アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

これを機に相撲界から封建制の残滓一掃を

2007年10月25日 08時26分22秒 | 戦争・改憲よりも平和・人権
 大相撲・時津風部屋所属の新米力士死亡事件について少し書きます。当該部屋の序の口力士「時太山」(本名:斎藤隆さん)が死亡するキッカケとなった、激しいぶつかり合い稽古「かわいがり」の是非を巡る議論が続いています。曰く「”かわいがり”は愛のムチ」「”かわいがり”とリンチとは違う」「時津風部屋で行われていたのは単なるリンチだ」というものから、「相撲界では”かわいがり”という名目でシゴキが横行していた、これは業界人にとっては謂わば公然の秘密だった」というものまで。

 私は相撲については門外漢であり、拙ブログのテーマとも直接関係のない事件でもあったので、今までこの力士死亡事件については殆ど言及して来ませんでした。しかし、この死亡力士の遺体状況から判断する限り、これは誰がどう見ても「愛のムチ」などと言い逃れ出来るものではない。もはや単なる「虐め」で済ます事も不可能です。ここまで来れば、もう立派な殺人事件です。

 「かわいがり」の是非については、私もこの間、職場の同僚と少し話したりもしてきたのですが、その範囲で言うと、あくまでも「愛のムチ」に近い捉え方が一般的でした。でも、私は「それは違う」と思います。
 確かに相撲に限らず、他のスポーツにも大なり小なり、こういう「シゴキ」に近い事例は数多くありますし、それら「シゴキ」と「愛のムチ」の境界も曖昧なものです。しかし、他のスポーツについては、こんな「殺人事件」にまで至る事は、余程の事が無い限りありません。然るに相撲界では、相撲協会が発表したものに限っても、1985年以降だけで既に17人もの力士が亡くなっているにも関わらず、その殆どについて何らまもとな調査もされずに、「死因は心不全」の一語だけで片付けられているのです。
 今回の事件についても、死後3ヶ月も経ってから初めて事件が公表された異常性や、遺体の異常な損傷状況にも関わらず地元警察が当初は何らまともに捜査に踏み切らなかった事、部屋関係者が遺族に執拗に火葬を催促し真相究明を妨げようとした事などが報じられています。こんな事は、他のスポーツでは凡そ考えられない事です。

 私が思うに、相撲界という閉ざされた封建的な世界だから故に、現代の民主的常識とはかけ離れた行為が、今までずっとまかり通ってきたのではないでしょうか。それが、この事件を機に一挙に明るみに出てきてしまったというのが、正直な所ではないかと。だから、戦後60年以上も経て21世紀に入った今になっても、こんな旧軍隊の新兵虐めみたいな事が平然と行われ、それを伝統や「愛のムチ」と履き違えるような言説も未だにまかり通っているのでしょう。

 野球にしてもサッカーにしても、はたまた柔道・剣道にしても、他のスポーツにはそれなりに確立された科学的指導法なりトレーニング理論があり、トレーナーや専属医が配置されているものですが、こと相撲に関しては、そういう類のものが一切ありません。全て部屋任せの経験主義で、その指導法も、運動生理学に基づく科学的なものは殆ど無く、戸塚ヨットスクールやJRの日勤教育と同様の、「躾け、根性、ヤキを入れる」とかいう低レベルな精神論・根性論に偏ったものだったのではないでしょうか。その結果、技術指導や力士育成も次第に我流に陥り、「憲法・法律」と「伝統・しきたり」の一体どちらが優先なのかも弁えない様な、おかしな精神論が幅を効かす事になってしまっているのではないですか。

 「苦しきことのみ、多かりき」ブログさんが相撲部屋制度の改革を提言されていますが、なかなか傾聴に値する意見だと思います。私は相撲については門外漢故に、そこで述べられている個別の提言一つ一つに是非判断を加えられるだけの材料は持ち合わせていませんが、少なくとも、(1)タコ部屋制度の廃止(寮の整備、練習キャンプ方式への移行)と、(2)教育体系の整備(部屋任せで精神論に偏した我流教育から、協会主導による科学的トレーニング・健康管理の導入へ)の、2つの基本方向は外せないでしょう。
 つまり、「相撲部屋に身包み従属した力士」から、「精神的に自立し業界全体の事を考えられる力士」の育成に、指導の在り方を根本的に転換するのです。閉鎖的で旧態依然たる封建的徒弟制度については、ここまで根本的に改革出来ない限り、相撲界に未来はないでしょう。

(関連記事)
・時津風部屋、力士死亡事件の深き闇(JANJAN)
 http://www.news.janjan.jp/living/0709/0709283103/1.php
・白鵬「正しいかわいがり」披露(日刊スポーツ)
 http://www.nikkansports.com/sports/sumo/p-sp-tp3-20071014-269640.html
・時津風部屋の弟子 写真を元にイラスト公開(キティ芸能新聞)
※当リンクについては、遺体公開の是非や元ネタ(2ch)自体の信憑性という点での意見もあろうかと思いますが、今回は真相究明の必要性に鑑み、敢えて引用する事にします。
 http://kirei.xsrv.jp/archives/cat10/post_519/index.html
・大相撲:時津風部屋に於ける壮絶なリンチ殺人事件。これで日本相撲協会が見てみぬ振りをするならば「大相撲」に明日はない!(晴天とら日記)
 http://blog.livedoor.jp/hanatora53bann/archives/51065484.html
・親方「バットはやめとけ」 力士死亡問題、暴行の兄弟子注意(中日)(タカマサのきまぐれ時評)
 http://tactac.blog.drecom.jp/archive/2069
・「しごき」の連鎖という愚行。(ナンバー・ウェブ)
 http://number.goo.ne.jp/others/column/20071018-1-1.html
・大相撲:時津風部屋力士急死 「愛知県警、初動ミス」 新潟大解剖医が指摘(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071014ddm001040026000c.html
・相撲界と警察のなれ合いに問題あり!【 この週刊誌がすごい45】(オーマイニュース)
 http://www.ohmynews.co.jp/news/20071012/16036
・どうやら、相撲部屋制度そのものに問題がある(苦しきことのみ、多かりき)
 http://izakattyan.iza.ne.jp/blog/entry/326189/
・初心者のための相撲入門(猫を償うに猫をもってせよ)
 http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20071013
・日本相撲協会公式サイト
 http://www.sumo.or.jp/
・時津風部屋(ウィキペディア)
 「序ノ口力士集団暴行致死事件」に関する事項も有り。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%82%E6%B4%A5%E9%A2%A8%E9%83%A8%E5%B1%8B
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 被害者攻撃・加害者免罪の虚... | トップ | 働きマン vs アンチ根性論 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
難しいですね (Unknown)
2007-10-25 09:26:46
昔、画家(で哲学者)の永井潔氏が「伝統とは、守るものではなく、日々創り上げられるべきものだ」と喝破されていましたが、相撲界は出発点や歴史的経過を考えると、どこからどこまでが守られるべきで、どこが変えられるべきなのかハッキリしない部分も多く難題山積ですね。

今回のような暴力事件は論外ですが、「部屋制度への従属」の問題などは、伝統芸能文化において「家元制」が果たしている役割への評価などもありますし・・・・(茶屋制度などもいきなりチケットぴあ的システムには解消出来ないでしょうしね)
また、「改革」といっても、柔道胴衣のカラー化のように、単に商業主義に迎合しているだけとしか思えないようなものもありますから合意形成は大変でしょう。「女人禁制」や「ちょん髷」などもどう評価し対応すべきか、議論が分かれそうですし。

まあ、永年にわたり問題を放置してきたことのツケが噴出しているのが現在の相撲界、日本社会全体なんじゃないでしょうかね。
近年の日本社会は、経済、政治、学問、芸術・文化などなど、どんな分野をみても、かなり本質的な部分での問題を露出させてしまっているように思います。

毛沢東や池田大作じゃあないですが、日本社会は正に「文化革命」や「人間革命」を必要としているようですねwww
矮小化された20世紀マルクス主義では、たぶん、手に負えないよね。(相撲界の問題では、『赤旗』なんかも相撲協会と永年ナアナアで、八百長問題についてさえ最近まで批判的論調が無かったし)
返信する
相撲界の進歩と反動 (プレカリアート)
2007-10-27 09:55:36
 確かに、上のUnknownさん(注:次回からはUnknownではなくHNでご登場を)のコメントにもある様に、相撲界の改革は難しいです。
 しかし、全く希望が無い訳でもないのでは。相撲界の歴史を紐解いて見ると、三河島事件や春秋園事件に見られるように、既に戦前の時代から相撲界民主化の動きが何度と無く繰り返されてきて、それが大相撲の諸規定の改変にも一定の影響を及ぼしているのです。
 そして、今や相撲力士の間にも体罰・暴力克服の流れが次第に広まりつつある事が、「相撲部屋24時おかみさん奮戦記」(中沢嗣子著、講談社+α新書)という書物からも窺い知る事が出来ます。
 http://www.ebookoff.co.jp/detail/Ctgry/1002/LRack/17/Cmdty/0001499240
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

戦争・改憲よりも平和・人権」カテゴリの最新記事