Salute Chet Baker / Phil Urso & Carl Saunders
先日紹介したビルホルマンのビッグバンドのリードトランペットに髭を生やした学者風のあまり派手さを感じさせない人物が座っている。
何となく見た目は綺麗な洋服でもピンとこないことがある。おいしそうな料理を食べても何か物足りないということが。洋服を引き立たせるためにはちょっとしたアクセサリーが必要、料理の美味しさ引き出すのも隠し味が決め手かもしれない。でも最後は、それを着る人や料理人の人柄が全体の美しさを醸し出すのかもしれない。
レコードやCDでは演奏するその人の人柄までは分からない。ところが、ライブではプレー振り、他のメンバーとのコラボレーション、聴衆との対話を目の辺りにすると、レコードでは聞こえなかったその人の音が聞こえてくる。そしてその人の存在が、全体の音が輝きを増していることも分かってくる。
昨年、このカールサンダースというトランペッターが来日した。
広く告知もされておらず、たまたま偶然に辰巳哲也ビッグバンドに客演しているライブを聴いた。あまり期待もせずに行ったのだが、彼のプレーを目の辺りにして感激した。名前も知っていたし、彼の参加したCDも持ってはいたのだが、ここまで素晴らしいとは。特にオーバーアクションをとることも無く、次から次へと溢れ出す歌心のこもったフレーズにどんどん引き込まれていく。
彼がビッグバンドのセクションに入った時は、リードトランペットに徹して皆をグイグイひっぱっていくことも。このオールマイティー振りは生で彼の演奏を聴いて見なければ分からない。
こちらのプレーも凄い
このアルバムはチェットベーカーに捧げたアルバム。晩年のベイカーは歌の方が有名になったが、初期の力強い歌心のあるトランペットプレーを再現している。若い頃のトランペッターベイカーの影武者としてはカールは適役だろう。さらに、このアルバムには実際にベイカーともコンビを組んでいたフィルアーソーが加わる。いわゆるアンダーレイテッドなプレーヤーの元気なプレーが聴ける。
もうひとつは、西海岸でいい作品を出し続けているJAZZEDMEDIAレーベルの記念すべきファーストアルバムである。今では巨大レーベルグループに育ってしまったConcordレーベルだが、あまり評価を受けないベテランジャズマンの生の姿を世界に発信していった初期のConcordレーベルの現代版といってもいいかもしれない。コンコルドの立役者カールジェファーソンの役割を、JAZZEDMEDIAではGraham Carterが務めることになる。
アーソはウェストコースト派の登竜門、ウディーハーマンの出身。セカンドハードにその名を見ることができる。有名なゲッツ、シムス、コーンの後釜としてテナーを吹いている。ベイカーとのコンビを解消してそれぞれの道を歩むことになったが、デンバーに居を移して一線から退く。地元ではディキシーのバンドでソプラノサックスを吹くこともあったとか。
そして、2002年、ベテランジャズメンを集めた“Cool & Crazy” jazz FestivalなるものがLA近郊で開かれ、そこにアーソも出演することに。彼にとっては初めての大きなフェスティバルの出演だったそうだ。そこで聴衆の一人であったGraham Carterが、力強いアーソのテナーの健在ぶりを聴いて、このアルバム制作につながっていく。
録音はアーソが77歳の誕生日を祝ってすぐ、地元のデンバーで行われた。カールサンダースとは始めての顔合わせだったらしいが、チェットベーカーの思い出を噛み締めながら2人のナイスプレーが続く。
ウェストコーストのスタジオワークをやっているプレーヤーに腕達者は多い。これは50年前も今も変わらない。
カールサンダースの次回の来日を期待しよう。できれば仲間を何人か引き連れて。
1. Jumpin' Off a Clef Haig 5:39
2. For Minors Only Heath 4:51
3. Halema Urso 5:09
4. Mister B Galper 6:38
5. This Is the Thing Galper 5:50
6. Funk in the Deep Freeze Mobley 7:08
7. My Funny Valentine Hart, Rodgers 5:44
8. Baby Breeze Carpenter 4:17
9. Way to Go Urso 3:56
10. Worryin' the Life Out of Me Mole, Russell, Signorelli 3:33
11. Line for Lyons Mulligan 7:51
Carl Saunders Trumpet
Phil Urso Sax (Tenor)
Keith Waters Piano
Colin Gieg Bass
Paul Romaine Drums
Graham Carter Audio Production, Producer
Scott Griess Audio Engineer, Engineer
Jeff Jenkins Audio Engineer, Engineer
Recorded October 24&25、2002
JAZZEDMEDIA JM-1001
先日紹介したビルホルマンのビッグバンドのリードトランペットに髭を生やした学者風のあまり派手さを感じさせない人物が座っている。
何となく見た目は綺麗な洋服でもピンとこないことがある。おいしそうな料理を食べても何か物足りないということが。洋服を引き立たせるためにはちょっとしたアクセサリーが必要、料理の美味しさ引き出すのも隠し味が決め手かもしれない。でも最後は、それを着る人や料理人の人柄が全体の美しさを醸し出すのかもしれない。
レコードやCDでは演奏するその人の人柄までは分からない。ところが、ライブではプレー振り、他のメンバーとのコラボレーション、聴衆との対話を目の辺りにすると、レコードでは聞こえなかったその人の音が聞こえてくる。そしてその人の存在が、全体の音が輝きを増していることも分かってくる。
昨年、このカールサンダースというトランペッターが来日した。
広く告知もされておらず、たまたま偶然に辰巳哲也ビッグバンドに客演しているライブを聴いた。あまり期待もせずに行ったのだが、彼のプレーを目の辺りにして感激した。名前も知っていたし、彼の参加したCDも持ってはいたのだが、ここまで素晴らしいとは。特にオーバーアクションをとることも無く、次から次へと溢れ出す歌心のこもったフレーズにどんどん引き込まれていく。
彼がビッグバンドのセクションに入った時は、リードトランペットに徹して皆をグイグイひっぱっていくことも。このオールマイティー振りは生で彼の演奏を聴いて見なければ分からない。
こちらのプレーも凄い
このアルバムはチェットベーカーに捧げたアルバム。晩年のベイカーは歌の方が有名になったが、初期の力強い歌心のあるトランペットプレーを再現している。若い頃のトランペッターベイカーの影武者としてはカールは適役だろう。さらに、このアルバムには実際にベイカーともコンビを組んでいたフィルアーソーが加わる。いわゆるアンダーレイテッドなプレーヤーの元気なプレーが聴ける。
もうひとつは、西海岸でいい作品を出し続けているJAZZEDMEDIAレーベルの記念すべきファーストアルバムである。今では巨大レーベルグループに育ってしまったConcordレーベルだが、あまり評価を受けないベテランジャズマンの生の姿を世界に発信していった初期のConcordレーベルの現代版といってもいいかもしれない。コンコルドの立役者カールジェファーソンの役割を、JAZZEDMEDIAではGraham Carterが務めることになる。
アーソはウェストコースト派の登竜門、ウディーハーマンの出身。セカンドハードにその名を見ることができる。有名なゲッツ、シムス、コーンの後釜としてテナーを吹いている。ベイカーとのコンビを解消してそれぞれの道を歩むことになったが、デンバーに居を移して一線から退く。地元ではディキシーのバンドでソプラノサックスを吹くこともあったとか。
そして、2002年、ベテランジャズメンを集めた“Cool & Crazy” jazz FestivalなるものがLA近郊で開かれ、そこにアーソも出演することに。彼にとっては初めての大きなフェスティバルの出演だったそうだ。そこで聴衆の一人であったGraham Carterが、力強いアーソのテナーの健在ぶりを聴いて、このアルバム制作につながっていく。
録音はアーソが77歳の誕生日を祝ってすぐ、地元のデンバーで行われた。カールサンダースとは始めての顔合わせだったらしいが、チェットベーカーの思い出を噛み締めながら2人のナイスプレーが続く。
ウェストコーストのスタジオワークをやっているプレーヤーに腕達者は多い。これは50年前も今も変わらない。
カールサンダースの次回の来日を期待しよう。できれば仲間を何人か引き連れて。
1. Jumpin' Off a Clef Haig 5:39
2. For Minors Only Heath 4:51
3. Halema Urso 5:09
4. Mister B Galper 6:38
5. This Is the Thing Galper 5:50
6. Funk in the Deep Freeze Mobley 7:08
7. My Funny Valentine Hart, Rodgers 5:44
8. Baby Breeze Carpenter 4:17
9. Way to Go Urso 3:56
10. Worryin' the Life Out of Me Mole, Russell, Signorelli 3:33
11. Line for Lyons Mulligan 7:51
Carl Saunders Trumpet
Phil Urso Sax (Tenor)
Keith Waters Piano
Colin Gieg Bass
Paul Romaine Drums
Graham Carter Audio Production, Producer
Scott Griess Audio Engineer, Engineer
Jeff Jenkins Audio Engineer, Engineer
Recorded October 24&25、2002
JAZZEDMEDIA JM-1001
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