Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

投票日当日の選挙運動

2023年01月22日 | 選挙制度
先日、ある新聞記者から「なぜ投票日当日の選挙運動は禁じられているのですか」という質問を受けた。

日本では、公職選挙法によって投票日当日の選挙運動が禁じられている。
正確にいえば、「選挙運動は、各選挙につき、(中略)候補者の届出、(中略)衆議院名簿の届出、(中略)参議院名簿の届出、(中略)公職の候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない。」(129条)として選挙運動を行うことができる期間が定められており、投票日当日はその中に含まれないということである。
それでは、素朴な疑問だが、なぜ投票日当日の選挙運動は禁じられているのであろうか。現行版の『逐条解説個人情報保護法』にはこの点に関する明確な記述がなく、古い版(昭和32年初版)を見ても明確な理由の説明はなかった。その他、いろいろな本を見てみたが、投票日当日の選挙運動の禁止の理由や合理性に関する明確な説明はまだ見出していない。
投票日当日の選挙運動が禁じられたのは、戦後のことで、選挙運動等の臨時特例に関する法律(昭和23年法律第196号)によって初めて禁止規定が設けられた。

(選挙運動の制限)
第二十四条 何人も、左の各号に掲げる行為は、これをすることができない。
一 いかなる方法を以てするを問わず、選挙運動のために特定の候補者の氏名又は政党その他の政治団体の名称を連呼すること、但し、個人演説会を開催する場合にあつてはその実施一時間前からその場所において、街頭における演説会を行う場合にあつてはその実施の場所において、当該演説会の告知のためにする場合は、この限りでない。
二 選挙に関し、自動車を連ね又は隊伍を組んで往来する等気勢を張る行為をすること
三 選挙の当日選挙運動をすること

この規定が公職選挙法にも受け継がれているのである。

第2回国会衆議院本会議(昭和23年5月27日)では、このような発言がある。

<長野重右ヱ門>
しかも、あのトラックの上からどなり歩いたり、あるいは選挙当日、その近くにおいて、だれだれさんを頼みますとか、はなはだしきに至つては候補者みずからおじぎをするというようなとは、国会議員の品位を傷つくるものでありまして、これは断固やれないように法定すべきであると考えるのであります。これが個人の選挙運動に対しますところの徹底であります。

投票日当日の選挙運動は、なにぶんにも当日であるだけに露骨、直裁な候補者への投票依頼が行われることが多かったようだ。
昭和23年の臨時特例法の趣旨は、選挙公営の拡大と選挙の公正であったが、飲食物の提供、連呼行為、自動車を連ねたり隊伍を組んだりして気勢を張る行為が臨時特例法ではじめて禁止されている。
なおこの臨時特例法制定を主導したのは、片山哲首班の社会党内閣であった。社会党内閣は当初、選挙公営を徹底し、個人による自由な選挙運動を全面的に禁止することを企図していたという。この間の経緯は杣 正夫『日本選挙制度史』が詳しい。
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RIETI-早稲田大学-東北大学共催シンポジウム 先端技術と民主主義 国際シンポジウム「日本における電子投票・インターネット投票の未来」

2022年11月23日 | 選挙制度
11月30日(水)に、RIETI-早稲田大学-東北大学共催シンポジウム 先端技術と民主主義 国際シンポジウム「日本における電子投票・インターネット投票の未来」が開催されます。
今回はオンラインではなく、現地開催です。
参加申込は、こちらからお願いいたします。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfBCGtOvGMCnPID4Xmq3O83QYYESSnJ4QrbeCXlQKvKvzmHhg/viewform

イベント概要
日時:2022年11月30日(水)13:00~15:00(日本時間)
開催言語:日本語(一部逐次通訳有り)
会場:早稲田大学三号館302教室(対面開催)
定員:100名
参加費:無料
主催:独立行政法人経済産業研究所/早稲田大学現代政治経済研究所実験政治学部会
共催:東北大学大学院情報科学研究科

プログラム
司会
尾野 嘉邦(早稲田大学政治経済学術院教授 / RIETIファカルティフェロー)

13:05-14:20 報告
13:05- 日本における電子投票の法制上の課題
湯淺 墾道(明治大学大学院ガバナンス研究科教授)

13:25- つくば市スーパーシティ特区におけるインターネット投票について
市ノ澤 充((株)VOTE FOR代表取締役社長)

13:45- 韓国の民間選挙におけるインタ-ネット投票システムの利活用
高 選圭(大邱大学招聘教授)

14:05- 韓国におけるインターネット投票システムの開発
宋 在敏(Korea Smart Voting代表)*高教授による逐次通訳

14:20-15:00 パネルディスカッション(フロアからの質疑応答を含む)
尾野 嘉邦(早稲田大学政治経済学術院教授 / RIETIファカルティフェロー)

湯淺 墾道(明治大学大学院ガバナンス研究科教授)

市ノ澤 充((株)VOTE FOR代表取締役社長)

高 選圭(大邱大学招聘教授)

宋 在敏(Korea Smart Voting代表)*高教授による逐次通訳

河村 和徳(東北大学大学院情報科学研究科准教授)


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先端技術と民主主義 国際シンポジウム「日本における電子投票・インターネット投票の未来」

2022年10月31日 | 選挙制度
11月30日(水)に電子投票・インターネット投票に関するシンポジウムが早稲田大学で開催されます。
私も報告する予定です。
今回はオンラインではなく、オンサイトで対面形式により開催されますので、以下のリンクからお申し込みください。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfBCGtOvGMCnPID4Xmq3O83QYYESSnJ4QrbeCXlQKvKvzmHhg/viewform?usp=sf_link

先端技術と民主主義 国際シンポジウム「日本における電子投票・インターネット投票の未来」
主催:独立行政法人 経済産業研究所
共催:早稲田大学現代政治経済研究所実験政治学部会 / 東北大学大学院情報科学研究科

日時:2022年11月30日 13:00-15:00
場所:早稲田大学三号館302教室(対面開催)、定員:100名
開催言語:日本語(一部、逐次通訳あり)

【プログラム】
<司会> 尾野 嘉邦(早稲田大学政治経済学術院・教授/RIETIファカルティフェロー)
<報告> 13:05 ~ 14:20
 13:05~ 日本における電子投票の法制上の課題
 湯淺 墾道 明治大学大学院ガバナンス研究科教授
 13:25~ つくば市スーパーシティ特区におけるインターネット投票について
 市ノ澤 充 (株)VOTE FOR代表取締役社長
 13:45~ 韓国の民間選挙におけるインタ-ネット投票システムの利活用
 高 選圭 大邱大学招聘教授
 14:05~ 韓国におけるインターネット投票システムの開発
 宋 在敏 Korea Smart Voting代表(高教授による逐次通訳)

<パネルディスカッション(フロアからの質疑応答を含む)> 14:20~15:00
 尾野 嘉邦 (早稲田大学政治経済学術院・教授/RIETIファカルティフェロー)
 湯淺 墾道 (明治大学大学院ガバナンス研究科・教授)
 市ノ澤 充 ((株)VOTE FOR代表取締役社長)
 高 選圭  (大邱大学招聘教授)
 宋 在敏( Korea Smart Voting代表)(高教授による通訳)
 河村 和徳(東北大学大学院情報科学研究科・准教授)

【シンポジウム概要】
日本では、在外選挙でのインターネット投票実現に向けての実証実験が2020年に行われ、現在、つくば市スーパーシティ特区事業においてインターネット投票実現へ向けての事業が進められています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界レベルで非接触型の投票方式であるインターネット投票に注目が集まるなか、本シンポジウムでは、つくば市における取り組みの状況、また民間選挙などに広くインターネット投票を活用している韓国の事例を検討しながら、日本における電子投票・インターネット投票の未来について議論したいと思います。そして、議論を通じ、参加者とともに日本における民主主義のDXの可能性と課題を考えたいと思います。



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2月21日(月)笹川平和財団第3回サイバーセキュリティセミナー2021

2022年02月19日 | 選挙制度
2月21日(月)に、オンラインで第3回サイバーセキュリティセミナー2021「外国からのディスインフォメーションに備えを!~サイバー空間の情報操作の脅威~」が開催されます。
選挙のサイバーセキュリティは選挙制度の問題ともなっており、ディスインフォメーション対策が急務になっています。
参加申込はこちらからどうぞ。
https://www.spf.org/seminar/list/20220221.html


日時
2022年2月21日(月)17:00~19:00 (JST)
開催方法
オンライン(本登録後、開催日当日に参加用URLをご案内いたします)
主催
笹川平和財団

講演者
ディスカッサント
西川 徹矢 氏(笠原総合法律事務所弁護士、元内閣官房副長官補、サイバーフェイクニュース研究会座長)
東 秀敏 氏(米国大統領制兼議会制研究所 (CSPC) 上級フェロー、『ロシアゲートの虚実』著者)
川口 貴久 氏(東京海上ディーアール株式会社主席研究員)
高野 聖玄 氏(脅威分析研究所代表、STeam Research & Consulting共同パートナー)
土屋 大洋 氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
中谷 昇 氏(Z ホールディングス株式会社常務執行役員、Group Chief Trust & Safety Officer)
山本 一郎 氏(一般社団法人次世代基盤政策研究所理事)
湯淺 墾道 (明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授)

モデレーター
大澤  淳 氏 (笹川平和財団安全保障研究グループ特別研究員)
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『逐条解説公職選挙法』の改訂版 その1

2021年11月14日 | 選挙制度
選挙法の研究には必携ともいえるぎょうせいの『逐条解説公職選挙法』の改訂版が出た。編者は黒瀬敏文(総務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)、笠置隆範(同選挙部選挙課長)の2氏で、事実上の総務省選挙部による公職選挙法の公権的解釈を示すものといってよいであろう。
今回の改訂版では上下の2分冊から上中下の3分冊になり、インターネット選挙運動関係の逐条解説が加わった。これまでは公職選挙法改正の際にインターネット選挙運動等に関する各党協議会編『インターネット選挙運動』がほぼ唯一の公権的解釈を示すものであったので、改訂はまさに待望されていた。
改訂版におけるインターネット選挙運動に関する記述について検討してみたいと思う。

「いいね」等について

SNSにおいて「いいね」ボタン等を押すことが選挙運動にあたるかという問題がある。
仮に選挙運動に該当するとすれば、18歳未満の者が「いいね」を押すことや、告示前や投票日当日に押すことが公職選挙法違反となる恐れがある。
私自身は、「いいね」ボタンを押す行為は、

「『いいね!』は、単に当該『文書図画』を読んだということ、または当該文書図画に興味関心を持ったことを表示するに過ぎないから選挙運動に当たらないと解するか、積極的に当該候補者の政策等への賛意を示して他の有権者にも投票を勧誘する意思表示をしているのか、判断が分かれるところです。

という見解を示していた。前述のガイドラインにはこの点に関する記載がなく、選挙運動にはあたらないとまでは断定できなかったのである。
https://seijiyama.jp/article/news/nws20190720-2.html

今回の逐条解説改訂版では、次のように「いいね」についての解説が行われている。

SNSにおいて選挙運動と認められる投稿や書き込みの共有をすることは、一般的には選挙運動にあたるおそれがあり、選挙期日はできないこととなる。
他方、SNSにおいて「いいね」等の共感等の意思表示をすることは、一般的には、直ちには選挙運動には当たらない場合が多いと考えられるが、個別具体の状況により、選挙運動用文書図画の頒布と認められる場合には、選挙期日当日においては法第百二十九条に抵触する。
(1218頁)


まず、一般的には「いいね」は共感等の意思表示であるとされている。したがって、共感したという意思を表示しただけであれば候補者や政党への投票を依頼したことにはならないから選挙運動には該当せず、「一般的には、直ちには選挙運動には当たらない場合が多いと考えられる」とされている。
しかし、「個別具体の状況により、選挙運動用文書図画の頒布と認められる場合には、選挙期日当日においては公職選挙法129条違反(当日の選挙運動の禁止)に抵触するとされている。
ただ、投票日当日に「いいね」を押すことがどのような状況であれば選挙運動用文書図画の頒布と認められるのかについて、なかなか具体例を想定しにくい。どのような場面において、特定の候補者や政党等への投票を依頼する書き込みに「いいね」を押すことが、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」となるだろうか。もう少し考えなければならないようである。
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ディープフェイクについてコメントしました

2021年05月05日 | 選挙制度
時事通信の記事に、ディープフェイク問題についてコメントしました。

「ディープフェイク」強まる懸念 AIで偽映像、犯罪利用も―「法整備検討を」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021050400388

記事中では法整備が必要というコメントになっていますが、選挙運動期間中のディープフェイクについては、選挙運動に該当する場合は現行公職選挙法でも対応は不可能ではないと思われます。公職選挙法は選挙の公正の維持を目的として広範な選挙運動規制を規定しており、その中には表現の自由に対する制約がかなり強いものも含まれますが、最高裁判所は一貫してそれを合憲としているからです。
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「外交」66号に寄稿しました

2021年04月17日 | 選挙制度
外交専門誌「外交」66号の特集「FOCUS◎大統領選挙後のアメリカ社会」に寄稿しました。

郵便・電子投票で民主主義のデジタル化は加速するか
米大統領選でトランプ支持者が根強く主張した「郵便投票・電子投票の不正」は本当にあったのか。その仕組みや不正の可能性から検証し、コロナ禍の下での新しい民主主義への可能性を探る。

現在、PDFファイルで記事をダウンロードできます。
http://www.gaiko-web.jp/test/wp-content/uploads/2021/03/Vol66_p122-125_postal_and_electric_voting.pdf


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アメリカ連邦選挙支援委員会(EAC)任意的投票システムガイドライン2.0案

2020年03月15日 | 選挙制度
 アメリカ連邦選挙支援委員会(Election Assistance Committee)から、電子投票の仕様に関するガイドラインである任意的投票システムガイドライン(Voluntary Voting System Guideline = VVSG)のバージョン2.0案が公開され、昨年2月から5月までのパブリックコメントの期間をへて、今後、正式に採択されるとみられる。
 VVSG 2.0は、これまでのVVSGとは異なり、「VVSG 2.0原則及びガイドライン(VVSG 2.0 Principles and Guidelines)」、「射程と構造(Scope and Structure)」、「憲章(Charter)」、「VVSGの将来の到達目標ホワイトペーパー(Future VVSG Development Goals & White Paper)」という4種類に分割されているのが特色である。
 「VVSG 2.0原則及びガイドライン」は従来のVVSGの本体に当たる部分であるが、VVSGが分割されたために、従来のVVSGよりも大幅に分量が小さくなっている。
 「憲章」は、VVSGの目的や用語の定義、プロジェクトの参加者、タイムラインなどを定めており、VVSGのプロジェクトの基本的な事項を確認するものとなっている。
 「射程と構造」は、VVSG 2.0において何を規定するかの範囲を定めると共に、VVSG 2.0の具体的なユースケースや選挙マネジメントシステムにおける役割について規定している。
 「VVSGの将来の到達目標ホワイトペーパー」は、VVSGの到達目標について規定するものである。
 今回は、「VVSG 2.0原則及びガイドライン」の仮訳を掲載しておく。なお仮訳であるので、訳文の誤りや文言の不統一がありえることをお断りしておく。
 
任意投票システムガイドライン2.0

原則とガイドライン

原則1:高品質のデザイン
投票システムは、選挙過程を正確、完全かつ確実に実施されるよう設計される。
1.1 投票システムは、一般的に認められる選挙過程の仕様を用いて設計されている。
1.2 投票システムは、実世界における運用条件の下で正しく機能するように設計される。
1.3 投票システムの設計は、試験者が、特定された仕様を正確に実装してシステムとそうではないシステムを明確に区別できるような評価方法をサポートする。

原則2:高品質の実践
投票システムは、質の高いベストプラクティスを用いて実装される。
2.1 投票システムおよびそのソフトウェアは、信頼できる資料とソフトウェア開発のベストプラクティスを用いて実装される。
2.2 投票システムは、幅広く障害を持つ人とそうではない人を含めた有権者と選挙管理従事者を含めたユーザー中心の設計方法のベストプラクティスを用いて実装される。
2.3 投票システムの論理は明確で、有意であり、適切に構成される。
2.4 投票システム構造はモジュール式で、スケーラブルであり、堅牢なものとする。
2.5 投票システムは、システムプロセスおよびデータの完全性をサポートする。
2.6 投票システムは、エラーを確実に処理し、故障から可及的に回復する。
2.7 投票システムは、予想される物理的環境において確実に機能する。

原則3:透明性
投票システムおよび投票プロセスは、透明性を提供するよう設計される。
3.1 投票システムの設計、操作、アクセシビリティ機能、セキュリティ対策、およびその他の機能を説明する文書は、読んで理解することができりものとする。
3.2 投票にシステムに関連する物理的およびデジタルの両方の過程及び処理は、容易に監査できるものとする。
3.3 公衆は、選挙の全期間を通じて投票システムの運用を理解し、検証することができる。

原則4:相互運用性
投票システムは、外部システムへのインターフェイス、内部コンポーネントへのインターフェイス、データ、および周辺機器の相互運用性をサポートするように設計される。
4.1 インポート、エクスポート、または他の方法で報告される投票システムデータは、相互運用可能なフォーマットとする。
4.2 公的に利用可能な標準フォーマットが入手可能な場合には、その他のデータの種類に対して使用する。
4.3 幅広く使用されているハードウェア・インタフェースおよび通信プロトコルを使用する。
4.4 市販既製品は、VVSG要件を充足する場合には使用できる。

原則5:同一かつ一貫した有権者のアクセス
すべての有権者は、その能力にかかわりなく、差別なしに投票システムにアクセスし使用することができる。
5.1 有権者は選挙プロセス全体を通じてすべての投票方法において一貫した経験を有する。
5.2 投票者は、すべての投票方法において同一の情報と選択肢を受け取る。

原則6:有権者のプライバシー
有権者は、個人的にかつ独立して、投票に印を付け、検証し、投票することができる。
6.1 投票プロセスは、有権者の投票用紙との相互作用、投票の型、及び投票方向の選択のプライバシーを保護する。
6.2 有権者は、他者からの支援を受けることなく、投票用紙または関連する投票記録に印を付け、検証し、投票することができる。

原則7:意図された通りに印を付けられ、確認され、投票されること
投票と投票の選択は、知覚可能、操作可能、理解可能な方法で提示され、すべての投票者が印を付け、検証し、投票できるものとする。
7.1 投票システムにおける投票用紙のデフォルトの表示設定は、最も幅広く有権者に対応できるものとし、有権者はその必要性に応じて設定を変更できるものとする。
7.2 有権者と選挙管理従事者はすべてのコントロールを正確に利用することができるものとし、有権者はすべての投票用紙の変化を直接コントロールする。
7.3 有権者は、説明、システムからのメッセージ、エラーメッセージを含むすべての提示情報を理解することができる。

原則8:堅牢、安全、使用可能性、アクセス可能性
投票システムおよび投票プロセスは、強固で、安全で、利用可能で、アクセス可能なものを提供する。
8.1 投票システムのハードウェアおよび付属品は、ユーザーを有害な状態から保護する。
8.2 投票システムは、アクセシビリティに関して現在受け入れられている連邦基準を満たす。
8.3 投票システムは、障害のある者とない者を含む広範な有権者によって、有効性、効率性及び十分性を検証される。
8.4 投票システムは、選挙管理従事者によりユーザビリティを評価される。

原則9:監査可能性
投票システムは監査可能であり、証拠に基づいた選挙を可能とする。
9.1 投票システムのソフトウェアまたはハードウェアにエラーまたは障害が発生した場合、選挙結果に対して検知できない変化を起こしてはならない。
9.2 投票システムは、選挙結果が正しいかどうかをチェックし、可能な範囲で不正行為の根本原因を特定する機能を提供する、ただちに利用可能な記録を作成する。
9.3 投票システムの記録は、意図的な改ざんや偶発的なエラーが存在する場合でも回復力があるものとする。
9.4 投票システムは効率的な監査をサポートする。

原則10:投票の秘密
投票システムは、有権者の投票選択の秘密を保護します。
10.1 投票の秘密は、投票プロセス全体にわたって維持される。
10.2 投票システムには、投票者の身元を投票者の意図、選択、または選択に関連付けるために使用できる投票者に関する記録、通知、情報その他の選挙情報を含んだり生成したりしないものとする。

原則11:アクセス制御
投票システムは、機密機能へのアクセスを許可する前に、管理者、ユーザー、デバイス、およびサービスを認証する。
11.1 アクセス権限、アカウント、アクティビティ、および承認は、定期的に記録、監視、およびレビューされ、必要に応じて変更される。
11.2 投票システムは、特定の機能及びデータに対するユーザー、役割、及びプロセスのアクセスを、各エンティティが許可されたアクセスを保持するものに制限する。
11.3 投票システムは、強力で構成可能な認証メカニズムをサポートして、承認されたユーザーのIDを検証し、重要な操作のための多要素認証メカニズムを備える。
11. デフォルトのアクセス制御ポリシーは、特権を最小にすることと義務の分離という原則を実施する。
11.5 投票システム資産への論理的アクセスは、不要になった場合は取り消される。

12:物理的セキュリティ
投票システムは、投票システムのハードウェアを改ざんする試みを防止または検出する。
12.1 投票システムは、不正な物理アクセスを検出するメカニズムをサポートする。
12.2 投票システムは、投票操作に不可欠な物理ポートとアクセスポイントのみを公開する。

13:データ保護
投票システムは、機密データを不正なアクセス、変更、または削除から保護する。
13.1 投票システムは、構成データ、不正投票記録、送信データ、または監査記録への不正アクセスまたは操作を防止する。
13.2 電子集計レポートのソースと完全性は検証可能なものとする。
13.3 すべての暗号化アルゴリズムは公開され、十分に検討され、標準化されるもとする。
13.4 投票システムは、すべてのネットワークを介して送信される機密データの完全性、信頼性、および機密性を保護する。

14:システムの完全性
投票システムは、意図的であろうと偶発的であろうと、システムの不正な操作から解放され、意図した機能を損なわない方法で実行する。
14.1 投票システムは、複数のコントロール層を使用して、セキュリティ障害または脆弱性に対する冗長性を提供する。
14.2 投票システムは、不必要なコード、データパス、物理ポートを削減し、他の技術的制御を使用することにより、攻撃対象を制限する。
14.3 投票システムは、ソフトウェア、ファームウェア、およびその他の重要なコンポーネントの完全性を維持および検証する。
14.4 ソフトウェアの更新は、インストールする前に管理者によって承認される。

15:検知と監視
投票システムは、異常な動作または悪意のある動作を検知するメカニズムを提供する。
15.1 投票システム機器は、自動処理に適した形式で保存されるイベントログ作成メカニズムを通じて重要なアクティビティを記録する。
15.2 投票システムは、発生したすべてのエラーメッセージを生成、保存、および報告する。
15.3 投票システムは、マルウェアから保護するメカニズムを採用する。
15.4 ネットワーク機能を備えた投票システムは、現在のベストプラクティスに見合った、ネットワークベースの攻撃に対する適切で精査された現代的な防御を採用する。

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NHK視点・論点「インターネット投票の実現に向けて」

2019年02月26日 | 選挙制度
昨年の8月、総務省の投票環境の向上方策等に関する研究会が報告書を公表し、さまざまな諸課題を解決すれば在外投票にインターネット投票を導入することは可能という検討結果を公表しました。
インターネット投票の実現に向けて、どのような課題があるか、インターネット投票のメリットやデメリットなどについて2月27日(水)のNHK教育「視点・論点」で取り上げられる予定です。

http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2019-02-27&ch=31&eid=07129&f=758
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EUのフェイクニュース規制

2018年05月06日 | 選挙制度
欧州委員会によるフェイクニュース規制の内容が4月26日に公表された。
http://europa.eu/rapid/press-release_IP-18-3370_en.htm

ロシア政府が背景にあるとされるSNSを利用した世論誘導による選挙への干渉問題について、アメリカ連邦議会における議論は、当初問題視されていたロシア政府や関係者がスポンサーになっていると見られる広告出稿やアカウントの開設問題から、プライバシー保護問題に焦点が移行した感がある。ケンブリッジ・アナリティカ社への大量の個人データの流出問題がその背景にあることは言うまでもなく、選挙への干渉について特別検察官による捜査が継続しているという事情もあろう。
これに対してEUは、虚偽情報の流布は表現の自由という基本的人権の侵害であると捉えると同時に、SNSの個人データが世論誘導や選挙干渉に悪用されることを排除してセキュアでレジリエントな民主的手続を確立する必要があるとして、フェイクニュースの流布に対する規制にも熱心である。
具体的には、フェイクニュース対策は、デジタルシングル市場創設という政策領域の一分野として位置づけられており、今回の規制案もこの枠組みの中で提案されたものである。

この間の経緯を、簡単に整理してみる(以下は英語版を参照している)。

2017年5月16日
ジャン=クロード・ユンケル(Jean-Claude Juncker)委員長がデジタル経済・社会担当のマリヤ・ガブリエル(Mariya Gabriel)委員(ブルガリア選出)に対して書簡を発出。
市民を保護するため、第一副委員長(より良い規制、組織間関係、法の支配と基本的人権、表現の自由、情報の自由、メディアの多様性と自由、インターネットの公開性、及び文化的・言語的多様性担当)と密接に連携して、オンライン・プラットフォームによるフェイク情報の流布によって民主主義を脅かしている実態についてEUレベルで調査する必要があると指摘。
https://ec.europa.eu/commission/commissioners/sites/cwt/files/commissioner_mission_letters/mission-letter-mariya-gabriel.pdf

2017年11月13日~2018年2月23日
フェイクニュースとオンライン虚偽情報に関する意見聴取(Public consultation)を実施。
https://ec.europa.eu/info/consultations/public-consultation-fake-news-and-online-disinformation_en#about-this-consultation
意見聴取項目は、第1にフェイク情報とそのオンラインでの拡散の定義、第2にオンライン上でのフェイク情報の拡散に対してすでにプラットフォーム、ニュースメディア、市民組織等が実施している対策の調査、第3はフェイク情報のオンラインでの拡散を防止して情報の質を高める方策についての将来の行動の射程。
意見聴取結果は以下に公開されている。
https://ec.europa.eu/digital-single-market/en/news/synopsis-report-public-consultation-fake-news-and-online-disinformation
意見聴取を受けて、ユーロバロメーターによる世論調査も実施。調査結果は下記に公開されている。
http://ec.europa.eu/commfrontoffice/publicopinion/index.cfm/survey/getsurveydetail/instruments/flash/surveyky/2183

2017年11月13日・14日
意見聴取の一環として、マルチステークホルダーによる会議を開催。
https://ec.europa.eu/digital-single-market/en/news/recordings-multi-stakeholder-conference-fake-news

2018年1月15日
フェイクニュース及び虚偽情報に関する有識者会合(High-Level Group on Fake News and online disinformation)が設置され、第1回会合開催。
メンバーの中にはFacebook、Twitter、Google代表も含まれる。
https://ec.europa.eu/digital-single-market/en/news/experts-appointed-high-level-group-fake-news-and-online-disinformation

2018年2月7日
有識者会合の第2回会合開催。

2018年2月14日
2019年欧州議会選挙に向けた欧州委員会勧告が発出される。
https://ec.europa.eu/commission/sites/beta-political/files/recommendation-enhancing-european-nature-efficient-conduct-2019-elections_en.pdf


2018年3月12日
有識者会合の最終報告書が公表される。
https://ec.europa.eu/digital-single-market/en/news/final-report-high-level-expert-group-fake-news-and-online-disinformation
有識者会合は、公的にも指摘にも検閲は明確に排除されるべきであること、インターネットの分断や憎悪をもたらすような技術的方策は避けるべきであることを前提として、「多元的な対応(multi-dimensional approach)」が必要とする。
報告書は、次の5点を勧告。
1 オンラインニュースの透明性を高めること。オンラインでの流通を可能にするシステムに関するデータの適切かつプライバシーに準拠した共有を含む。
2 虚偽情報に対処するためメディアリテラシー及び情報リテラシーを促進し、ユーザーがデジタルメディア環境をナビゲートできるようにすること。
3 ユーザーとジャーナリストが虚偽情報に対抗し、急速に進化する情報技術との積極的な取組を促進するためのツールを開発すること。
4 欧州のニュースメディアのエコシステムの多様性と持続可能性を保護すること。
5 異なるアクターによる措置を評価し、必要な対応を常に調整するため、欧州における虚偽情報の影響に関する継続的な調査を実施すること。

2018年4月26日
このような経緯をへて、今回のプレスリリースでは、虚偽情報に対する「多元的な対応(multi-dimensional approach)」が提案された。
今回提案された多元的対応は、次の各段階からなる。

虚偽情報に関する行動規範
各ファクトチェッカーの独立ネットワークの構築
虚偽情報に対するセキュアなヨーロッパのオンラインプラットフォーム
メディアリテラシーの強化
加盟国に対する選挙のレジリエンス強化支援
質の高い多様な情報の支援
戦略的なコミュニケーション政策の調整


第1に求めているのが、プラットフォーマーに対して2018年7月までに共通の行動規範(a common Code of Practice)を策定して遵守することを求めるというものである。直接的な法規制はひとまず回避されているが、実際にはEU委員会とFacebook等のプラットフォーマーとの交渉が行われている模様である。
行動規範は、具体的には以下を目的とするとしている。

スポンサードコンテンツ、特に政治広告についての透明性を確保すること、また政治広告のターゲティングオプションを制限し、虚偽情報の提供者の利得を削減すること。
アルゴリズムの機能と第三者による検証を可能にすることについて、明確に説明すること。
他の視点を代表する異なるニュースソースをユーザーが発見してアクセスしやすいようにすること。
フェイクアカウントの特定と閉鎖対策、自動ボットの問題への取組を開始すること。
ファクトチェッカー、研究者、および公的機関がオンラインの虚偽情報を継続的に監視できるようにすること。


さらに、今後の対応として、EU委員会は至急マルチステークホルダーのフォーラムを開催するという。このフォーラムは、オンラインプラットフォーム、広告業界、主要広告主などの関係者間の効率的な協力の枠組みを提供し、虚偽情報への取組を調整することを目的としており、フォーラムの最初の成果は2018年7月までに公開されるとしている。したがって、前記の共通の行動規範は、おそらくこのフォーラムにおいて議論されて策定されることになると思われる。
また2018年12月までに、委員会は進捗状況を報告するとしており、これらの方策の有効性が検証されることになる予定である。
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国際会議「Hacked Election」

2017年12月05日 | 選挙制度
11月27日(月)・11月28日(火)の両日、ドイツのコンラート・アデナウアー財団(Konrad Adenauer Stiftung)主催による国際会議「Hacked Election」が東京で開催された。
その結果が財団のホームページに掲載されている。
http://www.kas.de/politikdialog-asien/en/publications/50936/

ドイツ、アメリカ、インド、モンゴルその他各国のサイバーセキュリティ専門家、政党関係者、研究者による非公開の発表と討議が行われた。私もスピーカーとして招聘されたので、日本における現状と規制の可能性について報告した。
必ずしも選挙法自体の専門家が集まっているわけではなかったので、まず日本における選挙運動規制の厳格さ(戸別訪問の禁止、ビラ配布制限、インターネット選挙運動が解禁されたのが2013年のことであること、選挙運動期間の短さと事前運動の禁止)に驚く参加者が多かった。それと同時に、政治活動としてであれば選挙運動期間以外でも一定の活動は可能であるという点の説明にも苦慮し、十二分に説明することができなかった(この点は、外国人からみた日本の選挙運動規制のわかりにくさの大きなポイントである)。また報告時間の関係で、インターネット選挙運動の解禁に伴って改正されたプロバイダ責任制限法の内容等も割愛せざるを得なかった。

最終日、参加者が2グループに分かれて討議し、政府や政党に対する勧告をまとめたが、正直なところ、時間不足という印象が否めなかった。その原因は、「Hacked Election」はあまりにも多層的なレイヤーに関係する問題であることであろう。最大の問題は、国民主権(その中には、対外的独立性という契機を含む)と民主主義という立憲主義の中でも最も重要な理念を脅かすような行為が外国政府も含めた勢力によってサイバー攻撃からフェイクニュースの流通まできわめて多様な手段によって行われているとみられるとき、それに実定法レベルでどのように対処するか、分野横断的に統合的な対抗手段をとることがきわめて難しいという点にある。

なお先日、第16回情報科学技術フォーラム(FIT 2017)において「デジタルゲリマンダーの脅威 ~ネットとAIから民主主義は守れるか~」という分科会が開催された。この分科会では各パネリストが報告し、またその後の質疑応答でディスカッションした内容は、十二分に第一級の水準であることが確認できたと思う。
https://www.ipsj.or.jp/event/fit/fit2017/FIT2017_program_web/data/html/event/eventA7.html
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期日前投票の導入と投票率上昇効果

2017年11月29日 | 選挙制度
久々に選挙制度の話題。

アメリカの選挙法の専門雑誌であるElection Law Journalの14巻2号に、"Early Voting: Do More Sites Lead to Higher Turnout?"という論文が掲載されている。
http://online.liebertpub.com/doi/full/10.1089/elj.2014.0259

アメリカでは、一般に日本の期日前投票・不在者投票を合わせたような制度として早期投票(early voting)という制度があり、多くの州で導入されている。また年々利用者も増えており、1/3の有権者は何らかの制度を利用して投票日よりも前に投票しているという。
ところでこのような早期投票が投票率を向上させる効果があるかという点については、さまざまな研究が行われている。
本論文では、郡(カウンティ)レベルで見た場合には早期投票を実施するだけではなくて早期投票所の数を増やすことで投票率を向上させることができるとする。
このような研究は政治学の領域では特に珍しいものではないと思うが、それが法律の専門雑誌に載るのがアメリカらしいというところか。

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アメリカ連邦選挙支援委員会の用語集(改訂版)

2017年01月08日 | 選挙制度
2009年にアメリカ連邦選挙支援委員会の用語集のページについてポストしました。
http://blog.goo.ne.jp/yuasah1970/e/e32557ccd32c80d737e5fe6fce9d5dab

その用語集のページが、新しくなっています。
https://www.eac.gov/glossary/

新しい用語集のページは、用語検索(データベース)形式になりました。
選挙に関する用語を英語で入力すると、スペイン語、中国語、日本語、韓国語、タガログ語、ベトナム語に翻訳されるというものです。
試みにabsentee votingと入力して日本語にチェックして検索してみると、以下の4つのキーワードがヒットして、それぞれ説明があります。

absentee voting by mail
不在者郵送投票
clerk of absentee voting
不在投票者担当事務員
no excuse absentee voting
無弁解不在投票
Uniformed and Overseas Citizens Absentee Voting Act (UOCAVA)
軍人および海外在住者の不在者投票法(UOCAVA)

6カ国語の比較ができるので、不在者郵送投票は中国語では「郵寄式缺席投票」というのか、というような知識は得られますが、逆に、ある程度選挙に関する用語を知っていないと、そもそも用語を入力することができないということになります。
以前の用語集のページでは、一覧表をPDFファイルでダウンロードすることができたので、そのほうが便利だったような気もします。

なお、旧ページにあった一覧表は、幸い、インターネット・アーカイブに保存されているようなので、早めにダウンロードしておいた方が良いかもしれません。

http://web.archive.org/web/20080101000000*/http://www.eac.gov/voter/language-accessibility-program-1/translation/pdfs-of-glossaries/EAC%20Japanese%20Glossary.pdf/attachment_download/file
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韓国中央選挙管理委員会事務総長・金容熙氏表敬訪問

2015年11月22日 | 選挙制度
11月16日(月)に、韓国の中央選挙管理委員会を訪問しました。





前回に訪問したのが2006年の8月23日でしたので、9年ぶりの訪問ということになります。

前回の訪問は、当時韓国で導入直前だった電子投票についての詳細を中央選挙管理委員会の担当者にインタビューするためのもので、インタビューに応じていただいたのは、当時の中央選挙管理委員会電子選挙推進団長の金容熙氏でした。結局、韓国でも国会議員の反対のため、国家議員選挙に電子投票を導入することは見送りとなったのですが、このときのインタビューの要旨は、ホームページで公開しています。
http://home.att.ne.jp/omega/yuasa/documents/e_votingkorea.pdf

さて、その金容熙氏は、中央選挙管理委員会事務総長に就任されました。韓国では中央選挙管理委員会は憲法上の機関であり、事務総長は閣僚級のポストということになっているそうです。
今回は、金容熙氏の表敬訪問が目的です。高選圭・中央選挙管理委員会選挙研修院教授に案内していただき、事務総長室に金氏を訪問すると、「以前に来られたときと、全然変わりませんね」と笑顔で迎えてくれました。



ちなみに、下の写真が前回の訪問時。



韓国でも、公式な投票へのインターネット投票は依然として見通しが立たないようです。
このため政府が中心となって、Association f World Election Bodiesを組織し、発展途上国の選挙管理機関への支援と選挙の電子化を行うことに力を入れているとのことです。金・事務総長は、AWEBの事務総長も兼務しています。
2015年10月にキルギスで総選挙が行われた際には、日本政府は選挙人名簿作成や選挙人の本人認証を支援しました。それについては、下記のホームページに紹介があります。
http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/presscenter/pressreleases/2015/05/20/Kyrgyzstan.html

韓国政府は、キルギスの総選挙に際して、投票システムの電子化を支援しました。
韓国では国政選挙に電子投票導入を断念した代わりに、政党内部における各種の選挙(政党の代表選挙など)を支援しており、中央選挙管理委員会が電子投票システムを貸し出しています。
今回のキルギスの電子投票では、投票用紙をスキャンして投票方向を電子データ化し、そのデータを用いて集計・開票する方式が取られたようです。
電子投票を実現したことで、これまでは開票の不正や二重投票等が絶えなかったが、開票過程が透明化し、かつリアルタイムで速報を出せるようになったとのことでした。
日本政府は発展途上国の選挙管理機関の人員をJICAが招いて研修は行っているものの(私も講師を務めたことがあります)、選挙の支援にはあまり積極的ではないようです。その間に、韓国は支援を積極的に行うようになっていますが、中央選挙管理委員会の権限の大きさが日本とは全く異なることが、このような海外への積極的なアプローチの要因であるように思われます。

表敬訪問後、昼食に招待されました。
往復は中央選挙管理委員会が出してくれた公用車で、現代「グレンジャー」のハイブリッド車でした。



両班の屋敷だったという韓国料理の店で、烏骨鶏の丸焼きや松茸と朝鮮人参、発酵させたエイなどの現代的に洗練された韓国料理をいただきました。





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公職選挙法の改正

2015年06月17日 | 選挙制度
 公職選挙法等の一部を改正する法律案が可決され、選挙権の年齢が18歳に引き下げられることになった。
 今回の改正では、国会議員の選挙権年齢の18歳引き下げだけではなく、地方自治体の長・地方議会の議員の選挙や、公職選挙法上の選挙ではない選挙(海区漁業調整委員会委員、農業委員会委員)の選挙権年齢も引き下げられた。
 また、選挙運動等にも関連するところがあるので、簡単に確認しておくことにする。

第一条 
公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の一部を次のように改正する。
第九条第一項及び第二項、第二十一条第一項、第三十条の四並びに第三十条の五第一項中「満二十年」を「満十八年」に改める。
第百三十七条の二の見出し中「未成年者」を「年齢満十八年未満の者」に改め、同条第一項中「満二十年」を「満十八年」に改め、同条第二項中「満二十年」を「満十八年」に改め、同項ただし書中「但し」を「ただし」に改める。

 この改正によって、引き下げられることになったのは、次の通り。

第9条第1項 日本国民で年齢満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。 」
同 第2項 日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有する者は、その属する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。
第21条第1項 選挙人名簿の登録は、当該市町村の区域内に住所を有する年齢満二十年以上の日本国民(第十一条第一項若しくは第二百五十二条又は政治資金規正法 (昭和二十三年法律第百九十四号)第二十八条 の規定により選挙権を有しない者を除く。)で、その者に係る登録市町村等(当該市町村及び消滅市町村(その区域の全部又は一部が廃置分合により当該市町村 の区域の全部又は一部となつた市町村であつて、当該廃置分合により消滅した市町村をいう。次項において同じ。)をいう。以下この項において同じ。)の住民 票が作成された日(他の市町村から登録市町村等の区域内に住所を移した者で住民基本台帳法 (昭和四十二年法律第八十一号)第二十二条 の規定により届出をしたものについては、当該届出をした日)から引き続き三箇月以上登録市町村等の住民基本台帳に記録されている者について行う。
第30条の4 在外選挙人名簿の登録は、在外選挙人名簿に登録されていない年齢満二十年以上の日本国民(第十一条第一項若しくは第二百五十二条又は政治資金規正法第二十八条 の規定により選挙権を有しない者を除く。次条第一項において同じ。)で、在外選挙人名簿の登録の申請に関しその者の住所を管轄する領事官(領事官の職務を 行う大使館若しくは公使館の長又はその事務を代理する者を含む。以下同じ。)の管轄区域(在外選挙人名簿の登録の申請に関する領事官の管轄区域として総務 省令・外務省令で定める区域をいう。同条第一項 及び第三項 において同じ。)内に引き続き三箇月以上住所を有するものについて行う。
第30条の5 第三十条の五  在外選挙人名簿に登録されていない年齢満二十年以上の日本国民で、在外選挙人名簿の登録の申請に関しその者の住所を管轄する領事官の管轄区域内に住所を 有するものは、政令で定めるところにより、文書で、最終住所の所在地の市町村の選挙管理委員会(その者が、いずれの市町村の住民基本台帳にも記録されたこ とがない者である場合には、申請の時におけるその者の本籍地の市町村の選挙管理委員会)に在外選挙人名簿の登録の申請をすることができる。


 以上の通り、衆議院議員選挙と参議院議員選挙については、在外選挙の分も含めて、選挙権年齢が18歳に引き下げられた。
 なお、最高裁判所裁判官の国民審査についても、最高裁判所裁判官国民審査法第4条が「衆議院議員の選挙権を有する者は、審査権を有する。 」と規定しているから、今回の公職選挙法の改正によって、連動して引き下げられることになる。

 次に、第137条の選挙運動の年齢に関する規定も、今回の改正法によって改められることになる。第137条は次の通り。

第137条の2 年齢満二十年未満の者は、選挙運動をすることができない。
2  何人も、年齢満二十年未満の者を使用して選挙運動をすることができない。但し、選挙運動のための労務に使用する場合は、この限りでない。


 今回の改正の重要なポイントは、選挙権だけではなく、選挙運動を行ってよい年齢も引き下げられたことである。
 従来、選挙運動は20歳以上の者だけが行ってよいこととされており、違反した場合には、未成年者にもかかわらず本人に刑事罰が課せられることになっていた。このため、同じ大学生でも、選挙運動を行ってよい学生と行ってはいけない学生が混在しており、選挙事務所に大学生がアルバイトに行き、未成年の大学生だけが公職選挙法違反で検挙されるという場合もあった。
 またインターネット選挙運動についても、未成年者は行うことができないとされていた。
 今回の改正によって、少なくとも大学生については、飛び級で18歳にならないうちに大学に入学したというようなケースを除いて、1年生から選挙運動を行うことができるようになったわけである。

 (地方自治法の一部改正)

第二条 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
第十八条中「満二十年」を「満十八年」に改める。


 この改正によって、引き下げられることになったのは、次の通り。

第18条  日本国民たる年齢満二十年以上の者で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有するものは、別に法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する。


 これによって、地方自治体の長・地方議会の議員の選挙の選挙権も、18歳に引き下げられた。
 
 (漁業法の一部改正)

第三条 漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)の一部を次のように改正する。
第八十七条第一項中「左の各号の一」を「次の各号のいずれか」に改め、同項第一号中「二十年」を「年齢満十八年」に改める。


 この改正によって、引き下げられることになったのは、次の通り。

第87条第1項 左の各号の一に該当する者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
一  二十年未満の者
二  公職選挙法 (昭和二十五年法律第百号)第十一条第一項 (選挙権及び被選挙権を有しない者)に規定する者


 これによって、海区漁業調整委員会委員の選挙の選挙権が18歳に引き下げられた。

 (農業委員会等に関する法律の一部改正)
第四条 農業委員会等に関する法律(昭和二十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
第八条第一項中「二十年」を「満十八年」に改める。


 この改正によって、引き下げられることになったのは、次の通り。

第8条第1項 農業委員会の区域内に住所を有する次に掲げる者で年齢二十年以上のものは、当該農業委員会の選挙による委員の選挙権及び被選挙権を有する。


 これによって、農業委員会の選挙の選挙権が18歳に引き下げられた。
 従来、公職選挙法によらない選挙については、ほとんど一般の関心が向けられることがなかったと思われるが、農業従事者などが高齢化する中で、海区漁業調整委員会委員、農業委員会委員の選挙の選挙権も同時に引き下げられることになったわけである。

 なお、各地で制定されている自治基本条例や住民投票条例の中には、投票権を公職選挙法の選挙権と同じように20歳としているものがある。住民投票については選挙権年齢を18歳や16歳に設定している例もあるが、20歳としている自治体は、公職選挙法の選挙権年齢に歩調を揃えたものと解される。このため、今後、年齢要件を改正するべきかどうかが論点となってくるであろう。

 また、大学入学に伴って転居したのに、住民票を移していない学生をどうするかという問題が浮上することも予想される。
 京都のように大学が多いところでは、住民基本台帳上の若者の人口よりも、国勢調査上の若者の人口のほうが多いという。住民票を移していない学生が多いためであると推測される。この問題の背景には、住民票を移してしまうと郷里で幼なじみと一緒に成人式を迎えることができなくなるという誤解があるためともいわれているが、生活の実態が郷里にはないのに、選挙の時にだけぞろぞろと大学生が郷里に戻って投票を済ませるというのも奇妙な話である。生活の実態がどこにあるのかという問題は、被選挙権との関係で話題になったり訴訟沙汰になったりすることが多いが、今後は選挙権をめぐって再燃する可能性がある。
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