を企画しようと、みんなの知恵を出しあっている。