Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

ネット選挙運動解禁論議 雑感

2013年02月18日 | 情報法
ネット選挙運動の解禁がいよいよ現実のものになろうとしている。
このところ、「○○党が原案」、「△△党が修正案」、「自公が議論のたたき台提示」、「与野党実務者が一致」というような新聞記事をよく見かける。
ところで、不思議なことに、その原案とか修正案、たたき台の類が紙面に載っていることは、まずないといってよい。各政党のホームページを見ても同様で、どのような原案やたたき台が提出されたのかを国民が知ることは難しい。
今回、ネット選挙運動を解禁するために必要となる公職選挙法の改正が議員立法で行われる見通しであることが関係しているかもしれないが、インターネットを政治に持ち込むということの一つの意義が見落とされているのではないかという気がする。
従来、政治的な意思決定や政策決定の過程は、特にそれが政治家間で行われるときには、ほとんどといってよいほどオープンになっていなかった。これは国政も地方政治も同様であると思われる。情報公開の実務においても、政治的な意思決定や政策決定の過程に関係する情報については、「意思形成情報(意思形成過程情報)」として非開示とすることが認められる慣行にある。それは、意思形成の途上を明らかにすると内外からの賛否両論が殺到して合意形成が困難になったり、特定の人々が有利・不利になったりすることが理由になっている。また、政治家にとっては政治的な意思決定や政策決定の過程を政治家が独占することこそが重要であり、ここをオープンにすることは政治家たる存在意義にかかわってくるから、そこには消極的にならざるをえないのかもしれない。
従来は上記のように意思形成過程を非公開としつつ、予想される利益対立・意見対立に対して慎重に配慮し、各種のアクターと公式・非公式な接触・折衝の機会も持ちながら、最終的に政策として公開される際には大きな反発が生まれないようにするという手法で意思決定することが多かったと思われる。自民党における総務会の全員一致主義は、その典型であると思う。
インターネットを政治に利用するということは、このような「調整」型の意思決定ではなく、意思形成過程をオープンにしてそこに民意を反映させていく意思決定を取り入れていくという側面も持っている。その意味では、今回のネット選挙運動の解禁論議は、まだ従来の政治の延長戦上にあるのではないかという印象を免れない。
私自身、すべての領域における政治的意思決定の過程に民意を直接反映させるべきだとは思わない。それにはふさわしくない政策領域があるのは事実だと思う。しかし、ネット選挙運動の解禁は、まさに民意に後押しされたものなのだから、もう少し決定過程の情報公開はできないものなのかと思う。
ちなみに、「意思形成情報(意思形成過程情報)」の公開化は、地方自治体のほうが進んでいる感がある。思えば情報公開制度自体、自治体のほうが先行していて、国が「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」を制定して施行したのは平成13年4月1日だから、施行後まだ10年もたっていないわけである。意思形成過程のオープン化という潮流が国政に反映されるようになるのには、まだ少し時間がかかるのであろう。
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さっぽろ雪まつり

2013年02月10日 | 自治体
2月9日、さっぽろ雪まつり大通公園7丁目会場の「HBCタイ王国広場」で、大雪像「ワット・ベンチャマボピット(大理石寺院)」を見てきました。
http://www.snowfes.com/place/odori/index.html#07



この大雪像の制作は、陸上自衛隊北部方面通信群及び北部方面後方支援隊で、北部方面通信群長の堀江一等陸佐にご案内いただきました。

雪像のモデルとして何を選ぶかについては、スポンサーであるHBCと札幌市などが相談して決めているようです。今年はバンコクにあるワット・ベンチャマボピットが選ばれましたが、この寺院は屋根瓦を除いてほとんどすべての建材に大理石を使用しているので別名「大理石寺院」として知られています。
モデルが決まると、資料を収集して、木で模型を作りますが、屋根瓦の上の飾りや装飾の付いた窓枠、日本風にいえば破風の部分の彫刻も、すべて手抜きしないで再現されています。これをもとに雪像を作っていくそうです。



破風、屋根や窓枠の装飾の部分は、雪像を直に削って作るとこまかく再現できないので、木で型枠を作り、そこに雪を押し込んで固め、手作業で1個ずつ部品を作っていって、それを雪像に張り付けることで再現しています。







連日、150人~160人程度の隊員を投入して約1ヶ月かけて雪の輸送や雪像作りにあたるので、製作に要する延べ人数は数千人になるとのこと。
ところでこの雪像ですが、雪でできているので、当然気温が上がると溶けてしまいます。昨年は雪まつり実行委員会が制作したキャラクター「初音ミク」の雪像が倒壊してけが人が出るという事件もあり、安全には相当に注意が払われているようです。実は期間中にも、大雪像は少しずつ後ろに倒れてくるので、それを計算して制作に当たるそうです。雪像の裏側を見せていただきましたが、見た目にもわかるほどに後ろに傾いてきていました。



雪像の上に雪が積もると、せっかく再現した装飾も積もった雪に隠れて見えなくなってしまいます。そこで、雪まつりのライトアップの時間が終わった後、真夜中に雪像の周囲に足場を組み、雪像に登って積もった雪を取り除くという作業を定期的に行っているそうです。私が雪像を見たのは2月9日ですが、2月8日の22時すぎから足場を組んで徹夜で雪像をきれいにする作業を行い、再び足場を解体して観覧に供するための準備が終わったのは、朝方の5時頃だったとのこと。最も危険なのは、大雪像の屋根の部分の雪を取り除くことで、これは屋根に自衛隊員がまたがって作業をしたとのことです。
実際、前日の夜は吹雪になっていました。あの吹雪の中、雪像をきれいにする作業を行っていたのですね。





観光客が雪像を楽しんでいる裏では、大変な苦労があることがわかりました。
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「情報セキュリティ特別講義」最終回

2013年02月07日 | 情報法
昨日の情報セキュリティ大学院大学「情報セキュリティ特別講義」は、最終回で特別に2コマ連続で行いました。

1コマ目の講師は、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ執行役員セキュリティ部長・井手明子様、2コマ目は新島学園短期大学専任講師・花田経子先生
井手さんは、ドコモの女性役員第1号です。
2006年にウォールストリートジャーナルの「注目すべき世界の女性 50 人」に選出された方で、理路整然としたご講義でした。
花田先生は、情報セキュリティ人材育成の目標として、卓越したITスキルと卓越した(一般的)業務遂行能力との両立というスーパーマン的目標は非現実的であり、ボリュームゾーンとして企業の中堅管理職に情報セキュリティを理解した人材を送り出せるようにすべきだというご意見でした。
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FFIECの金融機関のソーシャルメディア利用ガイドライン案

2013年02月01日 | 情報法
連邦金融機関検査協議会(Federal Financial Institutions Examination Council:FFIEC)から、金融機関のソーシャルメディアを利用した顧客との連絡・取引等に関するガイドラインの案が公表された。

http://www.wilmerhale.com/uploadedFiles/WilmerHale_Shared_Content/Files/PDFs/Draft-Guidance.pdf

この中ではプライバシーに関する事項も含まれているが、アメリカの場合は個別領域におけるプライバシー保護法を定めるいわゆるセクトラル方式であるので、まず関連する法令が列挙され、それらとの関連で検討すべき事項が解説されている。
関連する連邦法は、次のとおりとなる。
・グラムリーチビリー法とそのガイドライン
・CAN SPAM法、電話消費者保護法
・児童のオンライン上のプライバシー保護法
・銀行秘密保護法とそれに基づくマネーロンダリング防止プログラム

またこれらの法令を遵守したとしても、プライバシー保護に関する懸念が残るので、適切に対処すべきであるとされており、具体的には次の点を考慮しなければならないとされている。

・顧客からの苦情や問い合わせ
・従業員のソーシャルメディア利用
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