民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「瓜姫子」 宮本 常一

2013年10月04日 00時25分24秒 | 民話(昔話)
 「瓜姫子」  周防(すおう)大島 昔話集  宮本 常一 著  河出書房新社 2012年
        昭和31年に大島文化研究連盟によって、謄写印刷で発行されたものの復刻版。 

 昔、あるところに、爺と婆(ばい)とがあった。

 爺は山へ木をこりに行き、婆は川へどんだ(ぼろ布・作業衣)を洗いに行った。
婆が川でどんだを洗いようると、上の方から大けな瓜(うり)が とんぷくとんぷく 流れて来た。
婆がそれをとって食うてみると、あんまりうまいけえ、
「も一つ流れてこーいや、じいにとてんでやァろーけえ」と、言った。

 すると、また、とんぷくとんぷく 流れて来た。
婆はそれを拾うて、また、ぐじぐじぐじぐじぐじいっと、食うてしもうた。
それから、また、
「も一つ流れてこーいや、じいにとてんでやァろーけえ」と、言った。

 すると、また、とんぷくとんぷく 流れて来た。
婆はそれを拾うて、また、ぐじぐじぐじぐじぐじいっと、食うてしもうた。
それから、また、
「も一つ流れてこーいや、じいにとてんでやァろーけえ」と、言った。

 すると、また、とんぷくとんぷく 流れて来た。
今度は食わずに家へ持ってかえって、戸棚の中へしもうておった。

 昼時分になって爺が山から戻って来た。
「婆、婆、はらがへってどもならん。何か食うものはないか」と、聞いた。
婆はさっそく 瓜を食わせてやろうと思って戸棚をあけた。

 すると、そこには美しいお姫さまが歌をうたいながら機(はた)を織っていた。

 きたんたたん ばったんたん
 三日に三反 ちゃんころりん
 ばーい くーだ(管)がないけえ 巻いてくれ
 はさみがないけえ とってくれ

 それでおしまい

 (宮本常一の)母から聞く、東和町長崎