5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

マグロだけじゃない

2010-03-20 22:58:46 |  経済・政治・国際
今日も食べ物の話を書こう。ブルーフィンツナ、高級食材のクロマグロである。

絶滅が危惧される生物の国際取引を規制するワシントン条約会議委員会が、モナコやECから提案されていた「大西洋・地中海産クロマグロの禁輸案」を当初の予想とは大きく異なる票差で否決した。発展途上国や漁業国が欧米主導の禁輸案に予想以上に反発した結果だと日本の新聞は書いている。

高価なトロを有難がって食べるほどのマグロ喰いではないから、クロマグロが禁輸になっても一向にかまわない自分だが、マグロに飯を食べさせてもらっている業者諸氏は「否決のニュース」にほっと一安心というところだろう。早速に「日本のマグロ規制」を言い出した赤松農水大臣もほっと組のひとりのはずだ。

委員会に緊急動議を出し、即採決を求めたのは地中海沿岸のリビアだったというのが「ナルホド」と思わせた。地中海の漁業協定の外側にいて、マグロの回遊魚としての性格をたくみに利用、今まで「漁夫の利」を享受して来たリビアだが、これがEU監視の禁輸措置になっては面倒なこと極まりない。日本とリビアは、阿吽の呼吸で利害の一致を読んだわけだ。

ところで、ツナ漁をする漁業関係者も多いアメリカは何故か、このモナコ案に賛成だった。グーグルのファストフリップで「ツナ」で検索して出てきたのは、「黒マグロ、北極グマの禁輸案、世界会議で否決」(ワシントンポスト)、「否決に日本は安堵のため息」(クリスチャンサイエンスモニター)、「マグロと野球は日本のエネルギー問題」(ビジネスウイーク)、「最高に美味い魚を救えるか」(ハフィントンポスト)など。当然だが日本側の事情を忖度する書き方はひとつもない。

「漁業ロビーの勝利ふたたび」というニューヨークタイムズの19日付けの論説コラムでは、「執拗なロビー活動で反対派を篭絡した張本人は、世界のブルーフィンツナの5分の4までも自国民が消費し、低開発国に漁業市場を提供している日本だ!」とキビシイ。

「1957~2007の50年間で、地中海と大西洋のブルーフィンツナは7割以下に減っている事実からすれば、今後もこのままの状態が続けば、地中海や大西洋沿いのアフリカ小国はいずれ、やがて大切な漁業資源が消えてなくなったことに気づくことになるだろう」とのちょっとした脅し文句も忘れていない。

次回のワシントン条約会議は3年後であれば、その間のICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)の動きが重要になるのだが、どうやらアメリカもECもICCATには、いまひとつ信用を置いていないらしい。

ハフィントンポストの署名コラム「イルカだけじゃない」というひねった記事もある。今年のアカデミー賞で、太地のイルカ漁を題材にした「ザ・コーヴ」が長編ドキュメンタリー賞を受賞したことが影響している。捕鯨反対論も、マスコミでの取り上げられ方がいつになく激しい。こうして絶滅しそうな魚を平然と捕獲する野蛮な日本人というイメージがいとも簡単に出来上がりそうな様子だ。

「日本の食文化だ」と言い切って、世界に向かい開き直る勇気もないのならば、ここはやはり迅速に自己規制の姿勢を見せないといけない。ことは「マグロだけ」ではなさそうだ。赤松大臣のイニシャティブは大丈夫だろうか。





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