Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

韓国の個人情報保護法

2012年02月19日 | 情報法
情報ネットワーク法学会個人情報保護法研究会主催の「日本のプライバシー・個人情報保護とマネージメントシステムの国際標準化シンポジウム」第1回「日本をとりまく国際動向と日本の現状」が、昨日情報セキュリティ大学院大学で開催された。
当日は総合司会を務めたが、前から関心があった韓国の個人情報保護法について、崔祐溶先生(東亜大学校法科大学院教授)による「韓国の個人情報保護法の内容と個人情報保護管理体系」を聴講し、昨年制定された韓国の個人情報保護法の内容を理解することできた。
わが国の個人情報保護法との主な違いは、個人情報の閲覧、訂正、削除及び利用停止を求めることが権利として保障されていること(個人情報自己決定権の明文保障)、個人情報漏洩時の通知・届出義務が明文化されていること、集団紛争調整制度及び権利侵害中止を求める団体訴訟制度が導入されたこと(ただし団体訴訟を提起する前には、必ず集団紛争調整制度を経なければならない)、監視カメラ等(映像情報処理機器)の設置制限、大統領直属の審議機関として個人情報保護委員会が設置されたこと、のようだ。
集団紛争調整制度及び権利侵害中止を求める団体訴訟制度の運用については、個人情報紛争調整委員会が設置された。委員会の調整決定について受諾した場合は、委員会の決定には裁判上の和解と同じ効力が与えられることになるという。
また個人情報を事業者が収集することが認められる場合を、限定的に列挙しているのも特色だ。わが国の個人情報保護法のように適切に収集するよう求める(収集の制限と一般に説明されているが、実体としては収集方法の制限であろう)のではなく、そもそも収集を行うことができる場合が限定されている。
なお、適用対象を生存する個人に限定しているので、死者に関する情報は保護の対象に含まれないが、死亡後10年以内は適用対象とするよう主張した議員もいたそうだ。
法律自体ではすべての事業者が適用対象で、中小企業も例外ではない。ただし、行政安全部規則として制定された解説では、従業員5人未満については一部適用を免除されるという(プライバシー影響評価に関する部分など)。
団体訴訟の団体の定義は、51条に定めており、消費者基本法に基づいて登録されている消費者団体(会員数が1000人以上である団体)、非営利民間団体支援法に基づいて登録されているNPO団体(100人以上から訴訟提起を要請された場合)をさすそうである。

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