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「ならぬことはならぬこと」 

2013年02月16日 00時14分38秒 | 雑学知識
 「ならぬことはならぬこと」 

 会津武士(上士)の子は6歳になると、居住地域ごとに「什」という組織に入れられます。
「什」と書いてジュウと読みます。
什とは「十人」を一単位とする組織のことですが、別に十人ではありません。
地域ごとに8つに分けられているので、人数はまちまちでした。

 この什には身分差別は全く、ありませんでした。
例えばどんなエリート嫡子坊ちゃんから、無職浪人の末息まで同じ待遇で扱われたのです。
そして、その「什」が何をするのかというと単なる「遊び友達」なのです。

 子どもは毎日、当番の家に集まります。
そして最年長の什長の指示にしたがって「什」の誓ひ(掟)」というのを大声で復唱します。
「什の誓ひ」とは以下のとおりです。

一、年長者の言ふことには背いてはなりませぬ。
一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ。
一、虚言(ウソ)を言ふ事はなりませぬ。
一、卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ。
一、弱いものをいぢめてはなりませぬ。
一、戸外でモノを食べてはなりませぬ。
一、戸外で婦人と言葉を交へてはなりませぬ。

 ならぬ事はならぬものです。

 戸外で話をしてはならぬという婦人は母親、姉、妹にも当てはまります。
全ての婦人なのです。
 しかし、御年6歳にして「卑怯な振る舞い」と言うのはどこまでの認識があったのでしょうか。
外でお祭りの団子も食べられないのでしょうか。

 最後の「ならぬことはならぬものです」って締めくくりがまた一段と厳しいですよね。
しかし、この「什の誓ひ」を破ったものにはちゃんとそれなりの制裁があるのです。
軽いのは「しっぺ」やら重いのは「シカト」まであります。
幼いながらもしっかりと「罪と罰」を身につけさせられるのです。

 こうして、会津の少年達は4年間を「什」で過ごし、
10歳になると藩校「日新館」へと入学していくのです。