マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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福住町別所永照寺下之坊の御誓

2013年04月14日 08時01分29秒 | 天理市へ
御誓(ごせ)の呼び名をもつ福住町別所永照寺下之坊の修正会。

この日集まったのはヤクと呼ばれる5人の寺(檀家)総代に参拝者も5人。

前年はもっと多くの村人が集まったと云う。

別所地区は23戸。

以前は30戸もあった集落である。

住職が唱える本尊十一面観音悔過法会の際に「ゴセ」と発せられる。

それと同時に内陣に座る寺総代が太鼓を打ち。

ホラ貝も同時に吹く。

知らず知らずのうちに日常に犯すさまざまな過ちを観音菩薩の御前において懺悔するのが悔過法会だ。

村の五穀豊穣も願う法会は御誓の呼称をもつ乱声によって打たれる太鼓やホラ貝の音がある。



それに合わせて参拝者たちも床に敷いた板を叩く。

これらの作法が乱声であって一般的にはランジョーと呼ばれるが別所ではダンジョーと云う。

板を叩く棒はフジツルの木。

お寺の周辺に生えている木である。

御誓は正月初めに行われる村の行事の修正会。

「牛王 普光山 宝印」の文字を墨書したお札はススダケに挟み込む。

かつてはススダケではなくネコヤナギの木であった。

芽吹きが良いとされるネコヤナギは豊作の願いであったが自然に植生していた川は護岸工事よって絶滅したそうだ。



朱印を押したごーさんのお札は悔過法会において祈祷される。

傍らに供えているのは花餅(けひょう)。

当番の人が5日に搗いたという御供である。

ごーさんのお札は「牛王 の宝印」。

お寺によっては「牛王」もあれば「牛玉」もある。

「本来は牛王(牛黄)であるが、書き記した際に筆が跳ねて点がつくことで‘玉’の文字になったと話す住職。

普段は斑鳩在所のお寺におられる。



法会を終えればありがたいご朱印を額(ひたい)に押してもらう。

村から悪病を退散させたありがたいご朱印を押してもらって無病息災、身体堅固である。

そうして供えた花餅は参拝者に分けられる。

かつてはゴクマキしていたモチである。

実はお供えがもう一つあった。

「ナラシモチ」とも呼ばれているモチバナだ。

搗いたモチが柔らかい間にシデの木にくっつける。

何個も何個もくっつけたシデの木は花が咲いたように見える。

お米がたくさんできるという願いでたくさんつけるのだ。

シデの木は年末に行われる「さる祭り」で注連縄を掛けたモリサンで採ってきたそうだ。

「ナラシモチ」は実成りの「ナリバナ」のことであろう。



参拝者の人数分に枝を折って分ける。

祈祷されたごーさんは5月の苗代のときに祭って豊作を祈る。

また、ごーさんを味噌蔵に置いておけば味噌が美味くなると云う。

5年前までは寺行事は「座」が行っていたという。

「座」は解散されたが鎮守社であったハクサンサン(白山神社)のお供えは今でもしていると云う。

観音さんの守り神だと云われる白山神社は氷室神社に合祀されたが年に一度の9月にセキハン御供をする。

供えたセキハンは重箱に入れて村内を廻すと云う。

(H25. 1. 7 EOS40D撮影)