A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

たった一枚のリーダーアルバムは、たまたま出会ったインディアン音楽がきっかけで・・・・

2015-05-31 | CONCORD
Symbols Of Hopi / Jill McManus

ライブがいいか、スタジオが良いかは一部の恵まれたミュージシャンだけの悩みかもしれない。少なくとも自分の音楽を人に聴いて貰える機会があるのだから。
最近でこそ、アルバム制作もミュージシャンの自主制作が多いようであるが、それも広く聴いて貰うのは大変だ。それでも、ネット時代になって昔より出会いのきっかけや機会は増えたが。

今も昔もメジャーなレーベルでアルバムを出せるのは一部の恵まれたミュージシャンだけ。アルバムを作ることなく活躍しているミュージシャンは、洋の東西を問わず星の数ほどいるのが現実である。
聴く方にしても、彼らの演奏に接する機会もなく、世に出たアルバムの中だけで「誰が良いの悪いの」と議論をしているのも、ある種滑稽な姿だ。最近はライブに出掛ける事が多く、予想以上に素晴らしいミュージシャンや演奏に接すると、余計に感じるようになった。

以前紹介したベースのリチャードデイビスのデュオアルバムAs Oneでピアノを弾いていたのはJill McManusという無名の女性ピアニストであった
ペッパーアダムスがソロ活動を始めた後、ワンホーンのリーダーアルバムを何枚か作ったが、その時のピアノはトミーフラナガンでありローランドハナであった。レコーディングという事もあり、そこでは昔馴染みの名の通ったピアノを起用したのであろう。
しかし、同じ時期にクラブ出演する時のペッパーアダムスカルテットのピアノはこのJill McManusと組むことが多かったという。しかし、アダムスとこのマクマナスが共演したアルバムは一枚も残されていない。当時一緒に演奏したことは一番多かったと思われるのだが。

彼女の経歴を見ると、自ら先頭に立ち、女性だけのグループを作りWomen’s Jazz festivalに参加することもあり、ニューヨークではそれなりに活躍をしていたようだ。ピアノの演奏だけでなく、作曲、教育、そしてジャズの研究家でもあったらしい。
しかし、レコーディングには全く恵まれなかった。リチャードデイビスとのアルバムも、2人で出ていたクラブのライブをたまたま録音したものであった。

その彼女がある時、ニューメキシコを旅しインディアンのホピ族の曲に出会い、魅了される。それをきっかけに生活パターンも大きく変り、毎年夏にはニューメキシコを訪れ、ジャズのワークショップを開催し、ホピの音楽にじっくり取り組みことになる。そのような事が彼女の物事に取り組む姿勢に積極性を感じさせる点だ
そして、その集大成ともいえるホピとジャズの融合したアルバムを作る事になった。売るためのアルバムというのではなく、ある種、研究成果の発表である。

これに協力を惜しまなかったのがコンコルドのオーナーであるカールジェファーソンであった。もちろん、プロデュース、作曲、演奏、そしてメンバーの選定はすべて彼女に任せた。コンコルドは単なるレーベル貸であり、ミュージシャンが自ら好きなようにプロデュースしたアルバムである。

メンバーを見ても、コンコルドのアルバムとは思えないようなメンバー達だ。フロントラインはトランペットのトムハレルに、サックスはデイブリーブマン。ベースにマークジョンソン、彼女が普段接していた仲間達が参加した。
ホピの音楽のリズム、そしてメロディーを彼女の意を汲んで彼らの感性でジャズ仕立てした訳だが、メンバーの人選も適切だったように思う。

Hopi音楽といっても自分は知見が無いが、単調な前ノリのドラム、リズムはラトル、そして自然を称える歌。これらはインディアンの音楽共通の特徴の様だ。
これとジャズとの融合だが、考えてみれば、アメリカの歴史の中で奴隷として連れて来られた黒人以上に迫害を受けたインディアン。彼らの伝統や文化と日常的に接する事は少なかったと思う。彼女はそこに新鮮さを感じたのかも。
そういえば、チャーリーミンガスもインディアンの血が流れていたという。単に黒人音楽とはいえないルーツを彼女も何か感じたのかもしれない。

この頃の、コンコルドのミュージシャンがプロデュースしたアルバムには、このようなアルバムもあった。
このアルバムのお蔭で、彼女も辛うじて今の時代に名を残すことができたが、実際は多方面で活躍していた実力者であったのだろう。

1. Corn Dance
2. Cloud Blessing
3. Symbols of Hopi
4. All The Earth To Bloom
5. From The Four Directions
6. Inner Spirit Dance
7. Acoma

Jill McManus (p)
Dave Liebman (ss,fl)
Tom Harrell (tp,flh)
Marc Johnson (b)
Billy Hart (ds)
Loius Mofsie (cottonwood drum, rattles)
Alan Star (bells, rattles)

Produced & Arranged by Jill McManus
Recorded at Vanguard Studios, New York City, March 1983
Recording Engineer : David Baker

Originally released on Concord CJ-242
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アルバム作りの上手いグループも最後はやはりライブ中心で・・・

2015-05-25 | MY FAVORITE ALBUM


Dave Pell Octet Live at Alfonse’s

ジャズを聴くのはアルバムがいいか、ライブがいいか?これは永遠の課題かもしれない。
しっかりプロデュースされた、いい録音のアルバムを聴くと、これはなかなかライブでは味わえないと思う。
しかし、反対にジャズはある種のワンアンドオンリーの瞬間芸を楽しむもの。ジャムセッションのようなメンバーの組み合わせもあるし、日によって演奏の好不調もある。会場の雰囲気を含めて盛り上がった演奏を聴くと、これはスタジオ録音では味わえない。
結局どちらも良いという事になるのだが。

同じグループを聴いても、スタジオとライブでは全く違うイメージを感じることもある。
しばらく前に紹介したアルバムに、スーパーサックスの東京でのライブ録音があるパーカーのアドリブをアンサンブルに仕立てたスーパーサックスは、アレンジの妙をスタジオ録音できちんと録音されたアルバムでその良さにまずは感激した。アルバムではソロもあるがこれは、コンテカンドリやロソリーノが中心、一流メンバーが揃っているが、サックス陣のソロは味わえない。

しかし、ライブ録音を改めて聴くと、ここではサックス陣も皆ソロを披露している。せっかく錚々たるメンバーが舞台に揃っていて、時間的な制約もないのだから、それぞれのソロを披露して当たり前。やはりライブの時はそのような演出も必要だと思う。いや、スーパーサックスも最初はライブからスタートした。最初からこのような形でスタートしたのかもしれない。

ウェストコーストを代表するグループのひとつにデイブペルのオクテットがある。アレンジ中心の洗練されたサウンドはウェストコーストジャズ自体が下火になってからも人気は持続し、60年代になってもアルバムを多く残している。
その後ペルはスーパーサックスの活躍に刺激を受けたのか、78年にPrez Conferenceを作ったがこれは長続きしなかった

そして80年代に入り、ペルのオクテットを懐かしむ声が高まり、オクテットを再編することになるが、単に昔のアレンジを再演してもつまらない。そこでライブのアルバムを作ることにした。そして、そこには単に昔のアルバムの再発にならないような「何か」を求めて。

時代は変りメンバーはドラムのフランクキャップを除いて60年代のメンバーとはがらりと代わったが、いずれも西海岸のスタジオワークを務めている面々。アレンジは、当時のビルホルマンやマティーペイチのものをそのまま使った。そして、そこにはライブならではの「何か」が付け加わる事を期待してライブ録音となった。

結果は上々。ペルのオクテットの軽快なサウンドは変ることは無いが、ライブならではのリラックスした感じになり、曲によってはソロもタップリ。例えば、Suze Bluesはオリジナルでは4小節のソロ交換だが、ここではコーラス単位で各メンバーが順番に。結局ライブのステージが、昔の懐メロの再演ではない「何か」を生み出したようだ。

アルバム作りだと、曲の選曲でアルバムに特徴づけができるが、ライブだとやはり演奏のメリハリでプログラムを構成する必要がある。特にホテルのラウンジでの演奏の様にバックミュージックとして演奏している時はいいが、ライブで聴かせるためのステージではその演出が大事だと思う。やはりジャズのライブは、プラスαの「何か」を生み出すようだ。
これに味を占めたのか、ペルはアルバムこそ作らなかったが、ライブではこのオクテットを時々再演していたようだ。

1. Love Me or Leave Me
2. Java Junction
3. You’re My Everything
4. Angel Eyes
5. The White Cliffs of Dover
6. Have You Met Miss Jones
7. Them There Eyes
8. I Know Why And So Do You
9. I Founf A New Baby
10. Suze Bluze

Dave Pell (ts)
Bob Efford (bs)
Steve Huffsteter (tp.flh)
Ric Culber (tb)
Bob Florence (p)
Tom warrington (b)
Barry Zweig (g)
Frank Capp (ds)

Arraged by Marty Paich, Bill Holman,  Johnny Mandel
Recorded live at Alfonse’s

Live at Alfonse's
クリエーター情報なし
RKO / Unique
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ソウルフルなテナーで、ジャズマニア以外のファンの獲得を目指して・・・

2015-05-22 | PEPPER ADAMS
Blue Odessey / Houston Person

1968年3月、ペッパーアダムスはサドメルとデュークピアソンの2つのビッグバンドのそれぞれ週1回のライブのレギュラーメンバーとして活動していた。一人gigに加わるということもあまりなく、他はレコーディングのセッションプレーヤーとしてお呼びが掛かれば参加するといった日々であった。時はまさにテレビの時代を迎えて、CM用のジングル制作に加わる事も多くなっていた。スタジオワークが多くなった頃である。

2月にはジョージベンソンのセッションに参加したが、3月に入るとプレスティッジのドンシュリッテンからお呼びがかかる。前回はバリーハリスのセッションで、ここでは久々にハードバップの演奏を行ったのだが・・・。

今回の主役は、テナーのヒューストンパーソン。
ブルーノートで活躍していたスタンレータレンタインに通じるソウルテナーで、60年代前半はオルガンのジョニーハモンドのグループの一員で演奏していた。いわゆるソウルフルなオルガンジャズの合うテナーである。プレスティッジでリーダーアルバムを出し、売り出し中の新顔であった。

前作はピアノトリオにヴァイブを加えて、純粋ジャズファンのみならず一応、R&BやPopsファンにも受け入れられるアルバムをまずは作った。そして、今回はアダムス以外にカーティスフラーを加えた3管編成。シダーウォルトン、ボブクランショーといった面々は前作と同じ。シュリッテンの好みから言えば、そのままバリバリのハードバップの演奏も可能ではあったが・・・。

ここはやはり、ソウルフルなテナーを活かし、各レーベルが狙っていたジャズロック風ソウルジャズが一つのターゲットであったのだろう。プレーヤーで言えばスタンレータレンタインルードナルドソンの対抗馬であった。

アレンジはピアノのシダーウォルトン。最初の曲のBlue Odesseyはまさに「サイドワインダー」が火をつけたジャズロック路線。この手の曲はブルーノートを始めとしてどこのレーベルでも定番でまずは一曲披露といった感じだ。ホーンセクションはリズムの景気付けのバックアンサンブルだけで登場。

2曲目のHoly Landはテーマこそファンキーな感じだが、ソロに入ると4ビートでハードバップ路線の延長。短いながらアダムやフラーのソロも登場。
続いて、スローな泣きのテナーを披露。そして、カリプソのリズムにとってロリンズ風のテナーへと・・・。

まさにこの時代を象徴するような、新旧取り混ぜた色々なスタイルのごった煮感は免れないが、まさに時代の変わり目であったのだろう。パーソンの良さをどう表現するかの試行錯誤だったのかもしれない。アレンジを担当したウォルトンも苦労したであろう。

この、ヒューストン、実は自分はほとんど聴いた事が無かった。手持ちアルバムも探したが一枚も無かった。最近のアルバムはソウルテナーというより、テナーの王道といった感じのプレーをしているようだ。ちょっと聴いた感じは悪くない。最近のアルバムで聴いてみたいものもある。

結局、このパーソンを始めとして、スタンレータレンタイン、アルトではルードナルドソンといったように、サックスをサックスらしく吹くプレーヤーは皆長く活躍している。ビジネス的には彼らのプレーが広く受け入れられたということだ。どうやら自分は彼らソウルテナーからの流れのプレーヤーは聴かず嫌いが多いのかもしれない。
 
1. Blue Odessey                Ceder Walton 7:42
2. Holy Land                 Ceder Walton 6:45
3. I Love You, Yes I Do    Eddie Seiler / Guy Wood / Henry Glover / Sally Nix 3:34
4. Funky London                 Gal Massey 4:53
5. Please Send Me Someone To Love           Percy Mayfield 7;14
6. Starburst                         Ellen Starr 6:09

Houston Person (ts)
Pepper Adams (bs)
Curtis Fuller (tb)
Cedar Walton (p)
Bob Cranshaw (b)
Frankie Jones (ds)

Produced by Don Schlitten
Engineer : Richard Alderson
Recorded on March 12 1968

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

90歳になっても、この頃のドラミングと本質は変わらずに・・・

2015-05-21 | MY FAVORITE ALBUM
We Three / Roy Haynes, Phineas Newborn, Paul Chambers



先日ロイ・ヘインズのライブがあった。「90歳の誕生日を祝って」というタイトルであったが歳を感じさせないプレーを聴かせてくれた。へインズもバップ時代を伝える生き字引の一人だが、まずは元気な姿を見ることができて一安心。

元々小柄なへインズだが、ちょっと見た感じ、そして歩く姿は一回り小さくなった感じがするのは否めない。しかし、一度ドラムセットの前に座るとそのドラミングは健在であった。小柄なせいかへインズのドラムセッティングは椅子を高くして少し特別なセッティングだという。これがしっくりいかなかったのか、最初の曲が始まってからもドラムセットを細かく神経質そうに調整していたのが気になった。もちろんプレーもおざなりになる。

しかし、曲が進むにつれてドラミングの方も、本来のへインズのタイムリーな、きめ細かさにドライブがかかってきた。元来ド派手なプレーをするタイプではないので、ドラムソロと言ってもマレットを使ったメロディアスなプレーであった。年を重ねてもへインズのドラミングの本質は変わるものではなかった。

同年代のベニーゴルソンのステージではプレーだけでなく昔話を交えたトークも楽しめたが、反対に今回のへインズのステージはプレーに専念。曲目紹介やメンバー紹介もなく淡々とステージは進んだ。本来は陽気な性格のへインズのはずだが、これは少し残念であった。

へインズは長く演奏生活を続けているが、これはというリーダーアルバムはあまり思い浮かばない。(もっとも90年以降のアルバムはほとんど聴いていないが)。しかし、バックに廻った時、その時のメンバーや場の雰囲気に合わせたドラミングは格別のものがある。

因みに自分が一番好きなドラミングは、チックコリアのNow He Sings Now He Sobsのバック。コリアが新しい事をやろうとしている事に合わせて、曲によって実に変化に富んだドラミングを聴かせてくれる。スタンゲッツのグループに加わりながら、コルトレーンのグループにエルビンジョーンズの代役として良く加わっていたというのも、どのような相手とも合わせることができるへインズならではの技があるからだと思う。

このへインズの50年代のアルバムというとこのアルバムとなる。サラボーンのバックを務めている時はブラッシングに専念しているが、ここではフィニアスニューボーンのピアノが相手だ。超絶テクニックにどう合わせるかが聴き所だが、レギュラートリオのようにピッタリときまっている。

この録音が行われた1958年、ロイヘインズは長年務めたサラボーンのバックを離れた。そしてこのアルバムで共演しているニューボーンとは何度かファイブスポットでgigを続けていたようだ。それもあって、まさにタイトル通り誰がリーダーという事も無く3人の呼吸は合っている。クラブでの演奏にピッタリなグルービーな雰囲気もそのままスタジオで再現している。ニューボーンもデビュー直後の様にテクニックをひけらかすのではなく、3人のコラボに重きを置いているようにも感じる。まさにWe threeだ。

このジャケットの3人の写真を見ても、へインズとニューボーンがチェンバースと較べて頭一つ違うのが良く分かる。小さな巨人達のビッグな演奏が聴けるアルババムだ。



1. Reflection                Ray Bryant 4:21
2. Sugar Ray           Phineas Newborn Jr. 6:22
3. Solitaire             Guion / Carl Nitter 8:47
4. After Hours             Avery Parrish 11:14
5. Sneakin’s Around             Ray Bryant 4:21
6. Our Delight             Tadd Dameron 4:01

Phineas Newborn (p)
Paul Chambers (b)
Roy Haynes (ds)

Produced by Bob Weinstock
Recording Engineer : Rudy Van Gelder
Recorded at Van Gelder Studio Hackensack New Jersey on November 14, 1958


We Three: Rudy Van Gelder Remasters Series
クリエーター情報なし
Prestige
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ソロプレーヤーが本領発揮するには、ワンホーンでスタンダード曲を・・・

2015-05-20 | CONCORD
Standards of Excellence / Al Cohn

サックスプレーヤーにとって自分のプレーを一番アピールできるのはワンホーンでの演奏であろう。他の管楽器に合わせる必要もなく、複雑なアレンジもいらず、自分のプレーを引き立たせることのできるリズム隊を選べれば尚更であろう。

アルコーンはテナー奏者としてもちろん有名だが、作編曲も得意で晩年はアレンジャーとして活動することも多かった。そのせいかプレーを聴いても何か枠から外れることなく、そつなくプレーをしている印象がある。プレーヤーとしてはズートシムスとのコンビが有名だが、一人吹っ切れた演奏をしているワンホーンアルバムというのはすぐには思い出せない。

そのアルコーンがConcordレーベルで最初に出したアルバムが1981年4月録音のNonpareil。ルーレビーのピアノトリオをバックにしたワンホーンアルバムであった。
その年の夏以降は。コンコルドオールスターズに加わってコンサートのステージにも多く参加した。そこでは一メンバーとしてのアルコーンに戻っていた。
翌年、今度は自分の息子との共演アルバム"Overtones"を作った。ここでの演奏はデビュー間もない息子と一緒となると、他のプレーヤーとの共演以上に気を遣ったかもしれない。

そして、今回は正真正銘のワンホーンでのリーダーアルバムとなった。さらにアルコーンには珍しく自作曲は使わずスタンダード曲を演奏。それも誰もが知っているスタンダード曲というのではなく、何か拘りを感じる選曲だ。
そして、バックにはピアノを使わずに、ベテランのハーブエリスを加えたギタートリオ。ベースには長年付き合いのあるモンティーバドウィック。ドラムは、この手のセッションにはお似合いのジミースミス。このセットを見ただけで、今回のアルバムの出来具合がイメージできる。

アルバムのタイトルはStandards of Excellence。常套句として何か意味があるのかもしれないが、直訳すれば「素晴らしさの様々な基準」。勝手に解釈すれば、良い物といわれるものには何でもそれなりの基準があり。それをクリアしたものが結果的に良いものとなるということだろう。

音楽の世界では、曲であり、メンバーであり、そして演奏する場であり、さらにはレコーディングとなればプロデューサーであり、エンジニアとなる。今回はアルコーンの最上のテナー演奏を引き出すための要素はすべて基準を超えていたと考えてもいいだろう。

アルコーンのテナーは流暢ではあるが少し硬い感じがする。しかし、このアルバムでの演奏はその硬さがとれて、音にも厚みを感じる。テナーとはこのような音で、このように吹くのだというような見本のようにも感じる。

スタンダード曲というのは、実力あるプレーヤーにとっては自分のイマジネーションと演奏技術を披露するひとつの素材でしかない。ロリンズもワンホーンでスタンダード曲を好んだ。極端な事をいえばメロディーにこだわらなくてもいいことになる。その昔はスタンダード曲のコード進行を生かしたオリジナル曲も沢山生まれた。
ここでのコーンの演奏は、メロディーを生かしつつもその表現の自由さを感じる。オリジナルだとそうもいかないだろう。

このアルバムのプロデューサーは、Frank Dorritie。オーナーのジェファーソンとは少し違った色付けで、これまでもいいアルバムを作っていたが、このアルバムもその一枚に加わった。
そして、エンジニアが西海岸での録音でありながら、いつものPhil EdwardsではなくAlan Sidesという新顔。コンコルドのアルバムは総じて録音のレベルが高いが、このアルバムの録音も秀逸だ。これもテナーの音の良さに影響しているのかもしれない。

このアルバムがアルコーンのコンコルドでのアルバムの最後になってしまった。このアルバムを録音してから5年後の1988年にアルコーンは亡くなる。この後も何枚かのアルバムはあるが、このアルバムがアルコーンの晩年のベストプレーのような気がする。



1. Russian Lullaby                 Irving Berlin 5:03
2. When Your Lover Has Gone             Einar A. Swan 4:30
3. O Grande Amor      Antonio Carlos Jobim / Vinícius de Moraes 4:19
4. You Say You Care              Leo Robin / Jule Styne 6:08
5. I Want to Be Happy        Irving Caesar / Vincent Youmans 4:10
6. Embraceable You          George Gershwin / Ira Gershwin 4:49
7. I Remember You        Johnny Mercer / Victor Schertzinger 5:40
8. When Day Is Done        Buddy DeSylva / Robert Katscher 6:00

Al Cohn (ts)
Herb Ellis (g)
Monty Budwig (b)
Jimmie Smith (ds)

Produced by Frank Dorritie
Engineer : Alan Sides
Recorded at Ocean Way Recording, Hollywood California, November 1983
Originally released on Concord CJ-241


スタンダーズ・オブ・エクスレンス
クリエーター情報なし
ユニバーサル ミュージック
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

一流のスタジオミュージシャンの技が存分に・・・

2015-05-17 | MY FAVORITE ALBUM
Everything’s Gonna Great / Sal Lozano



この顔に見覚えのある方は多いかと思う。西海岸のビッグバンドで最近は毎年のように来日しているゴードングッドウィン率いるBig Fhat Bandのリードアルトのサルロザノ。
このバンドのサックスセクションではエリックマリエンサルのソロ方が目立つが、このロザノもなかなか素晴らしいプレーを聴かせてくれる。ラプソディーインブルーではクラリネットを存分に披露してくれたが、クラリネットの腕前も一流だ。

というのも、ゴードングッドウィンのバンド以外の普段の活動を日本では知ることはできないが、サルロザノはロスのスタジオミュージシャンの中ではファーストコールの第一人者だそうだ。映画音楽、有名ミュージシャンや歌手のレコーディング、コンサート、そして舞台に数多く出演している。そして、大学で音楽を教える教育者でもあるようだ。

このようなトップクラスのスタジオミュージシャンの本気のジャズプレーの凄さを、身を持って体験したのが、数年前来日したカールサンダースのトランペットだった。西海岸のビッグバンドのアルバムでサンダースの名前は良く見かけるが、実際にライブでステージのサンダースのトランぺットを目の当たりにした時は、ソロでもアンサンブルでもその迫力と素晴らしさに度肝を抜かれたものだ。

実は、このサルロザノが4月から5月にかけて単身来日していた。日本の各地を回って地元のビッグバンドとの共演を行ったようだが、東京では何回かのコンボでのライブがあった。普段のスタジオワークやゴードングッドウィンのバンドでの演奏ではなく、そこではソリストとしてストレートなジャズのプレーをたっぷりと聴けた。

自分が聴きに行ったのはトロンボーンの片岡雄三との共演。ピアノの野口茜との共演もあったが、残念ながらこちらは聴きには行けなかった。片岡雄三も自分は普段はビッグバンドで聴く事が殆どなので、彼のソロプレーも合わせて堪能できたのが大収穫であった。
このような実力者ともなるとたいしたリハーサルも無く、ぶっつけ本番のプレーだったようだが、呼吸はピッタリ。お互いのソロだけなく2人の掛け合いもレギュラーバンドのようにスムースであった。

このサルロザノが新しい自分のCDということで、会場で紹介していたのを早速購入したのがこのアルバム。中身も知らずに買い求めてみたが、中を開けて聴いてみるとびっくり。
ロザノのリーダーアルバムではあるが、中身は彼のプレー仲間のTom Kubisの作品集であった。クビスがファイブサックス用のアレンジができたので、ロザノにそれをレコーディングしたいと相談に来たのがきっかけだったそうだ。最初はメンバーへの参加要請だったかもしれないが、話をきいたロザノは、「それであれば5本のサックスは全部自分が吹くよ」と言って、できたのがこのアルバムである。

まさにマルチリードプレーヤーであるロザノの本領発揮となった。ソプラノからバリトンまで、ファイブサックス用のアンサンブルパートは、リズムセクション以外はすべてロザノ一人で多重録音をした。
それに、ソロ部分はロザノのサックスやフルートだけでなく、曲によってトランペットや他のサックス、トロンボーンなどが適宜参加する形となった。
曲想は、4ビートから8ビートまで。ラテン調があったり、シャッフルのリズムに乗せた軽快なものまで色とりどり。肝心なサックスアンサンブルはソプラノリードが多く、重厚な厚みのあるサックスというよりは明るく軽やかなサウンドだ。
こんなアルバムを作り上げてしまうというのは、まさにどんな演奏でもこなすスタジオワークの強者の技があるからこそだろう。サックスアンサンブル好きとしては、予想外の好アルバムを手に入れることができたが、ライブで聴かせてくれたソリストとしての迫力は残念ながらこのアルバムでは味わうことが出来ない。やはりライブならではの演奏だったのか・・・。

このライブの会場であった芝崎の「さくらんぼ」は、亡くなった名アルト奏者、堀恵二さんが率いていたメロウサキソフォンアンサンブルの本拠地だった。あのファイブサックスのサウンドをもう聴けないと思うと、一度このロザノが加わって再演して欲しいものだ。

1. I Love Sax
2. Graduation Waltz
3. Hey Sal,Get Your Soprano Out
4. Beat Down And Broken Blues
5. Maraba
6. I Wanna Hear Beer
7. Takin’ The A Sax
8. Romance
9. You Say Partido, I say Perdido
10. Bar B Oue
11. A New Sheen On Shine
12. Still
13. There’ll Never Be Another Sax

Sal Lozano (ss,as,ts,bs,fl)
Tom Ranier (p)
Trey Henry (b,eb)
Ray Brinker (ds)
Mike Higgins (g)
Joey De Leon (per)

Ron Stout (tp)
Dave Moody (ts)
Tom Kubis (ts,arr)
Brian Williams (bs)
Andy Martin (tb)
Alex Iles (tb)
Charlie Norllas (tb)

Recorded July 2013,July 2014 at MAPS and House of Syn
Recording Engineer : Mike Willson, Andrew Synowiec
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Pops路線に変わる直前のクインシーの作編曲はベイシーオーケストラに・・・

2015-05-14 | MY FAVORITE ALBUM
Lil Ol' Groovemaker…Basie! / Count Basie Orchestra

連休中のライブ通いはビッグバンド三昧であったが、その中の一つが小林正弘のオーケストラ。この日のプログラムはQuincy Jones Nightとタイトルされたクインジージョーンズ特集であった。

一昨年クインシージョーンズが来日した時、実はこのオーケストラがクインシージョーンズオーケストラを務めた。このクインシージョーンズの公演は、クインシーファミリー総出の延々4時間にも及ぶ長いコンサートであったが、このオーケストラが主役で演奏したのはほんの数曲であった。せっかく準備したのにこれでは消化不良であったのだろう、後で日を改め同じメンバーが集まりライブハウスで憂さ晴らしライブを行った。
クインシージョーンズのビッグバンド物は、昔は学生バンドの基本レパートリーであったのだが。最近ではクインシーのアレンジ物はライブでもあまり聴く機会が無かったので、クインシー好きとしては久々に堪能したライブであった。

この日もクインシーのビッグバンドでは定番のエアメイルスペシャルからスタート。第一部は初期のクインシーのオーケストラの曲から、そしてベイシーへ提供したアレンジからの曲が続く。続く第2部はボーカルが加わって、ウォーキングインスペース以降のアルバムからの曲。久々に新旧取り混ぜてのクインシー三昧のライブは楽しく聴けた。

クインシー・ジョーンズは1960年に念願の自分のビッグバンドを編成してヨーロッパに遠征を行った。しかし、予定されていたミュージカルが途中で中止に、演奏の場を求めてヨーロッパ中流浪の旅を続けたが、結局多額の借金を抱えてアメリカに戻ることに。その額は14万ドルにのぼったという。その後マーキュリーの役員になった時の年俸が4万ドルだったというから、当時のその額は半端ではなかった。

しかしクインシーは挫けなかった。どん底の状態からクインシーは音楽界のトップスターの座に登り詰め、アメリカンドリームを実現した一人になった。
しかし、ヨーロッパで苦労を共にした仲間の中には、それがきっかけで人生の歯車が狂った者もいたようだ。ギターのレススパンは酒浸りになり、ジュリアスワトキンスはジャズ界から遠ざかってしまった。

黒人としては珍しいメジャーレーベルであるマーキュリーの役員に登用され、まずはガレスピー、マリガン、ピーターソンなど有名ミュージシャンと次々と契約しアルバムを作ったが全く売れなかった。トップから売れるアルバム作りの至上命令を受け、ジャズ以外の世界に踏む出すことになる。
一方で、作編曲に関してはマーキュリーとの契約事項に入っていなかったために、他社のアルバムでも作編曲は自由にできたようだ。反対に自社のアルバムで作編曲をやってもそれはただ働きになったようだが。この時音楽ビジネスの基本を身につけ、後の成功の基礎が築かれたのだろう。
転んでもただでは起きないのは天性なのか。またこの時代、映画音楽にも興味を持ち新たな領域にも進出している。これらを同時にこなしていたというのが、クインシーの超人的なところだ。

クインシーがこの八面六臂の活躍をしている時に、カウントベイシーオーケストラにアレンジを提供している。クインシーがベイシーオーケストラに最初にアレンジを提供したのはルーレット時代。One More Timeというアルバムを残している。自分のビッグバンドを作る直前の作品だが、ベイシーサウンドとクインシーサウンドが見事に融合した素晴らしいアルバムだと思う。

マーキュリーで売れるアルバム作りを心掛けるようになってから、ベイシーに提供したアレンジはオリジナル曲ではなくいわゆるヒット曲をベイシーサウンドにアレンジしたもの。アルバムThis Time By Basieであった。今回の小林正弘のビッグバンドのライブでも、このアルバムの曲がメドレーで演奏されていた。

しかし、このアルバムと殆ど同じ時期に、クインシーのオリジナル曲&アレンジを提供したのがこのアルバムだ。ちょうどベイシーもルーレットを離れ、シナトラのリプリーズに移籍する間の何枚かをVerveで録音したが、その中の一枚だ。

お馴染みのフレディーグリーンのリズムにのってベイシーのハープシコードのソロからスタートする。アンサンブルとの掛け合いも快調だ。
次のPleasingly Plumpはクインシーのオーケストラでも演奏していた曲。このまったり感がベイシーオーケストラだと一層いい感じだ。



ベイシーのアルバムとしてはあまり有名ではないが、クインシーのPOPS路線に変わる直前の作品として聴くと、クインシーの曲が聴ける最後のアルバムとして貴重だ。フィルウッズがクインシージョーンズの作品集アルバムを作っているが、このアルバムの曲からも何曲か選ばれている

肝心のベイシーオーケストラは、サドジョーンズが抜けた後はアルアーロン、そしてハーマンオーケストラにいたドンレイダーが加わっている。サックスセクションは両フランクが陣取り健在。いわゆるアドミックベイシーバンドをまだ引き継いでいる。ベースはクインシーと共にヨーロッパを渡り歩いたバディカトレット。これも何かの縁かもしれない。

世の中も、ジャズ界も、ベイシーそしてクインシー自身も大きな転換期であったが、クインシージョーンズのビッグバンドアレンジャーとしてのそれまでの活動の集大成となるアルバムだ。

1. Little Ol' Groovemaker
2. Pleasingly Plump
3. Boody Rumble
4. Belly Roll
5. Count' Em
6. Nasty Magnus
7. Dum Dum
8. Lullaby for Jolie (Jolie Ann)
9. Kansas City Wrinkles

Al Aarons, Sonny Cohn, Don Rader, Fortunatus Fip Ricard, Snooky Young (tp)
Henry Coker, Urbie Green, Grover Mitchell, Benny Powell (tb)
Marshall Royal (as, cl) Eric Dixon, Frank Foster, Frank Wess (ts,as, fl)
Charlie Fowlkes (bs)
Count Basie (p)
Freddie Green (g)
Buddy Catlett (b)
Sonny Payne (ds)

Quincy Jones (arranger)

Recording Ebgineer : Phil Ramone

Recorded NYC, April 21,22,23 1963

リル・オル・グルーヴメイカー
クリエーター情報なし
ユニバーサル ミュージック クラシック
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

 ハーマンオーケストラのステージは、OBを交えて一段と迫力も増して・・・

2015-05-12 | CONCORD
World Class / Woody Herman Big Bnad

1982年、第2回のオーレックスジャズフェスティバルが開かれた。この年の目玉はJ&Kを含むオールスターズ、単独グループとしてはデイブブルーベックカルテット、そしてウディーハーマンオーケストラであった。
このウディーハーマンのオーケストラにはゲストが加っていた。この時はよくある歌手ではなく、4人のテナー奏者。ウディーハーマンといえばレパートリーの中でテナーをフィーチャーしたFour Brothersが有名だが、このフォーブラザースを意識した人選であった。

ハーマンのフォーブラザースバンドといえば、セカンドハード時代で、スタンゲッツ、ズートシムス、アルコーンなどが在籍した時代。ただしこの3人が一緒いた期間は短く、メンバーの入れ替わりは激しかった。最初のフォーブラザースが録音されたのは1947年、その時はゲッツ、シムス、ハービースチュアートとサージチャロフの4人組であった。



その後、いつの時代でもこのFour Brothersはハーマンオーケストラのメインレパートリーとして生き続け、ハーマンオーケストラに在籍したテナー奏者は誰もがプレーした曲となる。

この1982年に来日したメンバーではアルコーンがこの時代に在籍したメンバーであったが、他のメンバーもハーマンオーケストラの他の時代のOB達。フリップフィリップスが40年代に活躍した最長老、そして50年代を代表してメッドフローリー、そして60年代のサルニスティコの4人であった。

よく学生の運動部だと先輩達を招いてOB戦が行われる。毎日一緒に練習をしている現役は若さとチームプレーでは勝るものの、個人技ではOB達の老練なプレーに軍配が上がるものだ。

この当時のハーマンオーケストラ、というよりビッグバンド事情も同じようなものであった。リハーサルオーケストラやレコーディングのための臨時編成のオーケストラではベテラン中心に編成できても、ツアー主体のレギュラーバンドは経済的な面からも無名の若手が中心となって編成されていた。ウディーハーマンのオーケストラが素晴らしかったのは、そのようなメンバーで演奏しても昔からの譜面を繰り返し演奏するだけではなく、メンバーの中から新たなアレンジジャーを登用し、常に新しいレパートリー、アレンジを採用していたことにある。そのために、70年代はジャズロック風の演奏も良く行っていた。

このオーレックスでのステージではレギュラーオーケストラと、このOB4人が上手く組み合わされて演奏を繰り広げている。ハーマンのオーケストラの定番ともいえる懐かしい曲に加えて、チックコリアの曲なども交えて上手くミックスされ。そして、Rockin’ ChairではハーマンのボーカルにトランペットのGeoge Rabbaiがサッチモ張りの歌とトランペットを披露して、ライブ演奏のステージを沸かしている。

アレンジも、看板になるフォーブラザースは定番のジミージュフリーによるもの、さらにゲストに敬意を表してアルコーンがアレンジしたWoody’s Lament、フリップフィリップスがアレンジしたThe Clawでは4人がソロを繰り広げる。



更に、エリントンナンバーのPedidoは、現役のピアノのJohn Oddoがアレンジしたものを、OBのフリップフィリップスがソロをとるというような組み合わせもある。もちろん、看板替わりのフォーブラザースも演奏されたが、ここでのソロの取り回しはOBではなく現役メンバーで行われている。

このようにお互い同じ釜の食べた仲間同士、単に現役チームとOBチームに分かれるのではなく、うまくミックスチームを編成しそれぞれの得意技を披露し合うと一段と一体感のある演奏が聴けるように思う。

その時のライブ録音は日本では東芝からリリースされたが、当時、コンコルドは東芝と提携していた。東芝で制作した北村英治山本剛などの何枚かのアルバムがアメリカでもコンコルドレーベルを通じて発売されたが、このアルバムも日本のスタッフによる制作で、その一枚となった。
日米交流が盛んな頃のアルバムで、アメリカのファンも本国でも滅多に聴けないこのステージの演奏を興味津々で聴いたことであろう。

Al Cohn, Med Flory, Sal Nistico, Flip Phillips (ts)
Woody Herman (cl,as)
Bill Byrne, Mark Lewis, Brian O'Flaherty, George Rabbai, Scott Wagstaff (tp)
John Fedchock, Randy Hawes, Gene Smith (tb)
Jim Carroll, Paul McGinley, Frank Tiberi (ts)
Mike Brignola (bs)
John Oddo (p)
Dave Shapiro (b)
Dave Ratajczak (ds)

Produced by Yoichi Kikuchi
Recording Engineer : Yoshihisa Watanabe & Yutaka Tomioka
Recorded at Osaka Festival Hall, Osaka on September 3, 1982
   & at Tokyo Budo Kan, Tokyo on September September 2, 1982

Originally released on Concord CJ-240

World Class
クリエーター情報なし
Concord Records
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ペッパーアダムスの後継者、ニックブリグノラのバリトンソリストとしてのスタートは・・・

2015-05-09 | MY FAVORITE ALBUM
L.A.Bound / Nick Brignola

連休中はビッグバンドのライブ三昧であったが、ビッグバンドでついつい気になるのがバリトンサックス。大体いつものメンバーであったが、今回気になったのが、CUGジャズオーケストラの岩持芳宏。CUGオーケストラ自体のライブを聴くのが初めてであったが、この岩持さんのバリトンをじっくり聴くのも初めてだったが、なかなか素晴らしいプレーをしていた。
他のオーケストラでは小曽根真ノーネームホースのメンバーだが、このバンド自体オールスターメンバーで話題豊富なビッグバンドなので、正直このバンドでのバリトンサックスのプレーは特に印象が残っていなかったのだが・・・。

60年代の前半、ビッグバンドは低迷していた時代だ。そのような逆境の中でもいつも頑張っていたのがウディーハーマン、その時代の好きなアルバム「1964」というタイトルのアルバムがあるが、その時のメンバーでバリトンサックスを吹いていたのがニックブリグノラだ。この時のサックスセクションの主役はサルニスティコで、ブリグノラのバリトンは特段目立つ存在ではなかった。

このブリグノラは、ペッパーアダムス亡き後、数少ないバリトンサックスのソリストとして活躍していた。

このブリグノラがペッパーアダムスと共演したアルバムが「バリトンマッドネス」。このアルバムが生まれた顛末は依然記事に書いたが、ペッパーアダムスにとってはソリストとしてサドメルから独立した直後でやる気満々の時。この熱気をブリグノラも譲り受けたのか、このアルバムのドナリーの2人の白熱のプレーが聴き所だ。
ブリグノラはこのアルバムがきっかけでソリストとしての活躍に弾みがついたと言ってもいいだろう。

このアダムスとの共演が1977年の暮れ、翌年には自分のリーダーアルバム”New York Bound”を録音し、その直後に直着にハーマン時代の仲間であったテナーのサルニスティコをメンバーに迎えたアルバム”Neo”も作った。
ブリグノラの1936年生まれなので、この時すでに40歳を過ぎていた。ペッパーアダムスの後継者の一人でもあるが、アダムスとは6歳違い決して若手ではなかったが、これから彼の活躍が始まる。

翌年、今度は西海岸に飛んで、このアルバム”L.A.Bounce”を制作する。メンバーは地元で活躍していた中堅メンバー。ブリグノラはレギュラーグループではテッドカーソンと組むことが多かったが、ここではトロンバーンのビルワトラスとコンビを組んだ。
前作のニューヨークバウンドは、バリトンサックス以外に、フルートやソプラノサックスなど自分自身のマルチリードプレーヤーぶりを披露してくれたが、今回は基本的にバリトン一本で勝負。
それも、最初のQuickSilverから4曲アップテンポの曲が続き、ブリグノラのバリトンの大ブローが続けて聴ける。アダムスとは少し違った感じだが、このような演奏には良く似合う切れの良い音色だ。

次は一曲箸休めなのか、スローな曲”Spring Is Here”でのバラードプレーが聴ける。
これはピアノのディッカーソンの選曲だそうだが、その頃バックと良く務めていたアニタオデイのお気に入りの曲とのこと。そして、最後は再びアップテンポでケニードーハムのブルーボッサで締める。ここでは、途中でソプラノサックスに持ち替えるが、曲調にもあっていい感じだ。

バリトンサックス奏者にとって、ビッグバンドでのバリトンサックスは縁の下の力持ち的な存在だが、ここでは一転グループの中心となって他のメンバーをグイグイ引っ張っている。このアルバムで、ブリグノラはバリトンサックスのソリストとしての活動に一段と弾みがついたように思う。

このレコードのプロデューサーはロス在住の日本人妙中氏。先日紹介した、ペッパーアダムスのCalifornia Cookingの彼のプロデュースであったが、西海岸で渋いアルバムを数多くプロデュースしている。これも、その中の一枚だ。

1. Quicksilver                    Horace Silver 6:25
2. Smada              Duke Ellington / Billy Strayhorn 6:30
3. Groovin' on Uranus                 Nick Brignola 8:37
4. In a Mellow Tone           Duke Ellington / Milt Gabler 9:58
5. Spring Is Here           Lorenz Hart / Richard Rodgers 5:43
6. Blue Bossa                      Kenny Dorham 7:57

Nick Brignola (bs,ss)
Bill Watrous (tb)
Dwight Dickerson (p)
John Heard (b)
Dick Berk (ds)

Produced by John Brechler & Toshiya Taenaka
Recording Engineer : Jim Mooney
Recoeded at Sage & Sound Recording on October 17, 1979

L.A. Bound
クリエーター情報なし
Sea Breeze Records
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プロデューサーと看板スターを引き抜かれた後、すぐに補強した新人は・・・

2015-05-05 | PEPPER ADAMS
Giblet Gravy / George Benson

プロのスポーツチームが優勝するには、優秀な選手と、彼らの能力を最大限に引き出すことができ、勝つための術を身に付けた監督が必要だ。

音楽の世界では、プロデューサーとミュージシャンの関係になるが、ジャズの世界ではその昔はプロデューサーといってもプレーヤーの好きなように自由に演奏をさせるか、反対に自分の好みに合わせてプレーヤーに演奏させるか、極端にはこの2パターンで商売は2の次であった。要は勝つことを求められない監督のようなもので、レーベルといっても楽しく、いいプレーをするための同好会のようなものだった。

事実、いいアルバムを作りながら倒産の憂き目にあうレーベルは沢山あった。ブルーノートやプレスティッジといった老舗のレーベルといえども、必ずしも商売優先で売れるアルバムを作ることが目的ではなかった。ブルーノートのサイドワインダーのように、反対に思わぬヒットアルバムが生まれたが故に、それまでのようなアルバム作りができなくなったというのが現実であった。
その中で、商売の才覚のあったプロデューサーは、多くの人を集めるコンサートを企画するイベントプロデューサーとしても活躍していった。

ジャズが一般化すると、メジャーレーベルもジャズのラインナップを充実させるためにジャズの専門レーベルを傘下に収め、売れるアルバム作りに精を出すことになる。そのためのプロデューサーも必要とした。その結果、その功罪と程度は別として、コマーシャリズムに取り込まれたジャズが増えるということになる。

クリードテイラーというプロデューサーがいる。プロデューサーとして頭角を現したのがベツレヘムレコード、そしてabcでも着実に実績を上げ、インパルスレーベルを誕生させる。さあこれからという時にそれをボブシールに任せて、今度はノーマングランツが手放したVerveに移籍する。

そこで、スタンゲッツのボサノバアルバムを大ヒットさせ、売れるアルバム作りを実践した。まずは、ビルエバンス、ウェスモンゴメリー、ジミースミス、オスカーピーターソンなど有名ミュージシャンを次々と傘下に収める。勝つためには、昔の巨人のように、他球団のエース級を皆引き抜いたとうことだろう。他にも中堅、新人を問わず起用し、リリースされたアルバムは膨大だ。

売るためのアルバムにするため、大物同士の顔合わせ、あるいは大編成をバックにしたり、いわゆるヒット曲を素材に使ったり、手を替え品を替え売れるアルバム作りに邁進する。
確かにジャズファンの底辺は広がったが、反対にそれらのアルバムは硬派のジャズファンからはあまり支持を受けなくなった。

そのクリードテイラーが、1967年に今度は突然新興レーベルA&Mに移籍する。常勝監督がいきなりチームを去って、新興のチームに行くようなものだ。その時、Verveからウェスモンゴメリーを一緒に連れて行った。そして作ったアルバムがA Day In The Life。ドンセベスキーのストリングスを入れたバックで、思惑通りヒット作となり新たなCTIサウンドが誕生した。

ウェスを引き抜かれたVerveは、売れるギターアルバムを提供するにはウェスに代わるギタリストが必要だった。そこで、白羽の矢を立てたのがCBSからデビューしていたジョージベンソン。早速、ウェスモンゴメリーの穴埋めとなるアルバム制作を行った。

1968年2月。日本ではちょうど学生運動が活発な頃、安田講堂の騒乱が起った時だ。
テイラーの後を引き継いだプロデューサーのEsmond Edwardsは、どんなアルバムに仕上げるのか色々悩んだであろう。ウェス路線を続けるのか、それともベンソンの独自新路線を作り出すか?

出した結論は、大編成をバックにし、曲によってはバックコーラスも加え、ポピュラーな曲でウェスモンゴメリーの路線を踏襲した演奏と、ピアノトリオをバックにしたストレートアヘッドな演奏の2本立て。一枚のアルバムにこの2つのセッションが収められている。CBS時代のベンソンはオルガンを加えたソウルジャズの演奏スタイルであった。その良さも引き継ぎながら、まずはこのイメージから新しいスタイルへの脱却も必要だった。

トリオのメンバーはハービーハンコックのピアノ、ベースがロンカーター、そしてドラムがビリーコブハム。ハンコック&カーターのコンビは、ウェスモンゴメリーのA Day In The Lifeにも参加しているので、奇しくも同じコンビでウェスと張り合うという図式となった。
ベンソンはこの録音に先立ち古巣のCBSでマイルスデイビスのレコーディングに参加した直後であった。

ハンコックとカーターとはここで一緒だったが、そこはマイルスの世界での演奏。果たして、このアルバムで2人はどんなプレーをするか興味が湧くが・・・?。ベンソンのスタイルに合わせたのか、Low Dawn And Dirtyのハンコックの妙にブルージーなプレーが印象的だ。CD盤で追加された、Billy's Bounceの 演奏がベンソンもバックもベストプレーだろう。



このバックのアンサンブルのアレンジはトムマッキントッシュが行っているが、このアンサンブルは、トランペット3本に、バストロとバリサクという変則編成。ソロを際立たせるアクセント以上ではなかった。このメンバーにはペッパーアダムスが参加しているが、ジミースミスのアルバムに続いてのVerveの録音への参加になる。この頃の録音はオーバーダビングが増えてきたようにアダムスのメモには記されている。明記はされていないが、これももしかしたらそうかもしれない。

今では当たり前になったソロとバックを分けた録音もこの頃から一般的になったのも。自分のソロも無く、ソロとは別にバックだけ録音されるとなると、一体誰のアルバムに参加したのかの記憶も曖昧になのは止むを得ないものだ。

A&Mに移籍したウェスは3枚のアルバムを残して、この年1968年の6月に急逝してしまう。クリードテイラーはその後、A&Mで成功を収め、さらにそこからCTIレーベルとして独立する。ベンソンはVerveに続けて何枚かのアルバムを残し、今度はクリードテイラーの元でウェスの後継ともいえるアルバムを作る。

皆それぞれの人生での一場面であるが、ジョージベンソンにとってはこのアルバムがその後の大躍進のきっかけになったのは間違いない。

1. Along Comes Mary                  2:58
2. Sunny                       2:35
3. What's New?                    5:24
4. Giblet Gravy                    4:42
5. Walk On By                    3:21
6. Thunder Walk                   4:38
7. Sack Of Woe                    3:03
8. Groovin'                      2:40
9. Low Down And Dirty                8:28
10. Billie's Boounce
11. What's New? (alt. Take)
12. What's New? (alt Take)

George Benson (g)
Carl Lynch, Eric Gale (g)
Ernie Royal, Snookie Young, Jimmy Owens (tp,flh)
Alan Raph (btb)
Pepper Adams (bs)
Herbie Hancock (p)
Bob Cranshaw (b) (#2,4,5)
Ron Carter (b)
Billy Cobham (ds)
Johnny Pacheco (Congas, Tambourine)
Albertine Robinson, Eileen Gilbert, Lois Winter (vocals)

Arranged By Tom McIntosh
Producede by Esmond Edwards
Engineer – Val Valentin



Giblet Gravy
クリエーター情報なし
Polygram Records
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ラテン系は喰わず嫌いに加えて、パーカッションがリーダーとなったアルバムとなると・・・

2015-05-03 | CONCORD
Bien Sabroso! / Poncho sanchez

連休中のライブ通いも前半が終了したが、その中で珍しくラテンジャズが2つ。とはいっても所詮ビッグバンドではあるが。
以前も書いたとは思うが、自分はどうもラテン系は聴かず嫌い。別に嫌いという訳ではないが、今まで集中して聴いたことが無い。何事も凝り性な方なので一度興味を持つと、それなりに集中的に取り組むし、左脳人間でもあるので頭の中も理屈で整理できるのだが。どうもラテン系はそのきっかけが掴めず今まで来てしまった。

今回聴いたバンドは、まずは野口茜のManoural Banquet Orchestra。
野口茜は昨年、ゴードングッドウィンオーケストラのトランペット、ウィリームニヨが単身来日した時ゲスト参加したジョイントのライブを聴いたのが初めて。女性には珍しいラテンタッチのピアノが良かったので、ビッグバンドを聴くのが楽しみだった。やっと聴けたが、彼女のピアノだけでなくラテンビッグバンドだけあってリズム隊も充実、メンバーも若手中心で、大盛り上がりの楽しい演奏だった。

続いて、今度はベテランの深井克則率いるBANDA CALIENTE GRANDE BIG BAND。
こちらはベテラン中心で、流石に年季の入った演奏。
どちらもオリジナル曲&アレンジが多く、同じラテンビッグバンドといっても、それぞれ2人の個性を感じるオーケストラであった。
当たり前だがラテンジャズはリズムが命、パーカッションがどちらのバンドも素晴らしかった。いつもはトラッド系のバンドで活躍している渡辺恭一も、この日は強烈なリズムに乗って大ブローしていた。演奏する方もラテンジャズの楽しみはこの辺りにあるのかもしれない。

この強烈なラテンのリズムを生み出すにはパーカッションが命だが、このラテンパーカッション世界にも名手といわれる打楽器奏者が何人かいる。このポンチョサンチェスもその一人だろう。ジャズファンからすると、ドラムが誰かというのは気になるが、ついパーカッションというのはおまけのようにみなして、誰でも同じように感じてしまう。アルバムのメンバーもパーカッションは記憶に残らない。というのも、ドラムはそのドラミングに個性を感じるが、パーカッションは聴いただけでは、人の違いによる演奏の違いが自分には分からない。ラテンに関しては、リズムパターンも色々あってもその違いも良く分からないというタコ耳の持ち主だから仕方がないのかも。

さて、このサンチェスは、カルジェイダーのバンドに長く在籍したが、リーダーであるジェイダーの急逝により、そのバンドを引き継いだ形でコンコルドにアルバムを残した。前作のSonandoが初のリーダーアルバムであったが、これが2枚目になる。

このサンチェス、中南米出身の根っからのパーカッショニストという訳ではなく、アメリカ生まれのアメリカ育ち、パーカッションはカルジェイダーなどのレコードを聴きこんでリズム感とテクニックを独学で身に付けたという。そのハンディがある反面、ジャズもビバップを中心に良く聴きこんだそうだ。
それゆえ純粋なラテンバンドいうよりも、ラテンジャズグループには親和性が良いのかも。このアルバムでも、バリバリのラテンの曲というより、自作の曲に加えてケニードーハムのウナマスなどを演奏している。

フロントラインはトランペットのスティーブハフスターに加え、トロンボーンにマークレビンソンが。カルジェイダーのバンドではピアニストとして加わっていた。トロンボーンに転向しリーダーアルバムも作ったが、このアルバムでもトロンボーンで参加している。
ポンチョサンチェスのリーダーアルバムということもあるのだろう、管楽器のソロはあるがあまり前面には出てこない。きっとバンド全体のリズム感をどこまで出せるかが演奏の良否なのだろう。サンチェスもその後の活躍ぶりと比較するとリーダーとして一人歩きしたばかり。その後の熟練の技と果たしてどの位の違いがあるか聴き較べれてみたいものだ。

ライブもレコードもラテンづいているので、少し集中的に聴いてみようと思う。



1. Ahora                        Charlie Otwell 3:54
2. Bien Sabroso                     Poncho Sanchez 4:04
3. Nancy                            Don Garcia 4:39
4. Keeper of the Flame                    Mark Levine 5:39
5. Brisa                            Charlie Otwell 3:34
6. Sin Timbal                      Poncho Sanchez 4:08
7. Una Mas                         Kenny Dorham 4:09
8. Half and Half                          Paul Horn 3:17
9. Ican                               Eddie Cano 6:00

Poncho Sanchez (Congas)
Steve Huffsteter (tp,flh)
Mark Levine (btb)
Dick Mitchell (ts)
Charlie Otwell (p)
Tony Banda (b)
David Romero (Bongos)
Ramon Banda (Timbales)

Producede by Carl Jefferson
Recording Engineer Phil Edwards
Recorded at United Western Studios, Hollywood,Califprnia, November 1983

Originally released on Concord CPJ-239

Bien Sabroso
クリエーター情報なし
Concord Records
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

軽快なドラムをバックに有名アレンジャーの作品の品評会をライブで・・・

2015-05-01 | MY FAVORITE ALBUM
Big Band Jazz From The Summit / Louis Bellson

最近あまり行われないがマイクプライスのビッグバンドのライブを聴きに行くとエリントンの曲に加え西海岸のアレンジャーの作品を取り上げることが多い。彼が若い頃過ごしたバディーリッチやスタンケントンオーケストラは西海岸のアレンジャーの作品が多かった。日本に来る前には、西海岸で活動していたので地元の知り合いも多いようだ。

西海岸のアレンジャーというと、ビルホルマン、サムニスティコなどが有名だが、最近ではゴードングッドウィンなどもオーケストラを含めて人気があるようだ。
西海岸のアレンジャーが活躍し始めたのは、映画音楽の興隆と合わせて、ウェストコーストジャズの全盛期50年代に遡るが、ビルホルマンなどの長老達はそこの当時から活躍を続ける第一人者。当時は、他にもマティーペイチ、ショーティーロジャースなどスタンケントンやウディハーマンオーケストラ出身者がプレーだけでなくアレンジャーとしても大活躍していた。

ビッグバンドドラマーというとバディーリッチがすぐに思い浮かぶが、もう一方の雄はルイベルソンだと思う。歯切れの良いドラミングはビッグバンドだけでなく、コンボでの演奏でもメリハリの効いた絶妙なタイム感を持っている。好きなドラマーの一人だ。
このベルソンというと、エリントンオーケストラでのスキンディープが有名だ、他にもベイシーを始めとした有名オーケストラにも在籍したことがあるがいずれも看板にはなっても長続きはしなかったようだ。

やはり、根っからのビッグバンド好きで、自分のイメージもあったのだろう、自らのビッグバンドもよく編成していた。レコーディングだけでなく地元のクラブでのライブ演奏も積極的に行っていた。その時の様子は自分でレコーディングを手配することもあり、後になって世に出たものも多い。コンコルドレーベルにもベルソンのビッグバンドのアルバムは何枚かあるが、その中にもプライベートで作ったアルバムが再び陽の目を見たものがある

ケニークラーク&フランシーボランがヨーロッパで新たなビッグバンドを立ち上げたのが61年、この時、本家アメリカのビッグバンド事情は冬の時代を迎え、レギュラーオーケストラを維持していくのは名門といえども難しくなっていた。まして、新しいビッグバンドの登場も殆どなかった頃だ。

そんな状況の1962年、ルイベルソンはビッグバンド編成で、地元ロスのクラブ「ザ・サミット」に出演した。編成は、標準的なビッグバンド編成に加えてフレンチホルンとチューバが加わっているのが特徴だが、アレンジでもこれらが上手く使われている。
その時の演奏がライブレコーディングされルーレットレーベルからリリースされた。このバンドにはロスで活躍していたスタジオミュージシャンが参加し、コンテカンドリやジョーマイニといった実力あるソリストも加わっている。しかし、演奏自体はどちらかというと当時の西海岸で活躍して新進気鋭のアレンジャーの作品のお披露目の場といってもいいかもしれない。レコーディングエンジニアは、ライブ録音が得意なWally Heider、いい音とバランスで収録されている。

アルト奏者としても有名なベニーカーターもこの頃はアレンジャーとしての仕事も多かった。このカーターのアレンジが7曲、他にもマティーペイチ、ショーティーロジャース、ボブフローレンスなどの編曲が並ぶ。曲もウェストサイドストーリーからのクールを除けば、スタンダード曲ではなくオリジナル曲が並ぶ。とはいっても大作ではなく、どれもスインギーなベルソンのバンドにはお似合いの曲。短いソロを挟みながら、どれもアレンジャーの腕比べといった感じだ。最後の曲はベルソンのオリジナル曲だが、ベルソンはドラマーであっても作曲も得意だったようだが、ここではベルソンのドラムもフィーチャーされる。

所有盤はフレッシュサウンドのCDだが、この盤にはこのライブの余韻が残っている直後に行われたスタジオ録音の曲が8曲追加されている。それもお蔵入りしていた未発表録音。フレッシュサウンドのアルバムはこのようなファンの心理をくすぐる様な編集が多い。

こちらの編成は9人編成の大型コンボ。ライブの時のメンバーとの重複が多いが、トロンボーンのフランクソロリーノも参加して、ソリストが一段と充実している。編成だけでなく選曲も当時のジャズのヒット曲が並び、少し趣が違っていて面白い。

バディーリッチなど新しいビッグバンドが登場してくるのは60年代の後半。ビッグバンドの火を消さないように頑張っていた時代の演奏だ。

連休中は東京TUC新宿SOMEDAYで連日ビッグバンドのライブが続く。晴天が続くようだがゴルフは休みにしてライブ通いをしてみようと思う。

1. Who's Who
2. Cool
3. Amoroso
4. Prelude
5. Gumshoe
6. Blitzen
7. St. Louie
8. Moon Is Low
9. Doozy
10. Lou's Blues
11. With Bells On
12. The Diplomat Speak
13. Chop Chop Waltz
14. The Dipsy Doodle
15. Blowing The Blues
16. Opus De Funk
17. Cotton Tail
18. Walkin'
19. Moanin'
20. Don'cha Go ‘Way Mad - incomplete

#1〜12
John Andino ,Conte Candoli, Frank Huggins, Jimmie Zito, , Ray Triseari(1stnight), Uan Rasey(2nd night), Al Parcino(3rd night) (tp)
Mike Barone, Nick Di Mario (tb)
Ernie Tack (btb)
Bill Perkins, Carrington Visor (ts)
Joe Maini, Willie Green (as)
Teddy Lee (bs)
Art Maebe (fhr)
Red Callender (tuba)
Lou Levy (p)
Gene Estes (vibe,boo bams)
Tony Rizzi (g)
Jimmy Bond (b)
Louis Bellson (ds)

Arranged by
Benny Carter (#1,3,5,6,8,9 &10)
Mart Paich (#2,7)
George Williams (#4)
Shorty Rogers (#11)
Bob Frlorence (#12)

Produced by Teddy Reig
Recorded Live at The Summit, 6507 Sunset Blvd. Hollywood, Ca. January 22, 23 & 24 , 1962

#13〜20
Donte Candori (tp)
Jimmy Rito (tb)
Frank Rosolino (tb)
Joe Maini (as)
Carrington Visor (ts)
Bill Perkins (bs)
Lou Levy (p)
Jimmy Bond (b)
Louie Bellson (ds)

Arranged by Marty Paich
Recorded at United Recorders Studio, Hollywood, January 25 & 26, 1962
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする