12月21日に、北九州市官民データ活用推進基本条例が制定された。
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/sigikai/g0401031.html
政令市における官民データ活用推進基本条例としては、3月28日に制定された横浜市官民データ活用推進基本条例に続く2番目の条例ということになるだろう。
http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/reiki/reiki_honbun/g202RG00001908.html
北九州市条例をみると、条文の立て方などは横浜市の条例のそれを踏襲しており、横浜市の条例が強い影響を与えているものと思われる。あらためて横浜市官民データ活用推進基本条例の先駆者としての意義を感じる。他方で北九州市の特性から入ったと思われる文言もあるので、両者を比較しつつ、簡単な検討を試みたい。
第1条(目的)
横浜市条例、北九州市条例ともに、官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)の第1条の条文におおむね倣った形となっているが、北九州市の場合は官民データ活用推進基本法に基づき制定すること、市が直面する具体的な課題として急速な少子高齢化と人口減少を具体的に例示しているところに特色があろう。
第2条(定義)
両条例ともに、用語の意義は官民データ活用推進基本法の例によるとしているが、北九州市条例は法第2条の定義の部分のみを参照する構造となっている。
なお、「インターネット・オブ・シングス」については、両条例では官民データ活用推進基本法の定義を参照している。
現時点で、インターネット・オブ・シングスについて規定している法律としては、2法がある。
最初にインターネット・オブ・シングスについての定義を置いたのは、特定通信・放送開発事業実施円滑化法の改正法(平成28年4月27日法律第32号)である。
官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)は、次のような規定を置いている。
両者のインターネット・オブ・シングス自体の定義は、「インターネットに多様かつ多数の物が接続され、及びそれらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の円滑な流通が国民生活及び経済活動の基盤となる社会」(改正特定通信・放送開発事業実施円滑化法附則)、と「インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報」(官民データ活用推進基本法)というように、若干異なっている。
特定通信・放送開発事業実施円滑化法の改正法は、「社会」までを定義に含めており、その点では官民データ活用推進基本条例が参照する官民データ活用推進基本法の定義よりも広範な射程を有している。
第3条(官民データ活用推進基本計画)
両条例の最大の特色は、この部分である。
官民データ活用推進基本法第9条は、都道府県に対して都道府県官民データ活用推進計画の策定を義務づけているが、市町村(特別区を含む)には、努力義務としている。これは地方公共団体の規模を勘案して中小団体の負担に配慮したものと思われるが、本来、住民や事業者等に関するデータを豊富に持っているのは、基礎レベル自治体である市区町村であろう。特に政令市は、その人口と規模からみて、県よりも多くのデータを持っている場合も少なくないと思われる。
この点で、政令市である両市の条例において、都道府県と同様に基本計画の策定を義務づけたことは画期的である。
ただし、横浜市条例の場合は、施策の具体的な目標及び達成期間を定めることにつき「原則として」としているのに対して(第4項)、北九州市条例の場合は、「原則として」の文言がない(第4項)。これについて、北九州市条例のほうが官民データ活用の具体的な推進を強く求めたものと解することもできるが、「原則として」の文言を欠くことから、逆に期間内に確実に達成できるような目標だけを掲げるようになる恐れもあり、どちらのほうが良いのかは検討の余地があるところである。
また、官民データ活用の推進に関する事項として、北九州市条例は「市民の安全・安心に資する情報の利活用」が挙げられている(第3項第6号)。北九州市安全・安心条例を定めるなど、安全・安心に取り組んでいる北九州市の特性を反映していると思われる。
また、横浜市条例が官民データ活用推進計画の案を作成したときには市会に対して報告すると共にインターネットの利用その他適切な方法で遅滞なく公表することを求め(第5項、第6項)、変更したときも準用する(第7項)としているのに対して、北九州市条例は計画案の作成及び変更について市会の所管常任委員会に報告することを求めている(第5項)という違いがある。、
第4条(推進体制の整備等)
両条例は、官民データ活用推進計画を作成し、及びその実施を推進するために必要な体制の整備及び財政上の措置を講ずる努力義務を定める。市の名称の部分を除いては、全く同じ条文である。
第5条(協働による官民データ活用の推進)
両条例ともに、官民データの利用に係る需要の把握を努力義務としている。
また、人工知能関連技術、インターネット・オブ・シングス活用関連技術、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術その他の先端的な技術の活用等官民データ活用の推進の取組について、協働により積極的に当該取組を推進することを努力義務としている。協働の相手方について、横浜市条例は「企業、大学、市民等」、北九州市条例は「事業者、大学、市民等」としている違いがある。
第6条(官民データ活用に関する調査及び研究)
連携して広く官民データが活用されるための在り方について、調査及び研究を行うことを努力義務としている。
第5条と同様、相手方について、横浜市条例は「企業、大学、市民等」、北九州市条例は「事業者、大学、市民等」としている違いがある。
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/sigikai/g0401031.html
政令市における官民データ活用推進基本条例としては、3月28日に制定された横浜市官民データ活用推進基本条例に続く2番目の条例ということになるだろう。
http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/reiki/reiki_honbun/g202RG00001908.html
北九州市条例をみると、条文の立て方などは横浜市の条例のそれを踏襲しており、横浜市の条例が強い影響を与えているものと思われる。あらためて横浜市官民データ活用推進基本条例の先駆者としての意義を感じる。他方で北九州市の特性から入ったと思われる文言もあるので、両者を比較しつつ、簡単な検討を試みたい。
第1条(目的)
横浜市条例、北九州市条例ともに、官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)の第1条の条文におおむね倣った形となっているが、北九州市の場合は官民データ活用推進基本法に基づき制定すること、市が直面する具体的な課題として急速な少子高齢化と人口減少を具体的に例示しているところに特色があろう。
第2条(定義)
両条例ともに、用語の意義は官民データ活用推進基本法の例によるとしているが、北九州市条例は法第2条の定義の部分のみを参照する構造となっている。
なお、「インターネット・オブ・シングス」については、両条例では官民データ活用推進基本法の定義を参照している。
現時点で、インターネット・オブ・シングスについて規定している法律としては、2法がある。
最初にインターネット・オブ・シングスについての定義を置いたのは、特定通信・放送開発事業実施円滑化法の改正法(平成28年4月27日法律第32号)である。
附則第5条第2項第1号
新技術開発施設供用事業 インターネット・オブ・シングスの実現(インターネットに多様かつ多数の物が接続され、及びそれらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の円滑な流通が国民生活及び経済活動の基盤となる社会の実現をいう。)に資する新たな電気通信技術の開発又はその有効性の実証のための設備(これを設置するための建物その他の工作物を含む。)を他人の利用に供する事業をいう
新技術開発施設供用事業 インターネット・オブ・シングスの実現(インターネットに多様かつ多数の物が接続され、及びそれらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の円滑な流通が国民生活及び経済活動の基盤となる社会の実現をいう。)に資する新たな電気通信技術の開発又はその有効性の実証のための設備(これを設置するための建物その他の工作物を含む。)を他人の利用に供する事業をいう
官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)は、次のような規定を置いている。
第2条第3項
この法律において「インターネット・オブ・シングス活用関連技術」とは、インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の活用に関する技術であって、当該情報の活用による付加価値の創出によって、事業者の経営の能率及び生産性の向上、新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するものをいう。
この法律において「インターネット・オブ・シングス活用関連技術」とは、インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の活用に関する技術であって、当該情報の活用による付加価値の創出によって、事業者の経営の能率及び生産性の向上、新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するものをいう。
両者のインターネット・オブ・シングス自体の定義は、「インターネットに多様かつ多数の物が接続され、及びそれらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の円滑な流通が国民生活及び経済活動の基盤となる社会」(改正特定通信・放送開発事業実施円滑化法附則)、と「インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報」(官民データ活用推進基本法)というように、若干異なっている。
特定通信・放送開発事業実施円滑化法の改正法は、「社会」までを定義に含めており、その点では官民データ活用推進基本条例が参照する官民データ活用推進基本法の定義よりも広範な射程を有している。
第3条(官民データ活用推進基本計画)
両条例の最大の特色は、この部分である。
官民データ活用推進基本法第9条は、都道府県に対して都道府県官民データ活用推進計画の策定を義務づけているが、市町村(特別区を含む)には、努力義務としている。これは地方公共団体の規模を勘案して中小団体の負担に配慮したものと思われるが、本来、住民や事業者等に関するデータを豊富に持っているのは、基礎レベル自治体である市区町村であろう。特に政令市は、その人口と規模からみて、県よりも多くのデータを持っている場合も少なくないと思われる。
この点で、政令市である両市の条例において、都道府県と同様に基本計画の策定を義務づけたことは画期的である。
ただし、横浜市条例の場合は、施策の具体的な目標及び達成期間を定めることにつき「原則として」としているのに対して(第4項)、北九州市条例の場合は、「原則として」の文言がない(第4項)。これについて、北九州市条例のほうが官民データ活用の具体的な推進を強く求めたものと解することもできるが、「原則として」の文言を欠くことから、逆に期間内に確実に達成できるような目標だけを掲げるようになる恐れもあり、どちらのほうが良いのかは検討の余地があるところである。
また、官民データ活用の推進に関する事項として、北九州市条例は「市民の安全・安心に資する情報の利活用」が挙げられている(第3項第6号)。北九州市安全・安心条例を定めるなど、安全・安心に取り組んでいる北九州市の特性を反映していると思われる。
また、横浜市条例が官民データ活用推進計画の案を作成したときには市会に対して報告すると共にインターネットの利用その他適切な方法で遅滞なく公表することを求め(第5項、第6項)、変更したときも準用する(第7項)としているのに対して、北九州市条例は計画案の作成及び変更について市会の所管常任委員会に報告することを求めている(第5項)という違いがある。、
第4条(推進体制の整備等)
両条例は、官民データ活用推進計画を作成し、及びその実施を推進するために必要な体制の整備及び財政上の措置を講ずる努力義務を定める。市の名称の部分を除いては、全く同じ条文である。
第5条(協働による官民データ活用の推進)
両条例ともに、官民データの利用に係る需要の把握を努力義務としている。
また、人工知能関連技術、インターネット・オブ・シングス活用関連技術、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術その他の先端的な技術の活用等官民データ活用の推進の取組について、協働により積極的に当該取組を推進することを努力義務としている。協働の相手方について、横浜市条例は「企業、大学、市民等」、北九州市条例は「事業者、大学、市民等」としている違いがある。
第6条(官民データ活用に関する調査及び研究)
連携して広く官民データが活用されるための在り方について、調査及び研究を行うことを努力義務としている。
第5条と同様、相手方について、横浜市条例は「企業、大学、市民等」、北九州市条例は「事業者、大学、市民等」としている違いがある。