森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

新事実の探索

2006-07-14 22:02:08 | 仕事関係

今日も割り箸の取材。

割り箸の発祥に関する新事実を押さえることができた。これまで言われていた起源より200年は遡る決定的な証拠が出たのである。

 

こうした新事実の探索こそ、ルポルタージュの醍醐味。
実は先日よりノンフィクションの大御所・佐野眞一氏とやりとりしているが、それは彼が執筆・探索中の甘粕正彦大尉について私が情報を提供したから。これまで謎だった数年間の彼の足跡を私が偶然(20年前に)発見していたので伝えたところ、すぐ問い合わせがあった。

 

いや、そのエネルギッシュな姿勢と、しゃべると止まらないような蘊蓄?を聞いていると、私も見習わないと、と感じる。20年前に私が追いきれなかった謎を解きあかしてくれるかもしれない。

割り箸の起源なんて、それと比べてマニアックでマイナーかもしれないが、やはり新発見は楽しい。


営業力

2006-07-13 21:14:17 | 政策・行政関係

今の林業、林産業に何が足りないかと言って、究極のところは「営業力」ではないか、と思う。

どんな商品を生産しても、買手がつかなければ売れないし、売れなければ維持できない。よいものを作れば黙っていても売れる、ということは通用しない時代だ。

 

営業力のないところに、「このようにすれば活性化する」「こういう商品をつくれば売れる」と言っても、実現しない。逆に、「このようなものを作れば必ず買う」と言えば、作ってくれる能力はあるはずだ(やる気・気力があるかどうかは別として)。

たとえば製材業者に「集成材なら売れる」といくら言っても動かなかったが、集成材メーカーが集成材用の国産材を買う、と言えば山の木が動きだした。

 

さて、そこで考えたのが営業代行会社を作って林業家や木材業者と組ませること。ちょうど団塊の世代がリタイヤすると言って騒いでいるが、その中の辣腕営業マンを集めて、木材を売りに歩かせる。商品開発も提案させる。もちろん連動して林業家なども動かせないとダメだ。山の木とともに夢も売れないか。

 

どうかな~。

 


らんちゅうの帯

2006-07-12 15:42:43 | 木製品・建築

昨日のチェンソーアート取材受けと同時進行させていたのが、割り箸製造現場の取材なのだけど、そこは高級な「らんちゅう」を作っていた。

 

らんちゅうは、すでに割れているもの(ようするにバラの箸)を紙の袋や帯で束ねたもの。どうやら千利休が作った割り箸の原型というべきものに近い。
もちろん現代の「らんちゅう」は機械で作っているが、それでも各工程の一部に手作業を含む。結果的に3割くらいは手作業ではないかという。

 

仕上げの検品では、かんながけをしたり紙やすりでこすったり。これじゃあ量産なんて夢のまた夢。それで卸し原価は6~7円らしい。それにいくつもの問屋のマージンが加わり、帯や袋に入れる手間とコストがかかる。エンドユーザーのところに届くの頃には、いくらになっているだろうか。

 

写真は、ちょっとオシャレな帯で、これも手作業で作られたもので、1封2円なり。

 

 


チェンソーアート体験取材

2006-07-11 23:35:42 | 時事ネタ

吉野チェンソーアート倶楽部で、22日に講習会を開催することは伝えたが、その告知にプレスリリースを作って各社に送ったら、朝日新聞から取材の申込。

 

ところが、女性記者が自ら体験したい、それを記事にするという。しかも、22日前に。
しかし、講師の手配や場所の確保、そして、そもそもチェンソーを持ったこともない人は対象にしていない…という難関を越えて、なんとか本日実施できた。

 

結構、準備でへろへろ。私もその日、割り箸の取材で吉野に行くつもりだったので顔を出したが、はたして成果は…。記事は今週土曜日(奈良版)に載る。


新生産システム

2006-07-10 15:43:16 | 政策・行政関係

新生産システム」という言葉を知っているだろうか。
林業界では、いまや流行り言葉である。ようは林野庁の新しい企画(補助策)なのだが、これが時ならぬ活況を生み出している。シンクタンクの某氏に言わせれば、「林業バブルがやってきた」状態だそう。補助金がジャブジャブつぎ込まれるので、ウハウハの人々がいるらしい。

 

実は、その前に「新流通システム」というものもあった。こちらは平成14年度から林野庁が打ち出したもので、大雑把に言えば、売れないB材を集成材や合板などに加工すべく新たな国産材の流通を促したのである。おかけで大規模製材工場などが乗り出し、結果的に、木材自給率を嵩上げすることに成功した。

 

そこで次が、「新生産システム」。今度はA材対策だ、というわけで、林野庁がシステムモデル地区を11地域指定して、またもや大手製材所やハウスメーカーを中心に号令をかけているのである。

 

正直言って、中身はわからない。何をどう変えようとしているのか。集成材のように目に見える加工や需要がない。ただ、森林組合などを見捨てて、大手企業に期待しているように見える。
まあ、それは正解だろう。これまであった幾多の補助制度も、森林組合を相手にすることで単なる失業対策?のようになり、なんの構造改革も行われなかったのだから。すでに大手の連携によって効率化と流通短絡化は進み始めたから、かなり木材流通の風通しはよくなる気がする。ただし、その陰で中小はバタバタ消えていくかもしれない。

 


大手が量を牽引し、中小および覚醒した森林組合などが新たなニッチの需要を探し出すのが理想である。 

そのように考えると、中小向きのニッチな需要こそ起業のチャンスかもしれないな、と思うのである。ただ本当に「林業バブル」なら、私にも多少のおこぼれが来てもよいと思うのだが、全然ないのが悲しい(-.-)。
 


幻の割り箸!

2006-07-09 21:22:39 | 木製品・建築

探していた幻の割り箸がある。

 

それは、東季利という職人の作った吉野の杉箸だ。手削りの最高級品である。20年ほど前まで「吉野創作割り箸」として、ネーム入りで売られていた。

ぜひ見てみたいと思っていたが、東さんも今は亡き人となってしまった。もはや幻なのである…。

 

と、ところが、今日取材に行ったところで、本題よりずれて割り箸の話題を振ったところ、その人はちょっと奥に引っ込んだと思うと、なにやら箱を持ってきた。

 

「創作吉野杉ばし逸品集」とある。中を開けると…割り箸が並んでいる。そして、そこには「東季利」の名が!!!(写真)

 

どひゃあ、とびっくりしてしまった。し、しかも

「これ、あげるよ」

なんと、箱ごと、幻の割り箸を私にくれたのだ
こんなことってある?? もちろん私は喜んでもらいました

 

ちなみに、この箸は、割り箸と入っても、1本1本手で削るから割れた状態にある。それを2本組にして紙で帯封してあるもの。「らんちゅう」という種類である。

 


問題集『里山再生』

2006-07-07 12:55:15 | 仕事関係

ここんところ、相次いで学参もの出版社から著作引用の連絡。

近々では、ベネッセが拙著の文を使った中2の国語問題集が届いた。
次に数研出版から国語問題集に使いたいという文書が届いた。こちらは高校生向き。

 

面白いのは、どちらも『里山再生』であることだ。一時期は『「森を守れ」が森を殺す』が多かったのだが、今年のトレンドは『里山再生』(笑)。

引用箇所等は秘密。でも、こんなところに世間の関心を読み解く…て、それほど大袈裟なことじゃねえや。でも、最近は『里山再生』も書店では見かけなくなったから、狙い時というのもあるかもしれない。
林業から里山へと振り子のように人々の関心は揺れる。

 

ベネッセの方を、中一の娘にやらせようと思ったが、見向きもされなかったよ(-.-)


里山バイオマス

2006-07-06 23:17:03 | 森林資源

またまたバイオマスの視察。
今度は大阪の万博記念公園に出かけた。

 

昨年も少し記したと思うが、ここにはガシファイヤーというバイオマス・ボイラーが設置されている。里山倶楽部というNPOがNEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)と組んで始めた事業である。実は私も出資者の一人であった。

眼目は、里山から出るバイオマスの利用だ。林業地の残材や廃材、樹皮などではなく、里山の雑多な木々を間伐・剪定した幹や枝の利用を行うために、ドイツ製のボイラーを導入している。これは薪そのものをガス化して効率80%以上という熱を取り出せる。里山のバイオマスというのは、意外と忘れられているのではないか。もっと利用しないともったいない。
ここでの実験では、スターリングエンジンも扱っているが、私が注目しているのは、燃料とするバイオマスに加工の必要がないことだ(薪にするという加工はあるが)。これなら誰でも扱える。

 

先に紹介した「農林バイオマス3号」も優れものだったが、アチラはやはり粉末に加工する必要があったし、安くなったと言えども、約七千万円のイニシャルコストがかかる。ところがガシファイヤーは、装置だけなら200万円、多少大型でも数百万円のレベルに納まる。これなら山間の小さな施設や、NPOでも納入できるだろう。

 

ある意味、バイオマスエネルギーはニッチ産業である。巨大エネルギーの隙間を埋めて小型分散型の展開を考えないといけない。すると、何億円もするプラントでは無理だ。
今回の二つのタイプは、それぞれの規模の需要に応えられないかと期待している。

 


吉野チェンソーアート倶楽部

2006-07-05 12:27:15 | 時事ネタ

以前からちょくちょく紹介してきた「吉野林業を再生しよう!」という計画の一環で誕生した「吉野まるごとプロジェクト」。

 

いよいよ第一弾が始動した。

 

吉野チェンソーアート倶楽部を結成したのである。そしてさっそく講習会を開催することになった。

詳しくは立ち上げたばかりのホームページ を見てほしいが、とりあえず今回はチェンソーを握ったことのある人ならOK。まずはチェンソーアートを初めてやってみて、楽しんでもらいたい、というものだ。興味のある人は、ぜひ参加してほしい。
そのうちチェンソーそのものが初めての人を対象にした講習も始める予定である。

 

なんだか、趣味のクラブを結成したように思われるかもしれないが、これを吉野への足掛かりとして、いつか吉野全体を大きく動かすという、壮大な計画なのだよ

 

ミソは、現時点では、チェンソーアートをする人間は二人しかいないこと(^o^)。つまり愛好家がいてクラブを結成するのではなく、クラブを立ち上げて愛好家を増やすことをめざしているのだ。


森林認証制度の今

2006-07-04 12:24:00 | 林業・林産業

久しぶりに森林認証制度について。

今の日本にある制度は、FSC(森林管理協議会)とSGEC(緑の循環認証制度)の2つだが、前者は国際組織、後者は日本独自のもの。FSCは2000年に日本で初めて始まり、SGECは2003年に発足。

 

 

さて、現状はいかがだろうか。

現在のFSCは、日本は認証面積27万,685ha、認証事業体数は24カ所。(ただし世界で72カ国、836カ所、認証面積7646万1,834ha。)
SGEC認証取得森林は、約20万4872ha、15団体だ。

後発のSGECが猛追しているように感じるのは私だけだろうか。また製紙会社など大企業が多い印象がある。

もっとも、それは仕方ないかもしれない。単純な言い方をすると、FSCは優秀な森林(人工林)を認証してクローズアップするもの、SGECは合法的でまっとうな林業地であることを認証して全体のボトムアップを計るものだから。SGECの方が取得しやすいのは間違いない。

今後、認証面積が逆転することはありえる。

 

ただ面白いと思ったのは、FSCではNPO法人緑のダム北相模が取得したこと。面積は、たった41ha。スギ、ヒノキの人工林だそうだが、NPOが取得したことも珍しければ、この小面積も画期的。通常は1000haくらいないと採算が合わないはず。

本当はSGECの方がNPO向き(審査価格も安いし、NPOのための条項もある)なのだが、とったのはFSCなのである。おそらく、商業ベースで活動をしていないから、「優秀な森林」のお墨付きのつくFSCの方が価値があると考えたのだろう。

逆にSGECは、取りやすさもあるが、木材取引の中で環境に配慮しているという証明としての認証が欲しくて企業が選んだのではないか。

 

今後、この二つがどのように棲み分けるか、ちょっと注目だ。

 


『田舎暮らしの本』

2006-07-03 17:26:39 | 書籍・映画・番組など
『田舎暮らしの本』に、『田舎で暮らす!』の書評が載った。
本家本元の雑誌なのに、載るのが遅いよ、って、文句いっちゃあいけません。感謝、感謝。

もともと『田舎で暮らす!』の元ネタとなっている田舎移住者の情報は、『田舎暮らしの本』で取材したものが多い。なんと言っても老舗というか、田舎暮らしの火付け役みたいな雑誌だから。

もっとも、最近は様変わりしている。読んで楽しむ人が増えたのか、実際の移住にまで突き進む人が減ったそうだ。するとハウツウや理論面を記すページが減った。
その結果かどうか、私の担当する欄が無くなってしまった

仕事減るなあ…。

『自然産業の世紀』

2006-07-02 17:17:13 | 書籍・映画・番組など

以前、森林認証制度FSCが認証した本が出版される、と記したことを覚えているだろうか。たしかに記した。ただ、何月何日かわからない……(^^;)。

 

と、ともあれ、その本が出た。『自然産業の世紀』(アミタ持続可能経済研究所・編 創森社刊)である。

この創森社は、FSCのCoC(生産物の流通)認証を取得した日本で唯一の出版社。この本を出版するために、CoC認証をわざわざ取ったという。そして使用している紙も、FSC認証付き。こうしてFSCが認証した本が誕生したのだ。

 

内容は、まだ読んでいないので、あまり紹介できないが、アミタ持続研の事業の紹介と、その理論を解説したものである。そもそもアミタという会社は、環境関係のビジネスを行い、日本におけるFSC認証の窓口でもある。ここの所長は、FSCの審査にも関わっている。だからこそ、という本だ。
具体的には、FSCのほか、水産物認証のMSC、そして持続可能な農業、外来種問題、野生生物問題……などが書かれている。

 

それにしても、この本が「FSC認証本」であることは、帯に小さく書かれてあるほか、最後の奥付けの手前に、MEMOとして触れられてある程度。そもそも世間では、FSC自体が知られていないのだから、あまりFSC認証! と表紙に書き込んでも仕方ないのだろう。

 

 


森林環境税の施行

2006-07-01 11:53:03 | 政策・行政関係

手元に地方税の支払い通知が来ているが、結構様変わりしている。

話題なのは、高齢者への課税が2~3倍にも膨れ上がった点だろうが、少なからぬ県では、隠れた増税がほかにもある。森林環境税である。今年までに施行したのは、20近くなっており、今後も増えるはず。ちなみに奈良県では、年間で個人500円。法人は均等割額の5%相当額。県民税に上乗せである。
これについて詳しく報じたマスコミがほとんどないのはなぜだろう。

 

以前にも、森林環境税のヘンなところは触れたが、ともあれ施行されちゃったんだから仕方がない。奈良県の場合、総額3億円程度とか。県の財政から見るとたいした額ではない。この金額を何に使うか、どんな効果が出るかだ。

 

本来なら新たな事業を打ち上げるべきだが、どうも間伐補助など従来の施策とあまり変わらないバラマキになりそうだ。それも、一カ所に集中的に投下して、効果を目に見えるようにすればよいのに、各地にチョボチョボ配る可能性が高い。

 

私は、森林プロの養成機関を設立できないかと考えている。林業、あるいは里山の整備をするにも人材が足りない。だから山仕事を学ぶ場を作る。単純な林業作業員の養成ではなく、森林計画の立て方や木材流通まで知った人材こそ必要ではないか。できれば起業のノウハウも教える。会社やNPOの結成の仕方とか、環境教育の実施方法も含む。チェンソーアートも教える(^o^)。
もちろん全日制の学校であり、カルチャーセンターのような扱いでは困る。

 

こうしたことをいうと、時間がかかる、既存の森林組合の仕事を奪う、なんて考えるんだろうな(苦笑)。そんなこと言っているうちに山仕事をする人がいなくなるのに。