Hot House Flowers / Wynton Marsalis
一昨日は雪交じりの雨、今日も午後から曇り空に。ゴルフどころか外に出掛ける気にもならず、一日家に籠っていた。家の中にいても、特段すぐに片付けなければならないこともなく、久々にのんびり過ごした2日間だった。昔は何もすることがないと却って落ち着かなかったものだが。人間怠け癖がつくと、なかなか元には戻れない、無理に忙しくする必要もないが、規則正しい生活は必要かもしれない。
このような一日は、何かしながら昔の事を思い出すには丁度いい。コンコルドのアルバム紹介が丁度1984年のアルバムに差し掛かったこともあって、古いスイングジャーナルなども引っ張り出し、何枚かレコードを聴きながら当時のジャズ界の状況を頭の中で整理するには好都合であった。
先日のアルバムにロンカーターが登場したこともあり、1984年にロンカーターが参加したアルバムも見直してみた。カーターの場合は毎年ジャンルを問わず多くのアルバム作りに参加していたので、その中に一枚くらいは自分が持っているアルバムもあるのではないかと思って。中に、この年話題になったアルバムが一枚、このマルサリスのアルバムだ。
日本盤のタイトルは「スターダスト」、マルサリスのwith stringsということでクリフォードブラウンとの対比を含め、話題のネタとなる要素がたくさん含まれている。マスサリス嫌いというジャズファンも多い中で、自分はマルサリスの熱狂的なファンという程でもないが嫌いではない。アルバムも知らず知らずの内に増えていた。まだ本格デビューから3,4年といった頃、マルサリスの中では初期のアルバムになる。
手元にスイングジャーナルがあると、その辺りの事情を具体的に辿るには丁度いい。ネットが万能といわれるが、このような時は雑誌を積んでパラパラめくりながら関連の記事を探すのが一番。ネットでピンポイント検索するのとは違って、直接マルサリスとは関係が無い記事、更にはオーディオの記事や広告まで同時に見ることができるのが有難い。しばらくすると、昔の雑誌の読み方、資料調べの感覚が戻ってきた。
さて、このアルバム、その年のスイングジャーナルのディスク大賞の銀賞に選ばれた。アメリカではグラミー賞でBest Jazz Instrumental Performance, Soloistを受賞している。これは、マルサリスにとって前年Think of Oneに続いて2年連続、さらにこの年はクラッシックでも同様のBest Classical Performance - Instrumental Soloistを受賞し、名実ともにジャズとクラシック双方のトランペット奏者の第一人者になった年だった。
スイングジャーナルの表紙にも登場し、マルサリスを含めて新伝承派と呼ばれた若手の特集も多かった。急成長して一気に頂点に登りつめた若者だったマルサリスを素直に称賛する声がある一方で、このように両刀使いで何でもできるのは、却って演奏技術に長けていても本物のジャズプレーヤーにはなれないといった辛口の意見も見受けられる。たしかに、技術的に上手いプレーヤーが味のある演奏をするとは限らないのがジャズなのだが。自分は、その後の活動を含めジャズの伝統に根差した演奏に拘るマルサリスが好きなのかもしれない。
久々に、このアルバムを聴き直してみた。日本盤のタイトルはスターダストだが、オリジナルはHot House Flower。「スターダスト」は明らかにクリフォードブラウンのアルバムを意識したネーミングだ。アルバムを売るには、この方が、遥かに効果がある。
一方のホットハウスフラワーは、唯一のマルサリスのオリジナル。この曲をアルバムタイトルにするにはそれなりの理由があったのだろう。
With String物は、基本的にバラード曲が並び、ソロ中心でストリングスはあくまでもバックの雰囲気づくりに一役買うということが多い。クリフォードブラウンのアルバムはまさにその通りだった。ところがこのアルバム、決してバラードばかりではない。最後の曲などはアップテンポ、ストリングスを交えたグループセッションといった感じだ。ちょうどCTIレーベルが登場したころから、ウェスのA day in the lifeに代表されるように、バックのストリングスの使い方も大きく変っていた。という点では、アレンジャーのスキルや感性も変化してきてきたということになる。
このアルバムのアレンジはBob Freedman、すぐには思い出せなかった名前だったが、昔はメイナードファーガソンのビッグバンドにアレンジを提供したこともある。その後も映画音楽や歌手リナホーンやハリーベラフォンテのバックオーケストラのアレンジなどを数多く手掛けていたようで、ここでもオーソドックスなアレンジもあれば、一味違うスリリングなアレンジも聴かせてくれる。バックというよりも、コラボという位置づけだ。やはり、このアルバムの評価は、マルサリスのトランペットだけでなくバックのアレンジ込みだろう。
クリフォードブラウンのアルバムは、最後がスターダストであった。これを受けたマルサリスは、スターダストからスタート、スタンダード曲を素材にオーケストラとのトランペット協奏曲をスタート、途中はマイルスとギルエバンスとのコラボの延長とも感じさせる。B面に移って、自分のオリジナルのタイトル曲で締め、最後はマルサリスが最も尊敬するといわれるアームストロングもよく演奏したI'm Confessin'でクロージングを迎えるという大組曲のようにも思える。
このアルバムのベースがロンカーターというのも気が付かなかったが、こうやって聴き返すと、マルサリスのソロとバックのオーケストラアレンジの橋渡し役であるリズムセクションの要として、カーターも意味あるキャスティングだったように思う。
この2日間で、当時のジャズ事情は大分記憶が整理された。コンコルド以外もこの頃の棚卸を続けてみよう。
1. Stardust Hoagy Carmichael / Mitchell Parish 4:07
2. Lazy Afternoon John Latouche / Jürg Morgenthaler / Jerome Moross 5:03
3. For All We Know J. Fred Coots / Sam M. Lewis 6:15
4. When You Wish Upon a Star Leigh Harline / Ned Washington 4:40
5. Django John Lewis 4:52
6. Melancholia Duke Ellington 5:09
7. Hot House Flowers Wynton Marsalis 5:46
8. I'm Confessin' (That I Love You) D. Daugherty / Al J. Neiburg / E. Reynolds 5:41
Wynton Marsalis (tp)
Branford Marsalis (ts,ss)
Kenny Kirkland (p)
Ron Carter (b)
Jeffrey Watts (ds)
Kent Jordan (afl)
& strings Orchestra
Produced by Steve Epstein
Arranged and Conducted by Robert Freedman
Recorded at RCA studio A, New York on May 30 & 31 1984
一昨日は雪交じりの雨、今日も午後から曇り空に。ゴルフどころか外に出掛ける気にもならず、一日家に籠っていた。家の中にいても、特段すぐに片付けなければならないこともなく、久々にのんびり過ごした2日間だった。昔は何もすることがないと却って落ち着かなかったものだが。人間怠け癖がつくと、なかなか元には戻れない、無理に忙しくする必要もないが、規則正しい生活は必要かもしれない。
このような一日は、何かしながら昔の事を思い出すには丁度いい。コンコルドのアルバム紹介が丁度1984年のアルバムに差し掛かったこともあって、古いスイングジャーナルなども引っ張り出し、何枚かレコードを聴きながら当時のジャズ界の状況を頭の中で整理するには好都合であった。
先日のアルバムにロンカーターが登場したこともあり、1984年にロンカーターが参加したアルバムも見直してみた。カーターの場合は毎年ジャンルを問わず多くのアルバム作りに参加していたので、その中に一枚くらいは自分が持っているアルバムもあるのではないかと思って。中に、この年話題になったアルバムが一枚、このマルサリスのアルバムだ。
日本盤のタイトルは「スターダスト」、マルサリスのwith stringsということでクリフォードブラウンとの対比を含め、話題のネタとなる要素がたくさん含まれている。マスサリス嫌いというジャズファンも多い中で、自分はマルサリスの熱狂的なファンという程でもないが嫌いではない。アルバムも知らず知らずの内に増えていた。まだ本格デビューから3,4年といった頃、マルサリスの中では初期のアルバムになる。
手元にスイングジャーナルがあると、その辺りの事情を具体的に辿るには丁度いい。ネットが万能といわれるが、このような時は雑誌を積んでパラパラめくりながら関連の記事を探すのが一番。ネットでピンポイント検索するのとは違って、直接マルサリスとは関係が無い記事、更にはオーディオの記事や広告まで同時に見ることができるのが有難い。しばらくすると、昔の雑誌の読み方、資料調べの感覚が戻ってきた。
さて、このアルバム、その年のスイングジャーナルのディスク大賞の銀賞に選ばれた。アメリカではグラミー賞でBest Jazz Instrumental Performance, Soloistを受賞している。これは、マルサリスにとって前年Think of Oneに続いて2年連続、さらにこの年はクラッシックでも同様のBest Classical Performance - Instrumental Soloistを受賞し、名実ともにジャズとクラシック双方のトランペット奏者の第一人者になった年だった。
スイングジャーナルの表紙にも登場し、マルサリスを含めて新伝承派と呼ばれた若手の特集も多かった。急成長して一気に頂点に登りつめた若者だったマルサリスを素直に称賛する声がある一方で、このように両刀使いで何でもできるのは、却って演奏技術に長けていても本物のジャズプレーヤーにはなれないといった辛口の意見も見受けられる。たしかに、技術的に上手いプレーヤーが味のある演奏をするとは限らないのがジャズなのだが。自分は、その後の活動を含めジャズの伝統に根差した演奏に拘るマルサリスが好きなのかもしれない。
久々に、このアルバムを聴き直してみた。日本盤のタイトルはスターダストだが、オリジナルはHot House Flower。「スターダスト」は明らかにクリフォードブラウンのアルバムを意識したネーミングだ。アルバムを売るには、この方が、遥かに効果がある。
一方のホットハウスフラワーは、唯一のマルサリスのオリジナル。この曲をアルバムタイトルにするにはそれなりの理由があったのだろう。
With String物は、基本的にバラード曲が並び、ソロ中心でストリングスはあくまでもバックの雰囲気づくりに一役買うということが多い。クリフォードブラウンのアルバムはまさにその通りだった。ところがこのアルバム、決してバラードばかりではない。最後の曲などはアップテンポ、ストリングスを交えたグループセッションといった感じだ。ちょうどCTIレーベルが登場したころから、ウェスのA day in the lifeに代表されるように、バックのストリングスの使い方も大きく変っていた。という点では、アレンジャーのスキルや感性も変化してきてきたということになる。
このアルバムのアレンジはBob Freedman、すぐには思い出せなかった名前だったが、昔はメイナードファーガソンのビッグバンドにアレンジを提供したこともある。その後も映画音楽や歌手リナホーンやハリーベラフォンテのバックオーケストラのアレンジなどを数多く手掛けていたようで、ここでもオーソドックスなアレンジもあれば、一味違うスリリングなアレンジも聴かせてくれる。バックというよりも、コラボという位置づけだ。やはり、このアルバムの評価は、マルサリスのトランペットだけでなくバックのアレンジ込みだろう。
クリフォードブラウンのアルバムは、最後がスターダストであった。これを受けたマルサリスは、スターダストからスタート、スタンダード曲を素材にオーケストラとのトランペット協奏曲をスタート、途中はマイルスとギルエバンスとのコラボの延長とも感じさせる。B面に移って、自分のオリジナルのタイトル曲で締め、最後はマルサリスが最も尊敬するといわれるアームストロングもよく演奏したI'm Confessin'でクロージングを迎えるという大組曲のようにも思える。
このアルバムのベースがロンカーターというのも気が付かなかったが、こうやって聴き返すと、マルサリスのソロとバックのオーケストラアレンジの橋渡し役であるリズムセクションの要として、カーターも意味あるキャスティングだったように思う。
この2日間で、当時のジャズ事情は大分記憶が整理された。コンコルド以外もこの頃の棚卸を続けてみよう。
1. Stardust Hoagy Carmichael / Mitchell Parish 4:07
2. Lazy Afternoon John Latouche / Jürg Morgenthaler / Jerome Moross 5:03
3. For All We Know J. Fred Coots / Sam M. Lewis 6:15
4. When You Wish Upon a Star Leigh Harline / Ned Washington 4:40
5. Django John Lewis 4:52
6. Melancholia Duke Ellington 5:09
7. Hot House Flowers Wynton Marsalis 5:46
8. I'm Confessin' (That I Love You) D. Daugherty / Al J. Neiburg / E. Reynolds 5:41
Wynton Marsalis (tp)
Branford Marsalis (ts,ss)
Kenny Kirkland (p)
Ron Carter (b)
Jeffrey Watts (ds)
Kent Jordan (afl)
& strings Orchestra
Produced by Steve Epstein
Arranged and Conducted by Robert Freedman
Recorded at RCA studio A, New York on May 30 & 31 1984
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