ネット選挙運動の解禁がいよいよ現実のものになろうとしている。
このところ、「○○党が原案」、「△△党が修正案」、「自公が議論のたたき台提示」、「与野党実務者が一致」というような新聞記事をよく見かける。
ところで、不思議なことに、その原案とか修正案、たたき台の類が紙面に載っていることは、まずないといってよい。各政党のホームページを見ても同様で、どのような原案やたたき台が提出されたのかを国民が知ることは難しい。
今回、ネット選挙運動を解禁するために必要となる公職選挙法の改正が議員立法で行われる見通しであることが関係しているかもしれないが、インターネットを政治に持ち込むということの一つの意義が見落とされているのではないかという気がする。
従来、政治的な意思決定や政策決定の過程は、特にそれが政治家間で行われるときには、ほとんどといってよいほどオープンになっていなかった。これは国政も地方政治も同様であると思われる。情報公開の実務においても、政治的な意思決定や政策決定の過程に関係する情報については、「意思形成情報(意思形成過程情報)」として非開示とすることが認められる慣行にある。それは、意思形成の途上を明らかにすると内外からの賛否両論が殺到して合意形成が困難になったり、特定の人々が有利・不利になったりすることが理由になっている。また、政治家にとっては政治的な意思決定や政策決定の過程を政治家が独占することこそが重要であり、ここをオープンにすることは政治家たる存在意義にかかわってくるから、そこには消極的にならざるをえないのかもしれない。
従来は上記のように意思形成過程を非公開としつつ、予想される利益対立・意見対立に対して慎重に配慮し、各種のアクターと公式・非公式な接触・折衝の機会も持ちながら、最終的に政策として公開される際には大きな反発が生まれないようにするという手法で意思決定することが多かったと思われる。自民党における総務会の全員一致主義は、その典型であると思う。
インターネットを政治に利用するということは、このような「調整」型の意思決定ではなく、意思形成過程をオープンにしてそこに民意を反映させていく意思決定を取り入れていくという側面も持っている。その意味では、今回のネット選挙運動の解禁論議は、まだ従来の政治の延長戦上にあるのではないかという印象を免れない。
私自身、すべての領域における政治的意思決定の過程に民意を直接反映させるべきだとは思わない。それにはふさわしくない政策領域があるのは事実だと思う。しかし、ネット選挙運動の解禁は、まさに民意に後押しされたものなのだから、もう少し決定過程の情報公開はできないものなのかと思う。
ちなみに、「意思形成情報(意思形成過程情報)」の公開化は、地方自治体のほうが進んでいる感がある。思えば情報公開制度自体、自治体のほうが先行していて、国が「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」を制定して施行したのは平成13年4月1日だから、施行後まだ10年もたっていないわけである。意思形成過程のオープン化という潮流が国政に反映されるようになるのには、まだ少し時間がかかるのであろう。
このところ、「○○党が原案」、「△△党が修正案」、「自公が議論のたたき台提示」、「与野党実務者が一致」というような新聞記事をよく見かける。
ところで、不思議なことに、その原案とか修正案、たたき台の類が紙面に載っていることは、まずないといってよい。各政党のホームページを見ても同様で、どのような原案やたたき台が提出されたのかを国民が知ることは難しい。
今回、ネット選挙運動を解禁するために必要となる公職選挙法の改正が議員立法で行われる見通しであることが関係しているかもしれないが、インターネットを政治に持ち込むということの一つの意義が見落とされているのではないかという気がする。
従来、政治的な意思決定や政策決定の過程は、特にそれが政治家間で行われるときには、ほとんどといってよいほどオープンになっていなかった。これは国政も地方政治も同様であると思われる。情報公開の実務においても、政治的な意思決定や政策決定の過程に関係する情報については、「意思形成情報(意思形成過程情報)」として非開示とすることが認められる慣行にある。それは、意思形成の途上を明らかにすると内外からの賛否両論が殺到して合意形成が困難になったり、特定の人々が有利・不利になったりすることが理由になっている。また、政治家にとっては政治的な意思決定や政策決定の過程を政治家が独占することこそが重要であり、ここをオープンにすることは政治家たる存在意義にかかわってくるから、そこには消極的にならざるをえないのかもしれない。
従来は上記のように意思形成過程を非公開としつつ、予想される利益対立・意見対立に対して慎重に配慮し、各種のアクターと公式・非公式な接触・折衝の機会も持ちながら、最終的に政策として公開される際には大きな反発が生まれないようにするという手法で意思決定することが多かったと思われる。自民党における総務会の全員一致主義は、その典型であると思う。
インターネットを政治に利用するということは、このような「調整」型の意思決定ではなく、意思形成過程をオープンにしてそこに民意を反映させていく意思決定を取り入れていくという側面も持っている。その意味では、今回のネット選挙運動の解禁論議は、まだ従来の政治の延長戦上にあるのではないかという印象を免れない。
私自身、すべての領域における政治的意思決定の過程に民意を直接反映させるべきだとは思わない。それにはふさわしくない政策領域があるのは事実だと思う。しかし、ネット選挙運動の解禁は、まさに民意に後押しされたものなのだから、もう少し決定過程の情報公開はできないものなのかと思う。
ちなみに、「意思形成情報(意思形成過程情報)」の公開化は、地方自治体のほうが進んでいる感がある。思えば情報公開制度自体、自治体のほうが先行していて、国が「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」を制定して施行したのは平成13年4月1日だから、施行後まだ10年もたっていないわけである。意思形成過程のオープン化という潮流が国政に反映されるようになるのには、まだ少し時間がかかるのであろう。