A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

日本人以上に「日本を愛するデビッドマシューズ」の原点はこのアルバムから・・・

2017-03-03 | MY FAVORITE ALBUM
Manhattan Jazz Quintet / David Matthews

 年明けから始まったビッグバンドのライブ巡り、1月にはジョンファディス、三宅裕司、野口久和と続いたが、それぞれテーマがあり編成やアレンジにも拘りがあって楽しめた。
 2月もビッグバンドが続いた。野口茜のmboでは、もう一人のリーダー双木さんがインフルエンザでダウン。ビッグバンドではメンバーが一人欠けてもトラで乗り切るのが常だが、リーダーも兼ねるとなると代役探しも大変。実施も危ぶまれたそうだが、急遽松木さんがピンチヒッターを務めて無事終了。パーカッションが加わりラテンフレーバーで一味違うmboの演奏も、いつも通りいい感じであった。

 続いて守屋純子の毎年恒例のコンサート。今回のお題は「ルディーバンゲルダー」トリビュート。どんな嗜好かと思ったが、彼女にとっては彼女のアメリカ録音がバンゲルダースタジオで縁があったとか。昨年亡くなったバンゲルダー追悼の意味だったのだが、彼女の周辺では昨年バリトンの重鎮宮本大路さん、そして長年一緒にプレーした長老尾田悟さんと相次いで不幸が続き、今回のコンサートはそれぞれの方々のメモリアル曲が続いた。

 カウントベイシーは最近メンバーもほぼ固定化され、さすがアンサンブルもソロも本家ベイシーサウンドの貫禄だった。ベイシーオリエンテッドのアマテュアバンドは多く、たまたま前日も聴いたが、やはり本家の演奏は格が違うと言わざるを得ない。今のリーダーのバーンハートに代わってからは活動にも気合が入っているようで、ライブだけでなく、前作のクリスマスアルバムに続き、新アルバムもすでに録音済みとのこと、発売が楽しみだ。今回のステージは定番の曲だけでなく、モーテンスイングなどのオールドベイシーの曲から、新アルバムに入っているというスティービーワンダーの曲まで、ベイシーサウンドを幅広く楽しめたのも収穫。

 そして、佐藤春樹ビッグバンドは新装開店のお披露目。若手メンバーも多く参加していたが、今回は4ビート中心にやるとのこと。ベテランとのコンビネーションもよく、4ビートといっても古いスタイル、昔のアレンジの焼き直しという訳ではなく、リーダー佐藤のアレンジが光る。スタンダード曲とオリジナルのバランスも良く今後に期待。
 河野広明ビッグバンドは、フィルケリーのアレンジを中心にオリジナルも含めていつものように西海岸のビッグバンドサウンドが楽しめた。
 2月最後は角田健一。定期公演の大きなホールも良いが、ピットインでのライブは盛り上がりも一段と。ビッグバンドの名曲、そしてジャズスタンダード中心のプログラムだが、流石王者の貫禄。締めとしては最上のライブであった。
これからも連休にかけて、ビッグバンドのライブが多く予定されファンとしては楽しみだが、今年は旅行の予定もあり、はたして何回聴きに行けるか?

 さて、しばらく中断してしまったアルバム紹介だが、ビッグバンドを聴き続けたのでビッグバンドをとも思ったがそれは改めて。先日、ウィントンマルサリスのスターダストを聴いた時、このアルバムも久しぶりに引っ張り出してあったので、まずはこのアルバムから。

 昔から母国以上に日本で人気が出たミュージシャンは多い。自分が子供の頃、ムードテナーの王者にサムテイラー、そしてジョージオールドといったテナー奏者がいた。歌謡曲のブルース物には欠かせない存在であったが、自分は子供心にこれがジャズだと思っていた時もあった。もっとも、彼等も本国ではジャズやR&Bをやっていて、そのプレースタイルは必ずしも耳慣れたサウンドだけではないことを後で知った。ジャズ以外でもエレキブームのきっかけともなったベンチャーズなども日本で絶大な人気を得て、晩年も毎年のように日本に来て地方回りをしていた。

 ジャズの世界では、ファンキージャズの立役者アートブレイキーは、初来日の時の歓待が余程気に入ったのだろう、すっかり日本贔屓になってその後も何度も日本に来ていた。彼の場合、日本での評価は過去の人気の延長だったような気がするが、内容的には本国アメリカでの評価の方が上回っていたかもしれない。特に有望な新人の発掘能力、そして彼らを活かしたジャズメッセンジャーズサウンドは最後まで衰えなかった。

 本国よりも日本での人気が上回ったジャズミュージシャンの一人にデビットマシューズがいる。プレーヤーとしてよりも、コマーシャルからジャズまでオールラウンドなアレンジャーとして活動がスタートであった。ダンスバンド、そしてジェイムスブラウンのバックに始まり、表立った活動を始めたのがCTIレーベルのサウンド作りに加わってからだった。 
 それが評価されたのだろう、世界に通用するフュージョンを提供するレーベルとしてキングレコードが立ち上げたエレクトリックバードレーベルの一連のアルバム作りに数多く加わった。これが、日本との接点が増えたきっかけであり、プロデューサーの川島氏とのコラボレーションのスタートとなった。

 その活動も定着し一定の評価を得た時、スイングジャーナルの編集長であった中山氏から提案があった。このマシューズにフュージョン色を排し、ハードバップスタイルのメインストリームアルバムを作ってはどうかと。これがこのマンハッタンジャズクインテット(MJQ)の誕生となった。1984年の事であったが、折しもこの頃はフュージョンが全盛であった一方で、新伝承派といわれるマルサリスなども台頭していた時だった。

 このマンハッタンジャズクインテットのファーストアルバムがこのアルバムとなる。日本では当然話題となったが、辛口のファンからはフュージョン育ちがハードバップをやっても、それはジャズではないという声も上がった。セールス的にもよく売れたが、内容的にも評価され、結果的にスイングジャーナルのディスク大賞では先日紹介したマルサリスのスターダストの銀賞を押さえて金賞を受賞した。

 スタジオワークではファーストコールであったルーソロフとジョージヤングの吹っ切れたソロに、新人チャーネットモフェットのベースも話題となった。スティーブガッドの4ビートも、フュージョン派の4ビート、今思えば懐かしいサウンドだ。新伝承派の面々とは一味違ったメインストリーム、ハードバップを、あまり線引きには拘らなかった自分としては心地よく聴いた記憶がある。

 その後、マシューズはこのMJQに加え、マンハッタンジャズオーケストラ(MJO)を誕生させた。アレンジャー歴の長いマシューズにとっては、このオーケストラの方が自ら先に作ったリーダーバンドだった。これをMJOに衣替えした訳だが、こちらもマシューズ風の編成とアレンジで、彼の斬新的なビッグバンドサウンドをよりポピュラーな存在にした。
その後、どちらのグループもジャズスタンダードといわれる良く知られた曲を選んでアルバム作りを行い、日本では益々人気を得てMJQとMJOを交互に率いて毎年のように日本ツアーを行ってきた。

 最近では、MJOが東北大震災の直後の放射能漏れ騒ぎの真っ只中、予定したメンバーから来日を辞退者が多くいたにも関わらず、日本人プレーヤーのサポートを得て予定通りツアーを決行した。これまでお世話になった日本への恩返しという意味もあったのだろう、こんな大変な時こそ元気与えなければといった熱気を感じさせるライブであった。

 このMJQのアルバムが生まれてから30年、メンバーは変ってもMJQは昨年も新しいアルバムを録音しているようだ。日本人の手によって誕生し、日本人の為にカスタマイズされたバンドであったが、その活動を通じてマシューズ自身を日本人にしてしまったようだ。

 マシューズは今では日本に居を構え、最初は熊本、そして今では八戸を拠点とし、日本の良さが残る地方にすっかり溶け込みながら、日本全国を飛び回っている。たまに、ドラムの奥田英人とコンボを組んで都内のライブハウスに出演することがあるが、そこでは一ピアノプレーヤーとして入魂の演奏を聴かせてくれる。やはり、ピアノのプレーではマシューズに宿るジャズ魂は、ジャンルや編成に関係なくひとつのようだ。

 先日、サックスのエリックマリエンサルが来日し、色々なセッションでそのプレーを披露してくれたが、いずれもアルバムで聴く演奏とは全く違った熱っぽいものだった。やはりライブでの演奏はそのプレーヤーの本質を楽しめる。一昔前のフュージョン、メインストリーム論争、それはあくまでもアルバムを通じての評価だったように思う。 過去のアルバムを聴くのもいいが、生のジャズを楽しみにライブ通いが続きそうだ。

1. Summertime      G, Gershwin
2. Rosario         D. Matthews
3. Milestones        Miles Davis
4. My Favorite Thing    Richard Rogers
5. Airegin         Sonny Rollons
6. Summer Waltz      David Matthews

Manhattan Jazz Quintet
Lew Soloff (tp)
George Young (ts)
David Matthews (p,arr)
Charnett Moffett (b)
Steve Gadd (ds)

Produced by David Matthews & Shigeyuki Kawashima
Recording Engineer : Michael Farrow
Recorded at A&R Studio, New York on July 13 1984

MANHATTAN JAZZ QUINTET
クリエーター情報なし
キングレコード

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