友人に、京都愛宕山を追いかけているカメラマンがいる。
愛宕山は、火の神様を祀り、全国に名を馳せている信仰の山。明智光秀が本能寺の変の前にも参ったところだ。
この夏、愛宕山に関するイベントが行われ、登山が行われる。そこで主催者は木の杖を売ることを考えた。信仰の登山につきものの、太い八角形の杖である。豪華な錫杖までいかなくても、白装束に杖をつけば、行者気分になれる。これは売れるはずである。たしか600本を用意するとか。
ところが、春から頼んでいた業者が、この期に及んで、「作れない」と投げ出したそうだ。半分くらいしか納められないとか。材料が足りないのか、製作の手が足りないのか、はたまた責任感の欠如か。
私のところにも相談に来られたのだが、寸法や材質、形状を知らないと作れるところを探すこともできない。
そうこう言っているうちに、奈良の吉野、つまり大峰山(修験道のメッカ)の行者向けに杖を作っている業者が引き受けてくれて、なんとか間に合ったそうだ。
それにしても、注文を受けても数を揃えられないとは、なんだか国産材の世界みたいではないか(笑)。この杖も、ヒノキ製だそうだが、間伐材の使い道にもってこいだと思う。そういうチャンスを逃すと、次から米材を使った中国製の杖が出回るぞ。