民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「藁(わら) 十六把」

2013年02月26日 00時10分58秒 | 民話(昔話)
 「藁(わら) 十六把」 「昔話に学ぶ生きる知恵」 2  藤田 浩子

 むがぁし まずあったと。

 あるところに お大尽様の家あって 
お大臣様の家の娘も年頃になったので婿(むこ)探していたと。

 したが この家の婿になるには 知恵のある男でなければならねぇというわけでな
門口(かどぐち)に一把(いちわ) 藁(わら)ぁ掛けておいたんだと。

 ほぉで この藁(わら)を十六把(じゅうろっぱ)にできる者がいたら 
その男を婿にとるから と そういう看板かけておいたんだと。

 したが その村の男たち
「なんぼ考えたって手品使いでもなければ 一把を十六把にすることはできねえ
そんな無理なことはできねえ」
と あきらめていたんだけんども 一人の男が
「ほんじは おら十六把にしてみっから」
と そうゆって その家さ入(へぇ)っていったそうな。

 ほおで 旦那様が
「十六把にしたか」
と 聞かれたもんで
「へえ ちょこっと 入(へぇ)れば にわ(庭) ござる
にわの隅には くわ(鍬) ござる
婆様(ばさま)のひたいにゃ しわ(皺) ござる
門に いちわ(一把) で じゅうろっぱ(十六把)」

 と こうゆったんだと。
庭(にわ)のところに入っていくと その隅っこのほうに 畑で使う鍬(くわ)が置いてある。
縁側で針仕事をしている婆様(ばさま)の額には皺(しわ)がある。
それを歌って 全部で十六把にしたんだと。

 ちょこっと 入(へぇ)れば にわ(庭・二把) ござる
にわの隅には くわ(鍬・九把) ござる
婆様(ばさま)のひたいにゃ しわ(皺・四把) ござる
門に いちわ(一把) で じゅうろっぱ(十六把)

 足し算の話でした。

 おしまい