A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

バーサタイルという言葉は、ピーターアースキンのドラムにピッタリ・・・

2012-07-16 | MY FAVORITE ALBUM
Fire, Fury, and Fun / Stan Kenton Orchestra

スタンケントンのオーケストラの全盛期は40年代から50年代のはじめといわれている。そして、ウェストコーストで活躍したミュージシャンの多くが、そのケントンオーケストラの卒業生であった。という意味では、メルルイスやペッパーアダムスがそうであったように、ケントンオーケストラでのレギュラーメンバーの席は、一流になるための試金石であった。

先日、ボブミンツァーのビッグバンドが来日した。メルルイスのオーケストラにもアレンジを提供していた若手アレンジャーの一人であった。自己のオーケストラも率いていたが最近の演奏をあまり聴いていなかったせいか、どちらかというと演奏はフュージョン系の方が印象に残っている。
今回来日したメンバーの中に、ドラムのピーターアースキンの名前があった。ミンツァーとの付き合いは長いらしい。このアースキンもフュージョン系のグループ、そしてアルバムでは際立っていたが、ビッグバンドのドラムというとあまり印象には残っていなかったのだが・・・。
ブルノートでのライブを実際に聴き、一番印象に残ったのは、このアースキンのドラムであった。

自分の中ではビッグバンドのドラマーというとどうしても正統派のバディーリッチやルイベルソン、そして大編成の中でのコラボレーションの上手さという点でメルルイスなどを好んでしまう。
ところが、フュージョン、ロック系のドラマーであっても、ビッグバンドでのドラミングを個性豊かに実に上手く演奏するというというのを知ったのは、バディーリッチのメモリアルコンサートだった。ジャンルを問わず多くのドラマーが参集し、リッチのオーケストラの曲を次から次へとこなしていく姿を見て、そしてドラミングを聴いて認識を新たにした経験がある。そして、今回このアースキンのビッグバンドでのドラミングを生で聴いてその素晴らしさを再認識した次第だ。

経歴を見ると、このアースキンもスタンケントンオーケストラの出身であった。丁度参加していた時期は‘74年前後、ウェザーリポートなどで有名になる4年近く前であった。自分では記憶が無かったが、手持ちのアルバムを見てみると、確かにアースキンのクレジットがあるが、あまり気にもとめていなかった。

‘74というと自分が社会人になってすぐの頃。ジャズの世界ではフュージョンブームが起った頃だ。ビッグバンドの世界もバディーリッチやウディーハーマンのような老舗のオーケストラでもこの時代の流れの影響を受けて、スイングするというよりはリズミカルにパンチの効いた演奏が流行っていた頃だ。このケントンのアルバムもその時代の流れを感じさせる一枚だ。

アンサンブルの妙というよりは、ケントンのピアノだけでなく、若手メンバーのフルート、バリトンサックス、トロンボーン、コンガそしてアースキンのドラムをそれぞれ各曲でフューチャーしたアルバムだ。一曲目はバリトンサックスがスローにそしてブルージーに始まるが、途中でどんどんテンポが速まる。アースキンのドラムがキマッている。

B面の一曲目も、フルートがダーティーなトーンでアグレッシブなプレーで始まる。他にも全体にリズムに変化がある曲が続くが、アースキンは多様に変化するリズムに対してけっして荒っぽくなることなく実にスマートなプレーを聴かせてくれる。
この時アースキンはまだ20歳。ビッグバンドでの素晴らしいドラミングはこの頃からすでに披露されていたのを再認識した次第。

70年代になっても、実力派新人を輩出するケントンオーケストラは健在であった。



1. Roy's Blues           Dale Devoe 8:01
2. Montage             K. Hanna 5:55
3. Pete Is a Four-Letter Word    Hank Levy 4:22
4. Hogfat Blues           Tony Campise  4:46
5. Quiet Friday           Hank Levy    6:42
6. Ramon Lopez           C. O’Farrill   6:22

John Harner  Trumpet
Mike Barrowman Trumpet
Dave Zeagler  Trumpet
Tim Hagans  Trumpet
Kevin Jordan  Trumpet
Tony Campise  Reeds
Rich Condit  Reeds
Greg Smith  Reeds
Dan Salmasian  Reeds
Roy Reynolds  Reeds
Dick Shearer  Trombone
Greg Sorcsek  Trombone
Lloyd Spoon  Trombone
Mike Suter  Trombone
Dave Keim  Trombone
Ramon Lopez  Percussion
Stan Kenton  Piano
Mike Ross  Bass
Peter Erskine  Drums

Robert Curnow  Producer
Murray Allen  Engineer

Recorded at Universal Studio, Chicago, Illinois on September 26, 27, 1974


Fire Fury & Fun
Stan Kenton
Creative World
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サドメル創成期のメンバー、エディーダニエルスの初リーダーアルバムは・・・

2012-07-07 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
First Prise! / Eddie Daniels

今年もVJOが秋に来日するようだ。これで3年連続、これで年中行事になりそうだ。
今回の来日メンバーにディックオッツがいないと思ったら、何とこのオーケストラの前身であるサドメルオーケストラの初代メンバーのジェリーダジオンが加わって来日するそうだ。当時は存在感のあるジェロームリチャードソンの隣で多少影が薄かったが、このダジオンも素晴らしいアルトプレーヤーだ。久々にライブで聴けるのが楽しみだ。

サドメルの初代メンバーというと、長年第一線で活躍していたボブブルックマイヤーも他界し、両リーダーを含めて大部分のメンバーがすでに故人となっている。まだ活動を続けているのは、このジェリーダジオンに、ベースのリチャードデイビス、それにテナーのエディーダニエルス位だろう。

エディーダニエルスはジュリアードを出て、すぐのサドメルへの参加、新進気鋭の新人で最年少のメンバーだった。高校時代から実力は認められていたようで、ハイスクールのバンドで演奏している時ニューポートのユースオーケストラに選抜され、17歳の時でブルックリンミュージックカレッジに入ってクラリネットと教育を学んだ。
卒業後はハイスクールの音楽の教師になったが、一年後にはジュリアードに入ってさらに精進を重ねていた最中だった。

トニースコットのバンドの一員としてプロデビュー、ウィーンの国際ジャズコンペティションで優勝と、とんとん拍子で出世街道に乗っていた。サドメルに参加したのも丁度その頃だが、百戦錬磨のスタジオミュージシャンの集まりであったサドメルオーケストラで唯一実績の無い新人であった。何故抜擢されたか興味があるところだ。

サドメルのオーケストラのビレッジバンガードでのお披露目は66年の2月、スタジオのファーストアルバムの録音は4月であったが、そのどちらにも参加しているので、正真正銘の設立メンバーの一人だ。その年の9月にこのアルバムは制作されている。
タイトルから察するに、ウィーンのコンペティションの優勝記念のアルバムのようだ。
付き合っているリズムセクションは3人ともサドメルのメンバーなのでコンビネーションもいい。コンペティションで演奏された曲 ”Fallin' in Love with You”と、”How Deep is the ocean?”も収められている。

ボサノバのFeliciadeから始まるが、スタンゲッツライクなテナーだ。コンペティションで演奏された2曲もテナーのプレーだが、ソロからスタートしての盛り上げ方はデビュー間もない新人とは思えない。

有名になってからはテナーよりもクラリネット奏者として名を馳せたが、このデビューアルバムでも得意のクラリネットが存分に聴ける。クラリネットをオーバーダビングした2重奏があるが、これはトニースコットのバンドに加わった時の再演か?

サドメルでのプレーだけでなく、このファーストアルバムを聴き返してみても、後の活躍がすでに保証されたような演奏振りで、並みの新人のファーストアルバムではない。
今度はVJOに加わって、サドメルの同窓会に是非参加してプレーを聴かせて欲しいものだ。

1. Felicidade         Jobin 9:48
2. That Waltz         Daniels 6:56
3. Falling in Love with Love  Lorenz Hart / Richard Rodgers 4:40
4. Love's Long Journey     Daniels 2:05
5. Time Marches On       Daniels 4:05
6. The Spanish Flea      Julius Wechter    4:50
7. The Rocker         Daniels 3:37
8. How Deep Is the Ocean?   Irving Berlin 10:41


Eddie Daniels (ts,cl)
Roland Hanna (p)
Richard Davis (b)
Mel Lewis (ds)

Produced by Cal Lampley
Recorded in Englewood N.J. on September 8&12,1966
Engineer : Rudy Van Gelder

First Prize
Eddie Daniels
Ojc
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人生不調なときこそ、自然体で・・・

2012-07-05 | MY FAVORITE ALBUM
Hamp’s Piano / Hampton Hawes




最近、仕事もゴルフもそしてジャズを聴くのも今ひとつ気合が入らない。無理にやっても空回り。こんな時にはじっとしているのがいいのかもしれない。

人生良い時もあれば、悪いときもある。傍から見れば一生順風満帆に見える人でも、人生を振り返れば苦労をしていた時に次の展望が見えたということが多いようだ。
今でも現役生活を続ける秋吉敏子も、その自伝を見ると苦労の連続、そして苦労の中から常に新しい物が生まれたようだ。あの有名なビッグバンドも、西海岸に移り生活環境ががらりと変わり、演奏する機会も減った中で良き伴侶であるルータバキンのアドバイスがあったからだと。

秋吉敏子がジャズの世界に入って師と崇めたのがバドパウエルだった。渡米してからは直接生の演奏を聴くこともあったとは思うが、日本にいる時はパウエルのプレーを聴くのもレコードを通じてしかなかったはずだ。何事においてもそうであるように、本やメディアで見たり聴いたりすることと、生で身を持って体験することでは格段の違いがある。

敏子の修行時代、生の演奏を聴いて影響を受けたミュージシャンは多くいたと思うが、当時、敏子だけでなく日本のミュージシャンに大きな影響を与えたのが53年から55年まで2年間、日本に軍隊で駐留していたハンプトンホーズであった。朝鮮戦争の前後軍隊に入り日本や韓国を訪れたミュージシャンは多いがホーズもその一人であった。あのペッパーアダムスも韓国に駐留していた時期があったという。

兵役を終えたホーズが母国に戻り、本格的に活動をしたのは西海岸。敏子がボストンを拠点に東海岸で活躍を始めた頃、ホーズのプレーはウェストコーストジャズのメッカ、コンテンポラリーレーベルで多くの名作を残した。バードから発したビバップの流れを汲み、リズミカルにスイングする正統派のピアノは、光り輝くものであった。

順風満帆であったホーズであったが、他の多くのプレーヤー同様、麻薬によって演奏活動を中断せざるをえず、復帰までは長いブランクを要した。自由の身になれたのはケネディ大統領の恩赦だったという話しもある。途中で一時復帰したものの、病も癒えて本格的に復帰したのは’67年になってから。全盛期からは10年近くの年月が経っていた。’

67年に復帰したホーズは、妻を同伴して長い期間ヨーロッパを旅した。麻薬に手を染めた多くのミュージシャンがヨーロッパに渡り、そこで復帰のきっかけを掴めるのには何かアメリカとは違う音楽を受け入れる伝統と風土があるからだろう。

ヨーロッパを旅行中のホーズは11月にドイツを訪れた。そこで有名なプロデューサー、ヨヒアムベーレントのプロデュースの元一枚のアルバムを残していった。
付き合ったのは地元のミュージシャン。ベースのエベルハルトウェバーとドラムのクラウスワイス。ベースとのデュオとドラムを加えたトリオの演奏。

演奏は長いブランクを感じさせないほど生き生きとしている。そしてこのアルバムはMPSレーベル録音。ピアノの音が素晴らしい。当時のMPSの録音はアメリカの録音とは明らかに違う音がしていて新鮮な響きであった。

どん底の生活からは脱したものの、きっと大きな展望も無ければ意欲も無かったと思える時期の演奏。それに加えて旅先での気楽なセッション。オリジナルに加えてスタンダード曲も。きっとこのリラックスした環境がこの演奏を生んだのだと思う。
このホーズの復帰アルバムは自分も好きなアルバムの一枚だが、演奏だけでなくこのMPSのピアノの音を含めて自然体の魅力に惹かれているのかもしれない。調子が出ない今聴くのにぴったりだ。
人生不調な時こそ、あまり構えずに自然体に戻るのがいいのかもしれない。

1. Villingen Blues Hampton Hawes 4:42
2. Rhythm Hampton Hawes 2:23
3. Black Forest Blues Hampton Hawes 4:20
4. Autumn Leaves Joseph Kosma / Johnny Mercer / Jacques Prévert 9:05 
5. What Is This Thing Called Love? Cole Porter 5:15
6. Sonora Hampton Hawes 5:00
7. I'm All Smiles Michael Leonard / Herbert Martin 5:12
8. My Foolish Heart Ned Washington / Victor Young 6:42

Hampton Hawes (p)
Eberhard Weber (b)
Claus Weiss (ds)

Recorded at Villingen, Germaney on Nov. 8, 1967

ハンプス・ピアノ
Hampton Hawes
ユニバーサル ミュージック クラシック
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戦後の本場アメリカへのジャズ修行の第一号はTOSHIKO・・・・・

2012-07-01 | MY FAVORITE ALBUM
Many Sides of Toshiko / Toshiko Akiyoshi

宮嶋みぎわが作曲の勉強のためにアメリカに渡るそうだが、最近の若いプレーヤーはアメリカで学び、そして武者修行を経験してくるのが当たり前になっているようだ。音楽の世界もすっかり国際化され、腕前も本場のミュージシャンに負けない者が多く育っているのは嬉しいものだ。

ジャズのアメリカ留学はナベサダが有名だが、戦後の第一号は何と言っても秋吉敏子だろう。満州から引き上げ、クラシックピアノから見よう見まねでジャズの世界に入り、バークレーに留学のためアメリカに渡ったのは1956年1月だった。53年にJATPで来日したオスカーピーターソンに見出されて、ノーマングランツの元でレコーディングの機会も得てからはトントン拍子の出世だった。

ボストンでジョージウェインと付き合いがあったおかげで、57年のニューポートにも出演し、その年にはニューヨークデビューも果たしていた。地元ボストンやニューヨークのライブハウスだけでなく、シカゴのロンドンハウスなどへも出演していたようだ。
ロンドンハウスといえば、ピーターソンのライブアルバムで有名なところだが、ここはライブハウスとは言っても本来はステーキハウス。ちょっと高級なクラブであったらしい。したがって、演奏する曲もオリジナルやバップの曲というより、スタンダードな曲も求められたそうだ。

敏子といえば、バドパウエルの「そっくりさん」からがスタート。アメリカへ渡って直ぐも男勝りのパウエルスタイルの演奏が売りであった。しかし、仕事の幅が広がると曲だけでなく、演奏スタイルもだんだん洗練されてきた。
57年の秋、丁度ペッパーアダムスがニューヨークに帰還して再び東海岸で活動を始めたのと同じ時期。その頃の演奏が収められているのがこのアルバムだ。

ドラムは、晩年はすっかりコンコルドレーベルで有名になったジェイハナ。ボストン出身で、この頃はレコーディングだけでなく、ライブでも敏子と一緒に演奏することも多かったようだ。ベースも若手のジーンチェリコ。

タイトルのように発展途上の秋吉敏子のピアノプレーがスオリジナル中心にスタンダード、そしてグルービーなバグスグルーブ(最後までおなじみのメロディは出てこないが)までたっぷり楽しめる。トシズファンタジーはオリジナルな組曲だが、当時から作曲だけでなくオーケストラ用のアレンジも始めていたようだ。という意味では、その後の彼女の活躍のベースとなるようなアルバムだ。

1. The Man I Love    George Gershwin / Ira Gershwin  5:29
2. Minor Moods (Midnight Lament)  Ahmad Kharab Salim  4:18
3. After You've Gone  Henry Creamer / Turner Layton  3:27
4. We'll Be Together  Toshiko Akiyoshi  4:31
5. Studio J      Toshiko Akiyoshi  3:17
6. Tosh's Fantasy   Toshiko Akiyoshi  9:05
   Down a Mountain
   Phrygian Waterfall
   Running Stream
7. Bags' Groove    Milt Jackson    6:51
8. Imagination    Toshiko Akiyoshi   3:35

Toshiko Akiyoshi (p)
Eugene Cherico (b)
Jake Hanna (ds)

Recorded on October 4, 1957 in NYC

メニー・サイズ・オブ・トシコ
Toshiko Akiyoshi
ポリドール
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