A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

いつも相手のいる仕事をしていると、たまには一人にしておいて欲しくなることもある

2017-03-02 | CONCORD
Willow Creek / Marian McPartland

 最近、著作権に関する話題が多い。パーマ大佐が「森のくまさん」の歌詞をかってに変えてCDを出したと訴えられた。著作人格権の同一性保持権の侵害ということらしい。とりあえずは解決したようだが。ジャズの世界では、原曲のメロディーを変えて演奏するのは当たり前、ほとんどの場合アレンジも施されている。先日紹介したミッシェルペトルチアーニのメドレー物を自作曲としたものなど完全にアウトだろう。歌詞も、その場の雰囲気に合わせて自由に変えることもよくある。アドリブでスキャットにしてしまうことも。という点で、歌詞についても同一性が保持されていないことは多い。

 次に、JASRACの音楽教育からも楽曲の使用料を徴収するという話。これには、音楽教室などから反論が相次ぎ、権利を持つ作曲家からも自分の曲は自由に使っていいという声も上がっている、果たして、JASRAC側の言い分がそのまま運用されるかどうか?

 これまでも音楽の権利に関しては、放送やレコードなど新しいテクノロジーやサービスが登場するたびに、その中での権利の取扱いについて新たなルール作り、そして運用上の問題が起こって来た。よくジャズの歴史の中で、ちょうどビバップが生まれた頃、ミュージシャン側のレコーディングストが起こり、当時(1942年〜44年)のレコーディングが少ないとか、そのお蔭でマイナーレーベルが誕生したとかの話が残されている。

 著作権はそもそも元の権利者を守るのが主旨、ところが実際にはその権利を代行する団体や事業者のビジネスが一番に考えられているような気がする。アメリカのレコーディングのストも、ミュージシャンの保護というよりも、音楽家教会(AMF)が自分で突っ走ったといわれている。

 昔、現役で仕事をしていた時、私的録音録画補償金制度に関わる仕事をしたことがある。各種のレコーダー機器が登場したことにより、私的利用とはいえ放送やレコード・CDが自由に録音をされることにより、元々の権利が侵害される(利益機会が減る)ので、その分の補償をハード機器に付加するという制度だ。結局、ハード機器に転嫁され、我々が高い買い物をしている構造だ。

 ところが、デジタル放送への移行期にコピーワンスというルールを作ったのに、同じように補償金を払うのは如何なものかとメーカー側が反論した。この制度に元々無理があった。メーカーから集めた補償金の分配先は各業界の権利団体まで、その先の権利者に分配する仕組みがなかった。当たり前で、何を録音、録画したかの記録がなければ、個々の権利者を特定できずに配分できないのは自明の理だ。結局は、権利者を守るといっても、潤ったのは利権団体だけだった。

 よく問題になるのは、放送コンテンツの権利。日本の場合これまで、オンエアを前提にして放送局に権利が属していた。後で再利用したくても、最初に取り決めが無かったので自由に使えない。ジャズの世界も、昔はNHK、民放を問わずテレビやFMで毎週のようにコンサートの中継やスタジオ収録の演奏がオンエアされよくエアチェックをした。これら演奏には今となってはお宝もあるが、この放送コンテンツがその後CDになったという話はめったに聴かない。
 一方で、欧米の放送コンテンツはよくアルバムとなって登場する。エアチェックや海賊版を別にすれば、最初から権利処理がされていたということになる。以前紹介したジムホールとロンカーターのライブ録音も、最終的な権利は演奏者のものとなっていたので、放送局の許可が無くても新たにアルバムにできたということだ。
 
 結論は、聴き手にとっては様々な作品、そしてその演奏を幅広く、自由に聴く機会が増え、権利を持っている人にとっては、何らかの形でその対価が払われればいいのだが、そう簡単にいかないのがこの著作権絡みの課題だ。

 さて、今回の主役はピアノのマリアンマクパートランド。コンコルドの所属となって、これまで何枚がアルバムを出してきたが、当時の彼女の活躍の場の中心は自分がパソナリティーを務めるラジオのレギュラー番組「Piano Jazz」。1978年に始まり、亡くなる2年前の2011年まで33年間も続く長寿番組だった。「徹子の部屋」のマクパートランド版なので、毎回ゲストを招き、おしゃべりと演奏を楽しむという企画だ。
 彼女自身の演奏、ゲストだけの演奏もあれば、2人のデュオもある。ゲストはジャズミュージシャンだけでなく他のジャンルまで及ぶので意外な組み合わせも。CDになったものだけでも30枚以上だが、他もその多くはネット上にアーカイブされて今でも聴くことができる。これぞ、権利処理の理想的な姿のように思う。

 そのようなマクパートランドが、コンコルドで新たなレコーディングをしたのは、1985年の年明け。ちょうど、ラジオではこの頃ガレスピーと共演していた。放送の為のスタジオ通いには慣れていた彼女だが、この日行ったスタジオはフレッドハーシュのスタジオClassic Sound Studio。そこで、いつものような共演相手もなく一人ピアノに向かった。

 この日演奏した曲は、彼女のオリジナルWillow Creek以外もすべてがバラード。それもジャズスタンダードといえるのはI’ve[ Got a Crush on You位。ブルーベックからスティービーワンダーの曲までバラエティーに富んでいる。しかし、演奏は彼女のジャズピアノのお手本のようなタッチで、特に演奏に変化を持たせることもなく、原曲の良さを一曲一曲噛みしめるように淡々と続く。
 日頃は、トークを含めて相手との掛け合いに神経を使っているが、この日はあくまでも自分との対話。またには、「一人でこんな日もあってもいいのかな」といった雰囲気のアルバムに仕上がった。

1. Without You                    Ahmad Jamal 3:41
2. The Things We Did Last Summer      Sammy Cahn / Jule Styne 5:28
3. All in Love Is Fair                Stevie Wonder 4:36
4. Willow Creek        Loonis McGlohon / Marian McPartland 3:27
5. Long Ago (And Far Away)       Ira Gershwin / Jerome Kern 2:54
6. Someday I'll Find You                Noël Coward 4:40
7. I Saw Stars      Al Goodhart / Al Hoffman / Maurice Sigler 4:05
8. Blood Count                   Billy Strayhorn 5:01
9. I've Got a Crush on You     George Gershwin / Ira Gershwin 3:53
10. Summer Song                    Dave Brubeck 3:21

Marian McPartland (p)
Produced by Carl Jefferson
Engineer ; Frank Kulaga
Recorded at Classic Sound Studio, New York, January 1985
Originally released on Concord CJ-272

Willow Creek & Other Ballads
クリエーター情報なし
Concord Records

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