マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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中白木頭屋のオシメ入り座

2015年12月11日 12時00分08秒 | 桜井市へ
プラカードのような道具に「鬼」の文字を書いた鬼的を拝見した桜井市の中白木。

この日は座行事のオシメ入りが行われる。

トーヤの神さんと呼んでいる高龗(たかおかみ:雨冠に下は龍)神社の分霊を一年間祀るトーヤ(頭屋)はこの日の夜にヤカタを授かってくる。

戸数は9戸だけに9年に一度の廻りのオシメ入りである。

一年間、これまで家で祀っていた前頭屋は神社に戻す。

一時的に社務所で預かっていたヤカタ。

時間を見計らって社務所に来た受け頭屋はトーヤの神さんのヤカタを受け取って家に戻る。

その際、行程とも息がかからないように半紙を口に銜えて抱えてきたヤカタを家の神棚に収める。

見てはならない道中の神遷しの儀式は「遷しまし」と呼んでいる。

本来は真夜中の神事であるが、現在は陽が暮れた時間帯に行われている。

ローソクを灯した頭屋は二老。

86歳になる。



授かった神さんにアズキメシを供えていたのは当主に近し家人だ。

その間の氏子といえば、社務所に籠っている。

しばらく間をおいていた座中は頭屋家に参集する。

その間の頭屋家は夜食の準備していた。

かつては吉野膳と思われる高膳に料理を盛っていた。

今では長テーブルの「ナガゼン」。

料理の膳は「デン」と呼ぶ。

「膳」が訛って「デン」と呼ぶ。

奈良ではそう呼ぶ地域は多い。

ちなみに今では使わなくなった高膳は蔵で保管している。

「サイラ」と呼ぶサンマの開きは焼いて皿に盛った。



朱塗り椀はカマボコ、シイタケ、コンニャク、ニヌキタマゴ、ナガイモにキセラマメ。

砂糖、みりん、お酒を入れて醤油で煮た甘辛い味付けである。

写真では判りにくいが、椀底にとても大きく分厚いアブラアゲがある。

椀からはみ出しているからその大きさが判る。

これもまた味がよく浸みてとても美味いのだ。

濃い目の味は口に合う。

小皿に盛ったのはサクラエビを散らした大和マナの白味噌辛し和え。

大和マナは食べた瞬間飯に舌が反応する。

まるでカラシナのように思えたが、あくまで辛し和えである。

お酒の肴にいただく頭屋家の接待料理だ。



隣村の芹井や小夫嵩方住民から聞いていた中白木の摂待料理。

マツリのときはもっとご馳走になると聞いている。

「あんたの席もある」と言われていただく接待料理はとにもかくも美味しい。

昨今は仕出し屋などに注文するパック料理の膳が多くなったが、中白木は今なお手料理。

味わい深い味である。



皿に盛ったタタキゴボウもあればハンジロマメ(パンダマメ)も出てくる。



遷しましの「オシメ入り」料理はトーフ汁。



神さんに供えたアズキメシと漬物で〆となる。



座中はお酒も入って、お腹が満腹したという人が多い。

それほど美味しかった接待料理に満足する。

(H27. 3. 1 EOS40D撮影)