A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

バックのアレンジャーが変わるとプレー振りも別人のように・・・・・

2007-07-21 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
Portuguese Soul / Jimmy Smith

ある時、人が突然変身することがある。
髪型を変えたり、洋服を変えたりするのは簡単にできるが、もって生まれた雰囲気はなかなか変わるものではない。
ところが付き合う人が変わったり、仕事が変わったりして、生活環境ががらりとかわると廻りの雰囲気に合ってくる。そして、何となく人格も変わってきたりする。
「いい女」になるためのひとつの条件が、「いい男」と付き合わなければならないという所以だ。

ジャズの世界でもプレーヤーが自分のプレーをに変化を持たせるために、あるいは進化させるため。メンバーを変えたり、プロデューサーが変わったり、レーベルを移ったりは日常的に行われる。
ところが、持って生まれたプレーの本質はそうそう大きく変わるものではない。
たまに、チックコリアのように2重人格者のように、自分の特徴の2つの側面を同時に出せるプレーヤーもいるが。

一方、アレンジャーの個性というのも、知らず知らずの内にカラーが決まってくる。
同じ曲でもプレーヤーによって解釈や演奏が変わるのと同じように、アレンジ一つで曲の雰囲気ががらりと変わる。ビッグバンド物の楽しさのひとつは、オーケストラとこのアレンジャーとの組み合わせの妙にもある。

というわけで、ソロプレーヤーが普段のコンボでの演奏ではなくオーケストラをバックにした演奏で、組み合わせの妙で意外性のあるアルバムが生まれることがある。

先日紹介したのは、ファンキーでソウルフルなプレーを売りとするJimmy Smithが、オリバーネルソンのアレンジをバックにしたアルバム
Smithの特徴をさらにオーケストラをバックに前面に押し出した作りになっている。

一方で、このアルバムはがらりと雰囲気が違う。
今回のアレンジを担当したのは、あのサド・メルのオーケストラのアレンジで活躍したサドジョーンズ。
オーケストラのメンバーのクレジットは無いが、聴いたとたんにこのサウンドは、サド・メルのオーケストラというのが分かる。
ちょうどこのアルバムが録音された1973年頃は、サド・メルのオーケストラも所属レーベルが替わったとき。それまで以上にサドジョーンズの作品を中心にアレンジに凝ったアルバム作りをしていた時期だ。

この一番尖がったアレンジをしていた時のサド・メルをバックにすると、さすがに個性豊かなSmithのプレーも変身せざるを得ない。
いつものギトギトした脂っこさを抑えて、口当たりがいいが繊細なソースに合わせた演奏になっている。

曲の素材も、Smithがヨーロッパツアーでポルトガルを訪れた時の印象を組曲風にしたものが中心。いつものような曲の選曲、構成とはがらりと嗜好を変えている。
スローなテンポでラテンのリズムに乗ったANDILOVE YOU SO。
これはサドジョーンズのアレンジの得意技。柔らかなホーンと、フルートを生かしたサックスセクションをバックに、軽快なSmithのプレーで始まる。
続く、Blapもスローなテンポの木管のハーモニーのイントロで始まりSmithのソロが始まるが、途中で、フラメンコ風のリズムを合図に、アップテンポのロック調に。
この8ビートもサドジョーンズの特徴ある音作り。
アレンジャーの音作りの特徴が明確に出てくる。
Smithのプレーを引き立たせるアレンジというよりは、凝ったアレンジの合間にSmithのプレーが散りばめられているという感じだ。

この手のアルバムは大体好き嫌いや評価が分かれるものだが、サド・メルファンの自分としては、スミスのアルバムというよりは、サド・メルがバックに回って(実際には前面に出ているが)、Smithのまた違った側面を引き出したアルバムとして楽しめる一枚だ。
Smithの変身ぶりを聴けるのはおまけとして。

1. AND I LOVE YOU SO
2. BLAP
3. OPENING : PROLOGUE
4. 1st MOVEMENT:PORTUGUESE SOUL
5. 2nd MOVEMENT:RITUAL
6. 3rd MOVEMENT : FAREWELL TO LISBON TOWN

Jimmy Smith (org)
Thad Jones & Mel Lewis Orchestra
Arranged by Thad Jones
Recorded at A&R Studio New York , February 8 , 9 1973

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ビバップの夜明けの時、Brown... | トップ | 新しいモダンな曲に取り組ん... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
B面まで聞いて (高橋)
2024-03-18 16:44:10
B面まで聞いてほしいですね。ギルエバンスかと思うくらいの攻撃的なサドジョーンズオーケストラの演奏。あおられまくるスミス。大迫力ですよ。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。