ピーナッツの唄

毎日の出来事や、スポーツ観戦、読書や映画等の感想を中心に、好奇心旺盛に書いています。

映画「椿三十郎」のこと

2007-11-14 18:25:02 | 映画
黒澤映画の「用心棒」の続篇として「三船敏郎」「仲代達也」主演で発表されたのが45年前。
その映画が今回、「織田裕二」「豊川悦司」のコンビでリメークされて12月に封切りされる。
もちろんキャストは一新されるが、脚本は菊島隆三、小国英雄、黒澤明のオリジナルものを使うそうだ。
元々この映画は「用心棒」のヒットに気を良くした映画会社に強くねだられ、黒澤監督が渋々作った作品だった。
小生は当時、山本周五郎の作品の全集も読んでおり「日日平安」という小編ものが原作であったのを知り、黒澤映画ではどんな風に描かれるのかと興味を持って鑑賞した作品でもある。
「物語はうらぶれた浪人が、たまたま立寄った小藩の汚職事件にからんだ騒動で、若侍達に協力して気転を利かせて解決を図るというものである。」本来の原作は題名の通りひとりの死者も出ない物語だ。
それが映画化される段階になって「10秒間に10人を叩き切る」と映画会社が目論んだ通りに、主人公がバタバタと人を斬らないと話が進まない仕掛けにしてしまったのだ。その為に殺略劇の印象の強い「用心棒」より、さらに10人ほど余計に斬り捨てることになった。

昨日の朝日新聞夕刊の「窓」論説委員室からでは、今回のリメークではより原作に近づけて、主人公の三十郎をインサイドワークの切れ味で難局を切り抜けるリーダーとして描いた方が良かったのではないかと主張している。
物堅い筈の編集委員の方の主張が面白かったので今日はこの映画のことを取上げてみた

確かに時代劇と言へば、バッタバッタと人を斬るのが定番になっている。しかし江戸時代であってもそんなにめったやたらに人は斬っていない筈と市民文化大学の江戸時代の研究者の「大石学」先生は力説する。
この方はNHKの時代劇の時代考証を担当される先生であるが、最近のドラマでも斬るのではなく峰打ちをするように勧めているそうだ。その方がより現実に近かったと言われるのだ。
たしかにせっかくのリメークであれば、より原作に近い形で話を進めた方が、あの有名でショッキングな最後の決闘シーンが活きてきたのではないかと小生も考えた次第である。

どちらにせよ、インターネットで同映画の予告編を見る限りでは、三船、仲代のオリジナル映画のあの重厚さが活かされたのか疑問である。黒澤映画のリメークを手掛けるなら、黒澤映画を超える工夫があっても良かったのではないかとも思った。機会があれば封切り後に鑑賞してみたい。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする