アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

ケタオチのデズラでブタの仕事をするな

2019年05月10日 01時50分19秒 | 職場人権レポートVol.3

 

昨年の夏祭りで買った釜ヶ崎解放Tシャツの威力恐るべし。先日の夜も、ホテル屋上の共同浴場からの帰りのエレベーターに、このTシャツを着て乗っていたら、見知らぬ居住者から「そのTシャツカッコ良いな」と、いきなり声が掛かりました。それを機に、このTシャツのロゴにある「黙って野垂れ死ぬな」云々の由来を調べていくうちに、40年も前の活動家の来歴にたどり着きました。

船本洲治―これがその活動家の名前です。広島大学を除籍後に釜ヶ崎の日雇い労働者となり、当時横行していたヤクザ手配師の暴力や賃金ピンハネに対抗する為に、釜共闘(暴力手配師追放釜ヶ崎共闘会議)を立ち上げた人です。手配師の中でも最も酷かった鈴木組と果敢な闘争を繰り広げ、全国で最も低かった釜ヶ崎の日雇い賃金を、全国最高水準にまで持って行きました。しかし、折角そこまでの成果を上げながら、最後には昭和天皇の沖縄訪問に抗議し、焼身自殺してしまいます。「黙って野垂れ死ぬな」とは、その船本洲治が残した言葉だったのです。

また、このTシャツには、もう一つのロゴが入っています。最初のロゴ「黙って野垂れ死ぬな」は船本洲治の遺言ですが、もう一つのロゴ「やられたらやり返せ」は、また別の活動家の遺言でした。山岡強一―これがもう一人の活動家の名前です。船本洲治が釜ヶ崎でヤクザ手配師と闘っていた頃から約10年後に、東京の山谷(さんや)でも、山岡強一が、暴力団手配師追放の闘争ドキュメンタリー映画を撮っていました。当時の山谷においても、釜ヶ崎と同様に、暴力団の金町一家が手配師の元締めとして君臨し、日雇い労働者の賃金をピンハネしていました。それに対し、労働者や日雇い労働組合は、山谷争議団を作って対抗していました。その闘争ドキュメンタリー映画のタイトルが「やられたらやり返せ」でした。この映画は、金町一家による襲撃と闘いながら撮られました。山岡強一や前監督の佐藤満夫も、金町一家に殺されています。

その釜ヶ崎解放Tシャツのルーツをたどるうちに、遂にその原典を目にする事が出来ました。それが「やられたらやりかえせー実録 釜ヶ崎・山谷解放闘争」(田畑書店・刊)です。この本は現在、大阪市西区西長堀の市立中央図書館に蔵書として保管されています。この本には、当時の釜ヶ崎や東京の山谷で暴力手配師と闘った活動家の言葉や当時のビラの内容が収録されています。今から数十年も前に出版された書物で、既に絶版になっているので、大阪ではもう西長堀の市立図書館にしかありません。船本も山岡も新左翼の活動家で、当時の世相も反映して、「ベトナム反戦」とか「世界革命」などの言葉が頻繁に出て来ます。現代との世相の乖離ぶりたるや、凄まじいものがあります。しかし、その一方で、野宿者や日雇い労働者向けに書かれたビラの中には、現代にこそ蘇らせなければならないと感じられる物もありました。例えば次の一節などがそうです。

こんなふうに闘おう。
①はじめに決めた条件の仕事しかやらない。
②ケタオチ(今で言うブラック企業)のデズラ(日当)ではブタの仕事はやれない。
③臨機応変に考えて、時間を短くさせたり、イロ(手当)をつけさせる。
(イ)よごれる仕事(ロ)キケンな仕事(ハ)ぬれる仕事(二)遠い現場での仕事(ホ)デズラ以上にあおられた(仕事を急かされた)時。交通費は必ずつけさせよう。
⑤山谷では、労働時間の常識はこお〈ママ〉だ。
●10時と3時には30分ずついっぷく(休憩)をとろう。
●11時半から1時まではメシとヒルネ。
●4時半になったら仕事じまい(後片付け)。
⑥現場でケガをしたら、なにはともあれ、病院に飛んでいこお〈ママ〉。
⑦問題が起きたら、一人で考えこまず、仲間に呼びかけて団結して闘おう。
⑧残業代までゴマかされてたまるか。(以下、25%増しの残業代計算方法の解説が続く…)

 

ざっとこんな感じです。ある意味、開き直りともとれる文面ですが、だからこそ、我々が社畜として飼い慣らされるうちに失った「正常」な感覚が、そこかしこに見て取れます。これらの内容に共通するのは「条件の悪い仕事に対しては、我々も最低限の働きしかしない」という事です。我々は、ともすれば、ブラック企業に飼い慣らされ、競争をあおられる中で、「賃金以上の働きをしなければならない」「必要以上に皆んなに合わさなければならない」と思わされがちでした。それが現代の過労死や、同僚との雑談も出来ない過密労働、残業代も付かないタダ働き(サービス残業)を生み出して来ました。それを思えば、むしろ「10時と3時には30分ずついっぷくをとる」「11時半から1時まではメシとヒルネ」位の気構えで丁度良いのかも知れません。

ケタオチ(今で言うブラック企業)のデズラ(日当)ではブタの仕事はやれない。

先に紹介した昔の釜ヶ崎の組合活動家の、この言葉は今でも使えます。「ブタの仕事はやれない」と言いうのは多分、「コマネズミみたいに働くな」「社畜・奴隷に甘んじるな」という意味なのでしょう。私はダブルワーク先のクリーニング工場で、「再洗ほぐし作業が遅い」という理由で、契約更新を保留にされました。しかし、それは私だけの責任ではありません。再洗浄分の洗濯物をいっときに集中して降ろしてくる移送上の問題や、通り一遍に注意するだけで作業のコツを具体的に全然教えてくれなかった社員の指導上の問題もあるはずです。それらを無視して、なぜ私個人の能力だけ論われなければならないのでしょうか?他の人はもっと早く出来るのも事実ですが、それは勤続日数(キャリア)の差によるものです。会社はそれを承知の上で、社会保険料の負担を避ける為に、短時間勤務のダブルワークバイトを募集したのではないですか。それを今になって「遅いから契約更新出来ない」と言うのは、おかしいのではないでしょうか。そんな事言う位なら、最初から私を採用しなければ良かったのです。

今までは、たかだか月3万円前後のダブルワーク収入にしかならないクリーニング工場に、いつまでもしがみついている気はありませんでした。しかし、いざ再びバイト探しを始めても、同じ条件のダブルワーク先はなかなか見つかりません。たかだか3万円でも、有るのと無いのとでは大違いです。そもそも、社会保険も無い契約条件で、個人の働きぶりを云々する事自体がおかしいのです。生身の人間に、8時間の法定労働時間を超えて、フルマラソンみたいな働き方なぞ出来る訳がないでしょう。ロボットじゃあるまいし。ダブルワークでも良いという条件で雇ったのはクリーニング工場なんだから、本業よりは劣るダブルワークとしての働き方でも一向に構わないはずです。幸い私は個人加盟のユニオンに今も所属しているので、その組合の力も借りて、その点を徹底的に追及する事にします。それでもダメなら、もう仕方ないので、今の本業バイト先で同じだけ残業するか、再びダブルワーク先を探す事にします。

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