5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

しょうぶ湯の記憶

2019-05-05 21:04:29 |  文化・芸術

改元連休もあと二日を残すのみになった。電車の窓から見える田んぼにはすでに水が張られて代掻きが進んでいる。農家はGWも連休などなし。機械化は進んでも忙しいというわけだ。

急行からこっちの普通に乗り換えてきた若い男。バックパックを背負って流行りの大きな赤いスーツケースを右手で引っ張り、左手のスマホを巧みに操っている。きっと海外旅行からの帰りなのだろう。高揚した気分は家が近くなっても収まってはいないようだ。

ニュースを読むと、帰国ラッシュを迎えた中部空港、今日だけで1万2700人が帰国し、明日の6日は、過去最多の1万3100人が帰国予定だという。

鯉のぼりをあまり見かけなくなくなったと前に書いたが、近頃の端午の節句は商業的にも盛り上がりを欠くのではないのだろうか。もっとも今の子供たちは毎日がおまつり感覚なのだろうから、ことさら子供の日にメリットは感じないのかもしれない。連休も終わりに近くスポンサーの爺婆たちも孫への小遣いが底をつくタイミングだ。

スーパーの棚に柏餅や粽は置かれているが、手を伸ばす若い母親はいないようだ。しょうぶ湯用の菖蒲も今年は見当たらなかった。令和の新時代には、こうした古い習慣もひとつまたひとつと知らぬ間に消えて行ってしまうのだろう。

各務原市にある「内藤記念くすり博物館」はその名の通り、薬をテーマにした博物館だが、敷地内の植物園で育てているしょうぶの葉を、毎年、端午の節句にあわせて配っているのだという。子どもたちの健やかな成長を願う無償プレゼントだというのがNHKの岐阜局のニュースだ。

「端午の節句にしょうぶ湯に入った子どもは健やかに育つ」という言い伝えは年寄ならよく知っている縁起担ぎだ。口コミもあって噂は広がり、これまで150束だったものを、倍の300束用意したという。よく晴れた日曜日、近隣からのドライブにはちょうど適当だ。今頃は300組の家庭が、しょうぶ湯に浸かって十連休の思い出を語り合っていることだろう。

「端午の節句にしょうぶ湯に入ることはなかなかないので、いい機会だと思って来ました。今夜はこの子と一緒に入りたいと思います」という子供を連れた若い母親のコメントもある。ということは、子どものジイジもバアバもしょうぶ湯については無知だったということ。

世代が代われば言葉も風俗も習慣もどんどん変わっていってしまう。この男の子の記憶に「しょうぶ湯」が長く残っていてくれますように。





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