日本酒:「世界酒」になる? 官民で海外売り込み
毎日新聞 2012年11月01日 12時35分(最終更新 11月01日 13時03分)
日本酒を「国酒」として売り込む官民の動きが本格化している。福島第1原発事故の影響などで農林水産物の輸出が打撃を受けるなか、「国酒」は順調に輸出を伸ばしている例外的な存在。風評被害を吹き飛ばす先鋒(せんぽう)となれるか?
マグロとウニの前菜には繊細な大吟醸「鶴齢」(新潟)、子牛のほお肉の煮込みには濃厚な「天狗舞・山廃純米」(石川)、デザートのティラミスには甘みとコクのある古酒「末廣」(福島)−−。ローマ市郊外に10月5日、ワイン生産者や料理記者ら約50人の食通が集まった。在イタリア日本大使館とレストランガイド出版社が共催した食事会で、テーマは「日本酒がイタリア料理と出会う」。
日本酒ソムリエの妹尾理恵さん(56)が正月や婚礼など伝統行事と結びついている日本酒の位置づけや醸造過程を説明。「鶴齢」醸造元・青木酒造(新潟県南魚沼市)の青木貴史社長が生産者の心を語った。妹尾さんは「日本酒が『世界酒』になるには外国の料理にも合うことを知ってもらう必要がある」と話す。
「国酒」とは日本酒と焼酎のこと。故・大平正芳首相(在任1978年12月〜80年6月)が、公式行事などで日本産の酒類を活用しようと呼びかけ、使い始めた言葉だ。海外での日本酒人気は、蔵元の売り込みもあり00年ごろから米国などで盛り上がっている。今回の動きは、古川元久前国家戦略担当相が今年4月、国酒は「日本らしさ」を象徴すると位置づけ、海外展開を後押しする方針を打ち出したのがきっかけ。「国酒プロジェクト」として内閣官房や外務省、農林水産省、総務省などが参加した連絡会議も設置された。
農林水産物の輸出は、福島第1原発事故の影響などで11年は前年比(金額)で8・3%も減少した。しかし清酒は逆に同3.2%増。焼酎やビールなどを含めた酒類全体では、同6.5%も増えた。
「国酒プロジェクト」を担当する石井裕晶・内閣官房審議官は「原子力災害にもかかわらず伸びているのは驚き」とし、「省庁横断で輸出拡大を支援したい」と話す。
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