Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

情報公開・個人情報保護審査会等委員交流フォーラム

2012年08月31日 | 情報法
8月30日に、学術総合センターで一般財団法人行政管理研究センター主催の情報公開・個人情報保護審査会等委員交流フォーラムが開催された。

情報公開請求に関するこの数年の最大の問題は、営利的な目的による大量請求であるが、今年もこれがメインとなっている感があった。

非常に多くの示唆を得たのは、西南学院大学教授の石森久広先生による「地方審査会の運営の実情について-最近の審査会・審議会からの「自主」解釈・運用例」という講演。
地方自治体の個人情報保護条例や情報公開条例は、自治体間で条例の構造や文言がかなり違うことは知られているが、石森先生は「全国共通解釈」と「地方自主解釈」という概念を提示され、条文の構造や文言が同じであるのに審査会における解釈が違っている例を挙げられた。
そして、このような解釈の違いについて、自治体規模や条例の規定の違いという地方の実情により、解釈のあり方が違うことはあり得るとしつつも、基本的に同じ構造・条文の解釈について、自治体間でほぼ共通解釈ができあがりつつあるときに、特に地方の事情を参酌する必要もないのに地方自主解釈を行うことが適切であるかという疑問を提示された。
地方自治体は地方独自の解釈を奨励しているようにも読めるが、情報公開条例、個人情報保護条例は究極的には情報公開や個人情報保護の目的や理念を実現することを義務づけられている。したがって地方の自主解釈は認められてよいが、法の目的や理念に即したものとして展開していかなければならない。このことから、条文の構造や文言が同じである場合に共通解釈とは異なる自主解釈が認められるのは、共通解釈よりもすぐれた自主解釈を行いうる場合であり、それは認められる。しかしそうであれば、他の自治体もその自主解釈を採用することによって逆に共通解釈はそれに近いものに修正していかなければならず、そうすることによって共通解釈と自主解釈の差は昇華する、というのが先生の結論であった。

その後、懇親会で堀部政男先生と自治体における取扱いについてかなり長時間意見交換をさせていただき、非常に有意義な一日であった。



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瀬谷銀座通り商店会 夏まつり

2012年08月26日 | 自治体
銀座通りの夏まつりは、人がいっぱいで通りを歩けないほどになると聞いていた。
20:00頃に行ってみたが、なるほど大変な人出。日頃は銀座通りを通るのはお年寄りが多いが、この日は子どもや若者も多かった。





銀座通りに面した時間貸し駐車場を借り切って、演芸場が作られていた。
瀬谷小ブラスバンド、15時から瀬谷中吹奏楽部、16時から打ち水イベント、16時半から日本太鼓TAKERU、17時半からヒップホップダンス、18時から民謡ショーというタイムスケジュールで、私たちが行ったときには民謡ショーの真っ最中だった。

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United States v. Jones, 565 U.S. __ (2012) 補足意見の要約

2012年08月20日 | 情報法
ソトメイヤー判事の補足意見

政府はジョーンズの財産である自動車に、ジョーンズを監視する目的でGPS装置を取り付けたのであるから、長い間修正第4条の保護を受けると認められてきたプライバシーの利益を侵害したことになる。修正第4条は財産に対する不法侵入だけに適用されるものではなく、不法侵入が生じていない場合であっても社会が合理的と認めるプライバシーの期待を政府が侵害したときには修正第4条にいう「捜索」が発生する。「物理的な侵害は、今日の多くの監視形態においては不必要である」。「電子的手法またはその他の考えられる手法によって財産権に対する物理的な侵害なしに監視を行ったときには、法廷意見の不法侵入のテストでは何の基準も与えることができない」 。
GPSによる監視は、他の監視手段に比べると低コストで行うことが可能であり、短期間であってもある人物の行動の完全な履歴を提供する。それには、親族、政治性、専門性、宗教、性的嗜好など多くの面が反映しているが、政府はこれらの記録を保存し、将来編集して利用することによって、表現の自由や集会の自由に対する萎縮効果を与えたりプライバシーを侵害したりすることが可能であり、GPSによる監視のこのような特徴を看過することはできない。
さらにいえば、個人が第三者に任意で公開した情報についてはプライバシーに対する合理的な期待を有しないという最高裁の先例は、再検討が必要である。このようなアプローチは、人々が通常の生活を送っている間に大量のデータを第三者に公開することになるデジタル時代には不適当である。「人々は、電話番号や文字を携帯電話事業者に、URLや電子メールアドレスをインターネットサービスプロバイダに、購入した書籍、食料品や薬品をオンライン小売業者に公開している。アリート判事が記すように、おそらく中にはプライバシーと利便性との『トレードオフ』を見出している人、プライバシーの縮減を避けられないものとして甘受している人もいるだろうし、そうではない人もいるだろう。ただ、人々が先週、先月、または昨年訪問したすべてのウェッブサイトのリストを令状なしに政府に公開することを何の苦情もなく受け入れるかといえば、それは疑問である」 。本件では政府がジョーンズのジープに物理的に侵入しているので判決で検討すべき範囲は狭くなっており、これらの難しい問題を本件で解決することは不必要である。ゆえに法廷判決に同調する。

アリート判事の補足意見

本件では、21世紀の監視技術であるGPSを令状の期限外に使用して車両を監視したことが修正第4条の禁ずる不合理な捜索に当たるかどうかが争点であるが、法廷意見は皮肉なことに18世紀の不法行為法に基づいてこの事件を判断することを選択した。「この論理は、私の判断するところ賢明ではない。修正第4条の文言を強調しすぎて、修正第4条の他の判例法を援用しようとしないし、きわめて不自然である」 。
本件では、被告人のプライバシーの合理的な期待は、長期間被告人の運転する車両の動きを監視されたことによって侵害されたかどうかを判断すべきである。法廷意見は、車両へのGPS装置の取り付けがなぜ「不合理な捜索及び逮捕・押収」にあたるのかを詳しく説明していないし、「逮捕・押収」にあたらないとしている。しかし、なぜGPS装置の取り付けが「捜索」だけに該当するのかは疑問である。18世紀後半の状況を本件に類推して適用するのはほとんど不可能であり、法廷意見の不法侵入の解釈には正しくない点がある 。
法廷意見は過度に不法侵入の法理に依存するが、不法侵入の法理は連邦最高裁においてくりかえし批判を受けており、判例は修正第4条を適用するには不法侵入の存在を必要としないと方向に解釈を重ねてきている。
法廷意見には、先例とは合わない4点の問題点がある。第1に、GPS装置の取り付けを重視しすぎて何が本当に重要かを看過していることである。法廷意見は、長期間にわたるGPS監視装置の使用よりも、運転それ自体には軽微な影響しか与えない物理的な装置の取り付けを重視している。捜査官がGPS装置を取り付けると修正第4条違反になるのに、「連邦政府が自動車メーカーに対してGPS装置をあらかじめすべての車に取り付けることを要求または要請した場合、最高裁の理論は何の保護も与えないことになる」 。第2に、警察がGPS監視装置を取り付けてほんのわずかな間使用しただけでも修正第4条違反になるのに、警察が長期間にわたって覆面パトカーで追跡して監視し空からの監視の援助も受けたとしても、この監視は修正第4条の問題にならない。第3に、法廷意見の理論では、州によって適用が異なることになる。夫婦の共有財産制を定めていない州で本件のような事案が発生した場合、妻名義で登録されている車両は被告人のものではないから州政第4条の適用を受けないということになる。第4に、法廷意見の理論は物理的な手段を伴わず、純粋に電子的な手段によって監視が行われた場合には適用できない。
おそらく最も重要なのは、今日、携帯電話その他のワイヤレス機器がワイヤレス・キャリアにユーザーの場所を追跡して記録することを許しているという点である。これらの新たなデバイスの利用が、平均的なユーザーの毎日の行動に関するプライバシーへの期待の範囲を具体化していくことになる。
「劇的に技術が進化した状況においては、プライバシー問題に対する裁量の解決は、法律を制定することである。立法府は、変化する人々の行動に対応し、詳細な基準を定め、プライバシーと公共の安全とを包括的に衡量することができるからである。」 。しかし今日、連邦も、ほとんどの州もGPS追跡装置を刑事捜査目的で利用することを規制する法律を制定していない。したがって、本件でなしうる最善の方法は、既存の修正第4条の理論を本件に適用して、GPSの使用が合理的な人間の予見可能性をこえる侵害の程度を生じさせたかどうかを検討することである。
このアプローチに照らすと、比較的に短期間公道上における行動を監視することは、我々の社会が合理的と認識するプライバシーの期待とは合致する。しかし、ほとんどの刑事捜査事案においてGPS監視装置を長期間使用することはプライバシーの期待に反する。本件では、捜査官は4週間にわたり令状なしで被告人の車両のすべての動きを監視していた。監視期間がどの程度になると修正第4条に違反するのかという不確定な要素はあるが、警察は令状を求めることは可能である。
これらの理由から、本件における長期間の監視は修正第4条の禁ずる不合理な捜索にあたると判断し、控訴裁判所の判決を認容するという法廷意見に同調する。


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United States v. Jones, 565 U.S. __ (2012) 法廷意見の要約

2012年08月16日 | 情報法
United States v. Jones, 565 U.S. __ (2012)

アメリカ連邦最高裁判所において、GPS装置を被疑者の車両に装着して得られた証拠に基づき被疑者を起訴したのは憲法修正第4条に違反すると判断されたUnited States v. Jones判決(2012年)のスカリア判事の法廷意見の要約です。

I
(事実概要:略)

II
A
政府がGPS装置を自動車に装着し、自動車の動きを監視するために用いたことは、修正第4条 にいう「捜索」に当たる。「本件では何が起きたのかを明らかにすることは重要であり、本件では政府が情報を収集する目的で私有財産を物理的に占拠した。このような物理的な侵害が、修正第4条の採択時に意図されていた『捜索』とみなされることには、疑いの余地がない」。
修正第4条は、少なくとも19世紀後半まではコモン・ロー上の不法侵入と結びつけて理解されていたのである。その後の判決では所有権に依拠したアプローチからは離れるようになり、カッツ対合衆国判決 は「修正第4条が保護するのは人民であり、場所ではない」と判示しつつ、公衆電話ブースに盗聴器を取り付ける行為を修正第4条違反とした。その後の判決では、公務員が「プライバシーの合理的期待」を侵害した場合のみ修正第4条違反となるというカッツ判決におけるハーラン(Harlan)判事の基準 を適用してきた。
本件では、政府はハーラン判事の基準に依拠し、捜査官がジョーンズのジープにアクセスしたのは公道や駐車場など誰の目にも触れる場所であるからジョーンズにはプライバシーの合理的期待は存在しないと主張するが、そのような政府の主張について検討する必要はない。カッツ判決は修正第4条の射程を狭くしたわけではない。ソルダル対クック郡判決 で判示されたように、カッツ判決は所有権的諸権利を修正第4条の絶対的な基準とはしなかったものの、財産権に対する保護としてかねて認識されていたものを消してしまったわけではない のである。
政府は、別の電子的追跡装置であるビーパー の使用についてプライバシー侵害を否定した連邦最高裁の2つの判決に依拠する。第1のケースである合衆国対ノッツ判決 では、自動車に搭載されるコンテナに取り付けたビーパーの使用が修正第4条に違反するかが問題となり、ビーパーの使用は被告人ノッツ(Knotts)のプライバシーの合理的な期待を侵害するものではないと判示されたが、ビーパーはコンテナをカッツが所有する以前から当時の所有者の同意によって取り付けられていたのであって、ノッツ自身もビーパーの取り付け自体については争っていない。「すでに論じたように、カッツ判決のプライバシーの合理的な期待のテストは、コモン・ローの不法侵入のテストの代用ではなく、それに追加されるものである」。ビーパーに関する第2のケースである合衆国対カロー判決 が導く結論も、違うところはない。ノッツ判決では、当初第三者が所有するコンテナにビーパーが取り付けられ、後にコンテナが被告人所有となったが、本件でも当初の所有者の同意によってコンテナにビーパーが取り付けられた後、ビーパーの存在を知らない被告人カロー(Karo)にコンテナが売却された場合に、カローのプライバシーに対する期待を侵害するかという点が問題となった。カローはビーパー共々コンテナを自己の所有として受け入れたのであって、ビーパーがコンテナの場所を追跡するため用いられたとしても、カローにはビーパーの存在に抗議する権利はない。これに対してジョーンズの場合は、政府がGPS装置を取り付けて不法侵入を行ったときにすでにジープを所有していたのであるから、合衆国対ノッツ判決、合衆国対カロー判決とは事情が異なっている。

B
我々が適用しているのは、不合理な捜索に対する18世紀の保障であり、修正第14条が採択されたときに最小限の程度の保障として与えられたものである。他の判事の同調意見は、この考えを共有していない。同調意見では、カッツ判決のプライバシーへの合理的な期待のテストだけに依拠しており、すでに存在する所有権的諸権利をないがしろにするものである。また同調意見は、公道上の人間の動きを比較的短期間監視することは許されるが、長期間GPS監視装置を捜査に使用することは許されないとするが、このような考えは別の問題を惹起する。捜査対象となっている犯罪の性質に応じて「不合理な捜索」が許容されるかどうかについての先例は存在しないからである。4週間は長すぎるというのならば、盗まれた電子機器の捜索のために2日間監視することは許されるのであろうか。テロリストの疑いのある者に対する6ヶ月の監視はどうなのか。このような問題についての解決をここで急ぐ必要はない。

III
政府は、仮にGPS装置の装着と使用が「捜索」にあたるとしても、捜査官がジョーンズに大規模なコカイン取引の指導者であるとの嫌疑をかけるのは十分に合理的であるから、修正第4条の下でもGPS装置の装着と使用は違法とはいえないとも主張する。しかし政府はこの件について論証しなかったので、連邦地裁の判決においてもこの件には触れていない。この件についての主張は失当であると判断する。

コロンビア特別区連邦控訴裁判所の判決は認容される。
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情報セキュリティ大学院大学ワークショップ 「クラウド時代の契約問題」

2012年08月13日 | 情報法
ファーストサーバ事件は、約6,000の企業、大学、NPOなどが大きな影響を受けたと報道されています。 また、iCloudやAmazonクラウドでもハッキングやシステム障害が発生しています。

 これまでクラウドなどのインターネット上のサービス提供者(データセンター、レンタルサーバ、 ホスティングサービスなどを含む)とのサービス契約の問題については、あまり深く議論されていませんでした。 しかし、本格的なクラウド時代を迎えて、クラウドのサービス停止、データの消失、クラウドからの データの漏洩などが発生した場合にどのように法的問題が発生するのかをあらかじめ理解しておくことは、 急務となっています。

 そこで本ワークショップでは、ファーストサーバ事件等クラウド/ホスティング事業者の損害賠償責任 に関する解説で活躍している吉井和明・弁護士、クラウドの法律問題に詳しい夏井高人・明治大学教授をはじめ、 クラウドなどのサービス提供者との契約問題に詳しい幅広い領域の専門家をお招きし、 サービス事業者との間でサービス不提供やデータ消失等の際を見越した契約を締結することはできるのか、 できない場合にはどのような対応が必要になるのか、どのような法整備が必要なのか等についてご解説いただきます。 皆様のご参加をお待ちしております。

日時 2012年9月7日(金)14:00~17:30 (13:30受付開始)
会場 情報セキュリティ大学院大学 3F 303/304
(横浜市神奈川区鶴屋町2-14-1 横浜駅きた西口より徒歩1分)
主催 情報セキュリティ大学院大学
後援 システム監査学会、情報ネットワーク法学会、日本セキュリティ・マネジメント学会、CSA Japan(各予定)
参加費  1,000円 ※参加費は当日受付にてお支払いください(当日現金払いのみ)
(IISEC教職員・学生・修了生、岩崎学園教職員及び学生・生徒、ISSスクエア関係者は無料)
参加申込 こちらよりお申込み下さい。(会場準備の都合上、事前に参加申込みをお願いいたします。)
定員 100名(定員に達し次第、締め切らせていただきます)

プログラム(仮)
14:00 ~ 14:10 開会挨拶  田中英彦 情報セキュリティ大学院大学学長
14:10 ~ 15:30 基調講演  吉井和明 弁護士(弁護士法人おおいた市民総合法律事務所)
15:30 ~ 15:50 休息
15:50 ~ 16:10 個別講演(1) 林紘一郎 前・情報セキュリティ大学院大学学長
16:10 ~ 16:30 個別講演(2) 原田要之助 情報セキュリティ大学院大学教授
16:30 ~ 16:40 休息
16:40 ~ 17:30 パネルディスカッション

コーディネーター  湯淺墾道 情報セキュリティ大学院大学教授
パネリスト      夏井高人 弁護士・明治大学法学部教授
            林紘一郎 前・情報セキュリティ大学院大学学長
            原田要之助 情報セキュリティ大学院大学教授
            吉井和明 弁護士(弁護士法人おおいた市民総合法律事務所)

17:30 終了
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