アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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すき家ストライキについて思う

2014年06月03日 10時06分27秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
 私のブログでも「「すき家の春」は決して他人事ではない」という記事の中で取り上げた「すき家」の労働問題。元々、牛丼チェーンの中でも従業員酷使のブラック企業として有名だった「すき家」で、それでなくても少ない人数で店をどうにかやりくりしていた所に、更に調理に手間がかかる鍋メニューが導入され、それにブチ切れたバイトの大量退職によって閉店に追い込まれる店が続出。しかも、大量退職だけでは収まらず、5月29日の「ニク(29=肉)の日」に従業員有志が一斉ストライキに立ち上がるという噂までツイッターで流れていましたが、結局は、「すき家」運営企業ゼンショーの関連子会社食品工場に勤めるアルバイト一人の参加に止まったようです。
 http://www.huffingtonpost.jp/2014/05/30/sukiya-strike_n_5415391.html

 この「すき家ストライキ」については、ゼンショーユニオン(Z-UNION FTP、通称ゼアンというらしい)という企業内組合から、「労働組合を通さない非公然のストライキ(いわゆる「山猫スト」)は違法であり、会社から損賠賠償を求められる恐れもある」という声明が出されたりもしました。私なぞは、そんな企業内組合の名前なぞ聞いた事もなかったので、どうせまた会社がスト潰しだけの為に、先回りして会社言いなりの名前だけの御用組合をでっち上げたのだろうと思っていましたが、実際その通りだったようです。組合HPでの本部住所(三重県四日市市)の表記が今は黒塗りで実際にそこにあるのはただの民家、既に2年前に結成されていながら今まで活動した形跡もなく、公開している収支報告書にも収支が一切記載されていないというのですから。
 http://buzzap.jp/news/20140529-zensho-union/ 

 私はそんな御用組合、幽霊組合の声明よりも、むしろ既に存在する労働組合「すき家ユニオン」、こちらは上部団体の「首都圏青年ユニオン」にも加盟し活動実績もあるれっきとした組合ですが、その組合がなぜ支援声明を出さなかったのか、そちらの方が気掛かりでした。未払いだった残業代を会社に支払わさせたりといった活動もしてきた組合なのに、なぜ何の声明も出さないのか。ひょっとしたら、既に会社によって潰されて無くなってしまったのではないかと。実際はそれは思い過ごしだったようです。ツイッター上の公式アカウントも削除され、噂の域が出なかった「ストライキ」については、組合としても安易に声明なぞ出せなかったというのが真相のようです。実際、私もこのストライキの噂をネットで知った時には、公式アカウントが既に削除されていて、どこから情報を仕入れたら良いか皆目分からず、結局ブログでも取り上げる事が出来ませんでした。そういう意味では、噂だけでは動きようもなかったのは事実でしょうが、それでも当事者企業の労働組合なのだから、職場の状況報告ぐらいはして欲しかったと思います。

 それで唯一ストライキに突入した組合員、この人は「すき家」店舗の従業員ではなく関連子会社GFFの千葉県船橋工場に勤めるアルバイトで、この人が個人で加入している「ちば合同労働組合」がストを行い、工場最寄駅の駅前で参加呼びかけのビラをまいたとの事。「合同労組」というのは、私が加入している「地域労組」と同じで、勤務先に労働組合がなくとも一人からでも入れる組合です。この人もかつての私と同じように、会社の不法に怒って、何らかの伝を頼って組合に入ったのでしょう。ストにまでこぎ着けるとは何と立派な!私も見習わなければ。
 http://www.bengo4.com/topics/1583/
 http://ameblo.jp/chiba-goudou/entry-11864995089.html

 この「すき家ストライキ」の話をバイト先でもしてみました。確かにゼアンの言う通り、「違法な山猫ストには損害賠償請求される恐れがある」のは事実です。しかし、それが「山猫スト」であると一体誰がどうやって証明できるでしょうか。たまたまその29日に、従業員のうち何人かが偶然、流行していた風邪にかかって休まなければならなくなったという事も、充分あり得る話です。そんな事例にまで「山猫スト」の嫌疑をかけられ追及されたのでは、堪ったものじゃありませんw。そういう意味では、スト主宰者(もし本当にいればの話だが)がツイッターの公式アカウントをいち早く削除したのは、これはこれで正解だったのかも知れません。

 でも、どうせストまでやるからには、思いつきの「山猫スト」による一回ぽっきりのストではなく、組合を作って会社にストライキ通告してやった方が、はるかに効果的です。そうすれば、晴れて合法的なストとして堂々と実施でき、会社から損害賠償を請求される心配もなくなるのですから。せっかくスト実施まで決意しながら、なぜ組合を作ったり組合に入ったりしないのか。思いつきによる付和雷同の「山猫スト」だけでは、今回のように噂話だけで終わってしまうのがオチです。労働組合なんて2人以上集まれば作れるのだから。労働組合法でいう所の「団体」とは2名以上の集団の事です。この事は私も組合に入るまで知りませんでした。

 ひょっとしたら、その後の組合規約を作ったり、会社にスト通告をするのが面倒くさかったのかも知れません。会社に通告する以上は、首謀者(組合代表者)の名前も出さなければなりませんから。でも、そんな事にいちいちビビッていたのでは、スト実施なんてハナから無理です。法律に則ってやりさえすれば、何も後ろ指差される筋合いはないのだから。ひょっとしたら、組合を作る事で、それを契機に政党に勧誘されたり政治に巻き込まれるのを嫌ったりしているのかも知れませんが、それも別に入りたくなければ断れば済む話です。「政治に巻き込まれる」以前に、既に自分は「ブラック企業の支配にとっくに巻き込まれている」のに。そこから抜け出す為には、組合であろうが政党であろうが、使える物は何でも使えば良いのです。

 むしろ、組合に入ってから後の方が、自分の真価が試されると思います。会社に要求を突き付けるには、労働組合に入り、会社と対等な立場で交渉できるようにする事が絶対に必要ですが、それはあくまで最低限必要な事最初の一歩にしか過ぎず、決してそれで事足れりなんかではないのです。たとえ組合に入っても、当事者はあくまで自分であり、組合はそれをサポートするに過ぎないのです。
 そういう意味では、私の最初の団交の時も、今から思えば、「組合に入ればもう一安心」と、知らず知らずのうちに、組合からの方針待ち、指示待ちの姿勢になってしまっていたように思います。私が前の配属先で組合に入ったのも、会社が必要備品のドーリー発注すら渋り、重いケースを手でわざわざ積み替えなければならなくなったからですが、組合の方も、元々が職場に労働組合もないような会社に勤めている、勤務地も職種も休日もバラバラな寄せ集め組合員ばかりで、私よりももっと深刻な不当解雇や賃金未払いなどの事案を抱える中で、「備品をもっと発注してくれ」なぞという条件闘争の団交に、そんなに人や時間を割く余裕なんか無かったのです。
 ところが私は、「もうこれで一安心」と、知らず知らずのうちに組合からの指示待ちになってしまっていました。だから、会社との最初の団体交渉の際にも、会社からは総務部長や労務部長などが4名も出て来たのに、こちらは私と非常勤の組合委員長の2名だけで団交に臨まざるを得なくなり、「別に備品の発注義務や荷物の重量制限なぞ、労働基準法のどこにも書いていないじゃないか」「我々のやっている事のどこが違法なのか」と会社に居直られてしまったのです。
 
 今から思えば、この会社の理屈はとんでもないものです。なぜなら、労働基準法の第一条には、ちゃんと次のように書いてあるのですから。

 労働基準法第一条(労働条件の原則) 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
 2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない

 でも、その時の私は、予想される会社側の出方やそれにどう対処するかのシュミレーションもろくにせずに団交に臨んだために、この労働基準法の大原則には頭が及ばず、会社側の土俵に乗せられ、その他の個々の条文の規定に惑わされて、有効に反論できなかったのです。この大原則が頭にあり、それに基づきシュミレーションを組んでいたら、会社にこんなトンデモな屁理屈でドヤ顔される事もなかったのでしょう。
 でも、それでも組合に入って団交をやっただけの価値は充分ありました。その後の朝礼で、「無理に一人で積み替えしなくても良い」「出来なければ他の人に助けてもらうなり代わってもらうなりすれば良い」「それで多少時間がかかっても構わない、安全第一」と会社が明言し、それでも不安なら私の様に、その作業に携わらなくても良いようになったのですから。これも私が言わなければ出来なかった事です。それがまだ一人二人の動きに止まっている段階では、逆にその分の負担が他の人にしわ寄せされる事にもなりかねませんが、それが三人四人と広がれば、会社も備品購入に踏み切らざるを得なくなるはずです。元々、必要な数の備品さえあれば、こんな危険で無駄な積み替え作業なぞしなくても済むのですから。

 だから、今回の「すき家ストライキ」も、何でも会社の言いなりになって諦めていた状態から抜け出て、まずは一歩踏み出しただけの価値はあったと思います。でも、そこだけに止まっていたら、所詮は一時のウップン晴らしのネットの噂だけで終わってしまいます。あくまで当事者は自分なのだから、付和雷同や他力本願ではなく当事者としてどう動くかが一番大事な事です。そこさえしっかりしていたら、後は組合に入ろうがネットでストを呼びかけようが、いくらでも方法がある。逆に、その一番大事な事を忘れてしまったら、どんな事をしても上手くはいかない。それだけの事です。  
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1 コメント

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記事訂正と感謝のお知らせ (プレカリアート)
2014-06-04 22:27:33
 今しがた(6/4日22:25)、記事本文の下記部分の記述を以下のように訂正しました。最初から7番目の段落です。

(訂正前)
 ひょっとしたら、その後の組合規約を作ったり、役所に結成届を提出したり、会社にスト通告をするのが面倒くさかったのかも知れません。

(訂正後)
 ひょっとしたら、その後の組合規約を作ったり、会社にスト通告をするのが面倒くさかったのかも知れません。

※「役所に結成届を提出したり、」という部分を削除しました。労働組合の結成は自由であり、特に必要な場合以外には、役所への届け出の必要もない事が分かりましたので。この事をツイッターで教えてくれた人に厚く感謝申し上げます。
 http://www.toroui.metro.tokyo.jp/kumiai.html
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