Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

情報ネットワーク法学会個人情報保護法研究会の開催報告

2012年04月28日 | 情報法
二回にわたって開催した「日本のプライバシー・個人情報保護とマネージメントシステムの国際標準化シンポジウム」の開催結果報告のページが公開されました。

第1回、第2回の会場で参加者の皆様にご協力いただいたアンケート結果(アンケートを入力したExcelデータを含む)も公開されています。

http://in-law.jp/bn/2012/index-20120407b.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岡田行雄『少年司法における科学主義』(日本評論社、2012年)感想

2012年04月26日 | Weblog
 九州国際大学におけるかつての同僚であり、現在は熊本大学法学部に勤務されている岡田行雄教授が、『少年司法における科学主義』を上梓された。
 
 筆者の岡田教授は、聖カタリナ女子大学(現・聖カタリナ大学)在任中から、家裁調査官をはじめとする少年司法の関係者と非常に密接なネットワークを構築し、そこから得られた知見は本書の随所に活かされている。
 その一つは、本書第1章「科学主義の理念とその危機」であり、調査官をめぐる状況変化と社会調査(ここでいう社会調査とは、一般的な社会調査とは異なる)の変化については、調査官に対するアンケート調査の結果に基づいた「現場」からの声を土台とする考察が加えられている。アンケート調査にあたっては全司法労働組合の協力が得られたそうであるが、岡田教授の常日頃からの関係者との緊密な関係があってはじめてアンケートへの協力が得られたと言っても過言ではないと思われる。

 その一方で、せっかくのアンケート結果の分析については、やや物足りない感もうける。
 この種のアンケート調査は回答数も限られ、有効回答率を高めることは至難の業である。統計学的な有意性を追求することはそもそも不可能に近いと言ってもよいが、各設問に対する「無回答」がかなりの程度存在するのが気になるところである。数次にわたる法改正の結果、社会調査その他に対して変化が生じたかという問いに対して、ほとんどの設問で「生じた」「生じない」に対する回答数よりも無回答数のほうが上回っている。回答選択肢が「あった」「なかった」という二者選択であったようなので、「わからない」「どちらともいえない」と回答したかった調査官が、無回答を選択したものと思われる。
 この点に関して、「わからない」「どちらともいえない」と回答したかったのは、どのような調査官なのかを、調査官の属性(採用時期、担当歴等)とクロスで分析すれば、新たな知見が得られたのではないだろうか。これは、各設問の回答状況と、各設問の回答間のクロスについても同様である。
 
 本書の随所で、『再非行少年を見捨てるな ~ 試験観察からの再生を』の共著者らしく、再非行少年へのステレオタイプを排し試験観察の意義を評価すると共に、事案処理の迅速化、個々の調査官の専門家としての判断の余地縮小、他機関との連携という名の下の画一的処理を求めようとする最高裁の姿勢に対する厳しい批判がみられる。これらの批判は、岡田教授が上述のネットワークを背景とした現場の実情を踏まえた議論を展開しているだけに、説得力を持つものとなっている。

 内容は、まさに少年司法における科学主義という「これまで正面から取り上げられ、深く検討されてきたわけではな」かったテーマを学術的に扱うものであり、門外漢の私にはとうてい批評の任は務めうるべくもないので、一読した感想を若干述べさせていただいた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハマの台所事情-横浜の家計簿-

2012年04月25日 | 自治体
横浜市財政局から、「平成24年度 ハマの台所事情-横浜の家計簿-」が公開された。
http://www.city.yokohama.lg.jp/zaisei/org/zaisei/daidokoro/24daidokoro/
本編とマンガ編があるが、実際には1冊になっていて、マンガ編は本編の裏側から読み始めるようになっている。
以前、自治基本条例の専門家である木佐茂男・九州大学教授から、自治基本条例の先駆者であるニセコでは、市民向けにわかりやすい財政パンフレットを作って配布しているというお話を伺った記憶があるが、横浜市でも同様の取り組みを始め、平成22年度から今の名前になったようだ。
マンガ編は、勤務先の設置法人(岩崎学園)のグループ校である横浜デジタルアーツ専門学校と横浜市との共同制作になっている。

内容について、いくつか感想を述べてみたい。

16の特別会計のうち、国民健康保険事業費と介護保険事業費ぐらいは、一般会計からの繰り出し金(公営企業会計への繰り出しも併せて、合計1914億円)にどの程度依存しているのかを書いてほしかった気がする。また一般会計から、公営企業会計である地下鉄、バス、水道に繰り出ししているのが242億円となっていますが、これらの公営企業会計のうち、どれが単年度および累積で黒字でどれが赤字なのかはわからない。公営企業会計は、それぞれの予算額を書いてあるだけだからである。

また平成22年度から義務的経費の急増と税収の減少により、前者が後者を上回るようになって財政事情が厳しくなっていることはわかるが、なぜ突然、義務的経費が急増したのは、このパンフレットからは不明である。

また、10ページにひっそりと財政調整基金から10億円を取り崩して道路補修など中小企業対策の事業に使ったことが書かれている。いわゆる緊急景気対策であろう。
しかし、財政調整基金の残高が現在、いくらあるのかは書かれていない。
他の情報では、開港150周年記念事業に充てるために、平成19年度には250億円あった財政調整基金が平成21年度予算では119億円にまで減ったということだが、今いくら残高があるのかは、市民にとっても気になるところである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

情報ネットワーク法学会 学会誌編集業務委託先公募

2012年04月11日 | 情報法
情報ネットワーク法学会では、学会誌発行に係る編集業務を外部委託します。
詳細は、下記のページをご覧下さい。

http://in-law.jp/bn/2012/index-20120411.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「日本のプライバシー・個人情報保護とマネージメントシステムの国際標準化シンポジウム」

2012年04月09日 | 情報法
4月7日に、情報ネットワーク法学会個人情報保護研究会主催「日本のプライバシー・個人情報保護とマネージメントシステムの国際標準化シンポジウム」の第2回が開催され、総合司会を務めました。
今回のテーマは「日本は国際標準化にどう対応すべきか」で、プライバシー保護についての国際標準を策定しようという動きがある中で、それにどう対応するべきかが討論されました。



この問題は論点が非常に多いのですが、議論を聞きながら法律学の観点から感じた点をいくつか挙げると、まず肝心のプライバシーの概念の内容を明確にしないままでその保護の国際標準化が本当にできるのだろうかということ。プライバシーの概念は、国によってもかなり違いがあり、アメリカのように女性が人工妊娠中絶をすることを選択する権利まで含めている国もあれば、イギリスのように比較的に保護が薄い国もあります。これらの違いをソフト・ローで「標準」化できるものかどうか。
さらに、上記の点を踏まえると、ソフト・ローによる標準化は、最低基準としてのミニマムなものを定めるべきなのか、それともハード・ローにおける内容が統一されていないからこそソフト・ローではあえて高次の水準を定め、それを遵守すればどの国のハード・ローにも抵触しない、というような内容とするべきなのかも議論されましたが、パネリストの皆さん方の意見もこの点については異なっているようでした。

それにしても、学部生のころ受講した清水英生先生の「憲法I」ではプライバシーのことをかなり触れておられた記憶がありますが、その頃のプライバシー問題というのはもっぱら対国家、対マスメディアの問題であり、情報通信事業者、データ事業者、情報処理事業者がここまで大きな影響力を持ちうるようになるとは到底想像できませんでした。
私の想像力の乏しさといえばそれまでですが、プライバシーは精神的権利の問題から国家主権の問題(膨大なデータを収集している巨大な企業には国家権力ですらなかなか統制が及びません)に発展しつつあると感じます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

憲法学へのいざない第2版

2012年04月04日 | 情報法
大隈義和・大江正昭編『憲法学へのいざない(第2版)』が、アマゾンでも発売開始になりました。

http://www.amazon.co.jp/%E6%86%B2%E6%B3%95%E5%AD%A6%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%81%84%E3%81%96%E3%81%AA%E3%81%84-%E5%A4%A7%E9%9A%88-%E7%BE%A9%E5%92%8C/dp/4417015627/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1333520970&sr=8-2

私の担当した章は、11章「社会権」及び14章「国会」です。14章では、電子投票や衆参のねじれ国会について少し触れています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホームページを更新しました

2012年04月04日 | 情報法
経歴のページ、研究業績のページを更新しました。

経歴
http://home.att.ne.jp/omega/yuasa/cv_j.html

研究業績
http://home.att.ne.jp/omega/yuasa/study.html
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする