A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ミシェルカミロのデビュー作と思っていたが、色々な顔を持つアルバムだった・・・

2015-06-28 | MY FAVORITE ALBUM
French Toast / French Toast

アルバムとの出会いは人それぞれ、人によってそのアルバムに対しての印象や思い入れは異なるものだ。

しばらく前に、サドメル&VJOのレパートリーだけを演奏するメイクミースマイルオーケストラのライブに行った。今年のライブのお題は「20周年」。このオーケストラの設立20周年記念ということであった。そして、その日のプログラムはこのグループの範とするメルルイスオーケストラの”20 Years at the Village Vanguard”のアルバムに収められている全曲であった。なかなか洒落っ気のあるプログラム構成であった。



演奏の途中のMCの中で、その日のプログラムの元となったメルルイスオーケストラのアルバムのジャケットが紹介された。そして、次に登場したジャケットが、この“French Toast”のジャケットであった。一瞬、何でその場で紹介されたのか意味が分からなかったが、話を聞くとこのアルバムに収められている”Butter”という曲が、ジェリーダジオンの作曲で、このメルルイスオーケストラのアルバムにも収められているということであった。

このメルルイスのアルバムは1985年の録音、そしてフレンチトーストの録音は前年の1984年の録音。フレンチトーストの方が先に世に出ていたということになる。そして、このフレンチトーストにはジェリーダジオン本人も加わっていた。

サドメルのコアメンバーであったジェリーダジオンだが、サドメルのレパートリーでダジオンの作編曲は決して多くはない。サドメルファンとすれば、珍しいダジオンの曲のお披露目の場としてこのアルバム「フレンチトースト」が印象に残ったのであろう。

さて、自分にとって、このフレンチトーストというアルバムは?というと、ピアノで参加しているミシェルカミロのデビューアルバムとしての印象の方が強い。自分自身もサドメルファンでありながら、このアルバムにジェリーダジオンが参加していたのも忘れていたくらいだ。

当時のカミロ写真を見ると実に若い、まだ30歳になったばかり。ドミニカ出身のカミロがニューヨークに来たのが1979年。ジュリアードで学びプロとしての活動を始めた頃だ。この演奏を聴き返しても、ラテンの血とクラシックに裏打ちされたテクニックは今のカミロを予見させるような個性を感じさせる。

後に、カミロのトリオのメンバーとなった、ベースのアンソニージャクソン、ドラムのデビッドウェックルもこの頃から一緒に演奏していた仲間であったことが分かる。

そしてカミロの名曲Why Not?が収められているが、マンハッタントランスファーであり、このアルバムであり、カミロ自身の同名アルバムの前にすでに曲としても有名になっていた。演奏だけでなく、共演メンバー、そして曲ともにカミロのデビューアルバムとして相応しい内容だ。

このアルバムはそもそもフレンチホルンのピーターゴードンがリーダー格を務めるグループのアルバムであった。ギルエバンオーケストラのメンバーであったゴードンがメンバー仲間のルーソロフなどに加え、当時のニューヨークの若手(後の大物)達を集めて、グループとしては5年近く活動をしていた。当時は無名であったが実力あるメンバー達が地道に行っていた演奏をアルバムに残したのには感心する。

内容は、フュージョンであり、ラテン調であり、そしてコンベンショナルなジャズの要素も取り入れ、まさにクロスオーバーの極みといった内容だ。見方、聴き方によって色々な顔を持つアルバムだ。
そして、このアルバムを制作したのは日本のレーベル「エレクトリックバード」。日本が元気であった頃の置き土産がこんな所にもあったのを久々に聴き返して再認識した次第。
グループ自体は、この一枚で解散。メンバーはそれぞれの道を歩むことになるが、何か時代の節目を感じるアルバムだ。

1. Why Not?                    Michel Camilo  5:46
2. Joe Cool                     Rod Mounsey 6:42
3. Ion You                     Peter Gordon 9:11
4. B.A. Express                 Carlos Franzetti 6:24
5. Butter (Tribute to Quentin Jackson)        Jerry Dodgion 6:52
6. Calentado Man                   Michel Camilo 9;04

Peter Gordon (fhr)
Lew Soloff (tp)
Jerry Dodgion (as)
Michel Camilo (p)
Anthony Jackson (b)
David Weckl (ds)
Stev Gadd (ds) #3,4

Arranged by Michel Camilo #1,6 Peter Gordon #2,3,Jerry Dodgion #5,Carlos Franzetti #4
Produced by Shigeyuki Kawashima
Engineer : Bill Sheniman
Recorded at Skyline Studio, N.Y. on April 7,8 &9,1984


フレンチ・トースト
クリエーター情報なし
キングレコード
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今回はアレンジだけの付き合いだったが、翌年には仲良くコンビを組んで・・・

2015-06-20 | MY FAVORITE ALBUM
Brass Shout / Art Farmer Tentet

アートファーマーとベニーゴルソンのコンビというとジャズテットで有名だ。
トロンボーンは途中で替わったが、この2人のコンビは最後まで変る事はなかった。58年9月録音のアルバム”Modern Art”での2人のコンビは演奏もアレンジも絶妙だった。2人の本当の出会いがいつかは知らないが、このアルバムが2人のコンビのスタートいってもいいだろう。

当時のアートファーマーは、ジェリーマリガンのグループに加わり、レコーディングではソニークラークの名盤”Cool Struttin’”にも参加し、大編成の録音にも引く手あまたであった。誰とやってもファーマーの特徴である柔らかいサウンドが良くマッチする物が多い。

一方のゴルソンはこの頃カーティスフラーとよく一緒に演奏していた。2人のコンビで有名なアルバム”Blue’s Ette”が59年5月の録音、それに続いて8月、11月の”Imagination”と立て続けにアルバムを作っていた。「ブルースエット」こそクインテット編成だが、後の2枚はそれぞれリーモーガン、サドジョーンズとトランペットを加え3管編成であった。特に、8月のアルバムは、カーティスフラージャズテットとグループ名共どもとジャズテットの原型は実はカーティスフラー主導で作られていた。

59年にゴルソンがフラーとべったり付き合う前の59年4月、ファーマーとゴルソンが残したもう一枚のアルバムがこれになる。
ここではゴルソンはアレンジに徹して、プレーには参加していない。というのも、アルバムタイトルからも想像続くが、このアルバムは主役のアートファーマーに加え、バックはブラスアンサンブルで、たとえ吹きたくともサックスの出番は無かった。

ブラスアンサンブル自体が珍しいが、ここではチューバーやホルンなどジャズではあまり使われない管楽器を加えている。ブラスといっても金管の煌びやかな感じを活かすというより、中低音を活かした重厚な丸みを帯びたサウンドに仕上がっている。
これが、アートファーマーのトランペットに実に良く合う。トランペットのハイノートの輝きをアンサンブルで盛り立てるとことは良くあるが、今回は逆のコンセプトで、ファーマーの中音域のトランペットをうまく浮き彫りにしている。

さらに、このアルバムの良さは曲の選曲にもある。ジャズのスタンダード曲には、いわゆる昔の歌物を素材としたスタンダード曲があるが、モダンジャズの演奏から生まれたスタンダードとなった名曲も多くある。多くはビバップ時代から、この50年代の後半に作られた曲が多い。

これらのスタンダード曲は、今でもアルバム作りの時にファンサービス(客寄せ)のために演奏されることは多い。このアルバムでは、モーニンやニカズドリームといった出来立てのホヤホヤのジャズの名曲をブラスアンサンブルに仕立て直している。ゴルソンの名曲ファイブスポットアフターダークも収められているが、この曲に至っては「ブルースエット」の録音前に、このアルバムで披露されていたことになる。



アンサンブルに加わっているメンバーも一流処が揃っているが、フラーやワドキンスなどのソロも聴ける、なかなか豪勢なアルバムとなっている。やはりメジャーレーベルのなせる業かもしれない。

1960年になってジャズテットの初アルバムが作られたが、ここではトランペットにアートファーマーが選ばれる。そして、フラーがつけたジャズテットのグループ名称も引き継いだことになる。
ゴルソンは、フラーと共にグループに招くトランぺッター色々試したものの、結局モダンアートで一緒に演奏したファーマーとの相性が一番よかったのだろう。というより、ファーマーを生涯の伴侶として選んだのかもしれない。

と、考えるとこのアルバムは、ファーマーに対してゴルソンのプロポーズの意味も含まれていたのかもしれない。同郷のモーガン、同じように作編曲も得意なサドジョーンズと色々付き合ってみたが、最後はファーマーに収まってめでたしめでたし。

1. Nica’s Dream
2. Autumn Leaves
3. Moanin’
4. April In Paris
5. Five Spot Afrer Dark
6. Stella By Starlight
7. Minor Vamp

Art Farmer, Lee Morgan, Ernie Royal (tp)
Wayne Andre, Jimmy Cleveland, Curtis Fuller (tb)
Julius Watkins (French horn)
Don Butterfield (tuba)
James Haughton (baritone horn)
Bobby Timmons (p) only #3
Percy Heath (b)
Philly Joe Jones (ds) #3,4,5,7
Elvin Jones (ds) #1,2,6

Arranged by Benny Golson
Produced by Tom Wilson
Recording Engineer : Lew Merritt

Recorded at Nola Penthouse Sound Studio, NYC, May 14, 1959

ブラス・シャウト
クリエーター情報なし
EMIミュージックジャパン
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色々新しいことにもチャレンジしたが、やはりビバップオリエンテッドな演奏で・・・・

2015-06-19 | CONCORD
Bebop and Beyond / Mel Martin

コンコルドレーベルの発祥の地は、その名の通りコンコルドであった。サンフランシスコのダウンタウンから東へ湾を渡り小一時間、オークランドを通ってその先にある郊外のベッドタウンである。デイブブルーベックの出身地であるが、地元のカーディーラーであったカールジェファーソンが町の名前をそのままレーベルにしたものだ。
同じ西海岸、そしてカリフォルニアといっても、サンフランシスコはロスやハリウッドとは気候や産業も全く異なり、違う雰囲気の場所だ。

西海岸のジャズというとロス&ハリウッド周辺が中心だが、ベイエリアといわれるこの地域で活動するジャズミュージシャン達もいる。スタジオワークが中心のロスとは違って、この地域は純粋にジャズをやりながら、作編曲やスタジオワーク、そして教育者でもあるミュージシャンが多い。
気候の違いと同様、ロス中心のカラッと晴れた感じのウェストコーストサウンドとは違うサウンドを聴かせてくれる。

そのベイエリアのミュージシャンの一人にメルマーティンというサックス奏者がいる。サンフランシスコを拠点として活動を続けてきた。1980年代になってジャズ界でフュージョン色が強くなった時、流行のフュージョンのバンドを作りレコーディングも行った。
しかし、その後思う所があったのか地元の仲間達とストレートアヘッドなグループを新たに編成した。当時本人自体は無名に近かったが、他に参加したメンバーの中ではアルトのジョンハンディ、そしてピアノのジョージケイブルスが全国区のプレーヤーであった。

バンドの名前は、Bebop and Beyond。その名の通り、ビバップに根差したメインストリームジャズを演奏するグループであった。確かに時期的にはフュージョンブームの真最中であったが、同時にメインストリーマーが復帰をしていた時でもあった。

このメルマーティンはこの時すでに40歳を過ぎており、新人というよりはすでにベテランの域に達していた。他のメンバーも若い頃にはハードバップを経験した皆同じ年恰好である。時代の流れに合わせて色々やったが、自分がジャズをやり始めた時の演奏に再チャレンジすることになった。

そして、この新しくできたグループにアルバム制作の機会を与えたのが地元のコンコルドレーベルであった。丁度この所ミュージシャン自らプロデュースしたアルバムが続くが、これもその一枚となった。御大のジェファーソン以下、レコーディングエンジニアやスタジオもお馴染みのいつものスタッフが参加せず、すべてマーティンにお任せのレコーディングとなった。

曲はマーティンの他にメンバー達の自作曲もあるが、タッドダメロンのOn A Misty Night、そしてモンクのEvidence, Monk’s Moodも加えている。その辺りがグループの名前にBebopを入れている所以であろう。この前紹介したバリーハリスのアルバム同様、グループのスタイルが根差している所は「ここだ」ということをはっきりさせたかったのかもしれない。

マーティンがライナーノーツで語っているように、「皆が今までの長い演奏経験を最大限に生かした吹っ切れた演奏ができた」というのも、軸足をビバップに置いて心置きなく演奏できたことの成果のような気がする。

演奏自体はフュージョンの雰囲気を微塵も感じさせないストレートアヘッドな演奏だ。グループとしてその後のアルバムは聴いていないが、モンクの曲集とか、ディージーガレスピーの曲集などが続いた。ガレスピー曲集ではゲストにガレスピー本人を招いたアルバムも招いてビバップの再演色を濃くしていた。あまり過去を意識しすぎると今度は「飛んだ演奏」ができなくなってしまうのが世の常なのでバランスが難しい。



このグループは、メンバーは変っても比較的最近まで活動していたグループのようだ。そしてマーティンは最近ではベニーカータートリビュートバンドを率いているようだが、マーティンにとっては、ここでの演奏が80年代以上の活動のベースとなったグループであり演奏スタイルだ。そして、このアルバムがローカルで活動するミュージシャンのお披露目の場であったことは間違いない。。

1. Longhorn               Mel Martin 7:55
2. On A Misty Night         Tadd Dameron 5;24
3. Moon Magic             Frank Tusa 6:41
4. Super Trooper          Eddie Marshall 4;25
5. Evidence            Thelonious Monk 8:30
6. Monk’s Mood          Thelonious Monk 5:21
7. One For All            Mel Martin 8:38

Warren Gale (tp,flh)
John Handy (as)
Mel Martin (ts)
George Cables (p)
Frank Tusa (b)
Eddie Marshall (ds)

Produced by Mel Martin
Recordhing Engineer : Robin Yeager
Recorded at Tres Virgos Studio, San Rafael, California, February 1984
Originally released on Concord CJ-244
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世の中変化が多く目移りする時こそ、王道を行く演奏が光る・・・

2015-06-17 | PEPPER ADAMS


Bull’s Eye’s / Barry Harris

ディーディーブリッジウォーターはジャズの伝統をスタンダード曲と過去の巨匠達の歌唱力の中に探し求めたようだが、ジャズの伝統というとビバップもその要素の一つだろう。
時代と共に変遷を遂げてきたジャズだが、このビバップはいつの時代にもそれを探求するミュージシャンは存在し続けている。今でも、ビーバップオリエンテッドな演奏をするグループは世界中にいくつも存在する。日本でも、澤田一範や村田浩のグループなどが有名だが、そのプレーを聴くと、やはりビバップでありハードバックがモダンジャズサウンドの原点という感じがする。

1968年、この頃はジャズの変革期であった。前年に亡くなったコルトレーンの後を継ぐのは誰か?モーダルなプレーを極めようと、新人もベテランも入り混じって群雄割拠していた時代だ。さらに前衛的な演奏があるかと思えば、ジャズロック風の演奏も流行だし、メジャーレーベルではコマーシャリズムに乗ったアルバムも多く作られた時代だ。

たまたまペッパーアダムスの足跡を追ってこの時代のアルバムを聴き返すこととなったが、このアルバムはこの時代の演奏だから貴重ともいえる。もし、10年前の録音であれば周りで聴かれる演奏と大きく違ったものではなかった。しかし、この1968年ではこの正統派のハードバップのサウンドは珍しかった。
この年のアダムスのレコーディングを時系列で聴いても、サドメルに参加し、ジミースミスジョージベンソンのバックのオーケストラに参加する日々が続き、いきなり正統派ハードバップの演奏というのは珍しく、他には見当たらない。

アダムスはこのバリーハリスとは同じデトロイト出身の仲という事もあり、前作の“Luminescence!”にも参加していた。ハリスにとってはプレスティッジでの初アルバムであったが、プロデューサーのドンシュリッテンは次のアルバムをすぐにでも作りたかったようだ。毎月のようにハリスにお伺いを立てるが、答えは「まだだけどじきに」であった。シュリッテンの辛抱強い誘いに応えて、前作から1年以上経ってやっとハリスがその気になって作られたアルバムがこのアルバムとなる。

前作とメンバーはがらりと変わり、トランペットにケニードーハム、テナーにはいつもはアルトを吹くチャールスマクファーソンが加わる。ベースには、デトロイト仲間のポールチェンバース、ドラムにはビリーヒギンス。前作よりは何となくしっくりくる感じだが、実際に演奏の方もこちらの方がいいと思う。

作編曲も得意なハリスなので基本はオリジナル曲だが、唯一モンクの曲オフマイナーを加えている。この曲はトリオでの演奏だが、モンクを意識したのかオリジナルでもOff Monkというモンクに因んだ曲をやっている。ピアノのプレーぶりも自然にモンク調になる。バドパウエルの影響を引き継ぐハリスだが、バップの伝承者としては、モンクの影響も当然受けていての不思議ではない。

この頃のアダムスはアルバムでは裏方が多く、ソロがあっても不完全燃焼であったが、久々にアダムスらしい豪快で流暢なプレーが聴ける。タンゴのリズムでラテン調の少し変わった感じのBarengoでもアダムスのソロはいい感じだ

この、アルバム録音の2か月後にアダムスはサドメルに加わって初来日することになる。比較的単調なサイクルで仕事をこなしていたアダムスだが、色々変化が始まる1968年6月であった。



1. Bull's Eye 7:08
2. Clockwise 4:46
3. Off Monk 9:52
4. Barengo 7:10
5. Off Minor (Thelonious Monk) 4:40
6. Oh So Basal 8:51

Barry Harris (p)
Kenny Dorham (tp) ( 1, 3, 4 & 6)
Charles McPherson (ts) (1, 3, 4 & 6)
Pepper Adams (bs) (1, 3, 4 & 6)
Paul Chambers (b)
Billy Higgins (ds)

Produced by Don Schlitten
Recording Engineer : Richard Alderson
Recorded in New York on June 4, 1968

Bull's Eye!
クリエーター情報なし
Ojc
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伝統を守るのはやはりスタンダード曲で・・・・

2015-06-15 | MY FAVORITE ALBUM
Keeping Tradition. / Dee Dee Bridgewater

ペッパーアダムスはソリストとして独立してからはオリジナル曲に拘った。特に、自らがリーダーとなったアルバムでは。しかし、日頃のgigではもちろんスタンダード曲をやることもあっただろう。特に日頃一緒に演奏していないメンバーとのジャムセッションとなるとまずはスタンダード曲となるが普通だ。

一方で、聴き手の方でも、スタンダード曲がいいか、オリジナルがいいかは永遠のテーマのような気がする。演奏するミュージシャンによっても違うし、聴くシチュエーションによっても違うので。知らない曲ばかりの中で、知った曲が出てくるとホッとするのもスタンダード曲の効用だろう。

昨年2度も来日して貫禄を見せつけてくれたディーディーブリッジウォーターの本格的なデビューはサドメルのオーケストラであった。当時サドメルのメンバーであったトランペットのセシルブリッジウォーター婦人であったので、専属歌手というより「おまけ」といった感じであった。サドメルの2度目の来日の時にもオーケストラに帯同して、アルバム「アフロブルー」を残していった。これが彼女の初アルバムとなった。

その後は、ミュージカルに出演し、フュージョン系のアルバムを何枚か出したが、ジャズシンガーというよりも、ソウル系の歌手といった感じであった。アメリカでは鳴かず飛ばずであったか、やりたいことができなかったのか?80年代に入ると心機一転フランスに活動の場を移した。アメリカで行き詰るとヨーロッパに渡るジャズミュージシャンは昔から多かったが、彼女もその一人であった。

フランスでの生活も10年近くになった1992年に作られたのがこのアルバム。ジャズ歌手だけでなく色々チャレンジした成果を生かし、ピアノトリオをバックに再びジャズに真正面から取り組んだものとなった。

自らプロデュースし、タイトルも“Keeping Tradition”。ジャズの伝統を守るということだろう、選んだ曲も過去に幾多の名唱が残されているスタンダード曲ばかり。その中で、2曲ホレスシルバーの曲があるが、彼女はデビューした時からシルバーの曲が好きだと明言していたので、ここでも選んだのであろう。
やはり、ジャズの伝統をどのように表現するにしても、素材はスタンダード曲がいいように思う。

バックは、地元のフランスのミュージシャン達だが、彼女が伝統回帰を図ったのに合わせて実にピッタリなプレーでサポートしている。ヨーロッパはアメリカよりは伝統を重んじるお国柄。ジャズでも前衛的な演奏に理解を示す反面、トラディショナルジャズも根強い人気があると聴く。ここでは、彼女に合わせて正統派だが、多少新しさを付け加えて伝統に根差した演奏だ。
その後、ブリッジウォーターはエラやビリーホリデートリビュートのアルバムを作るが、それに向けてのトライアル&ウォーミングアップを兼ねたアルバムといってもいいだろう。



1. Just One Of Those Things
2. Fascinating Rhythm
3. The Island
4. Angel Eyes
5. What Is This Thing Called Love?
6. Les Feuilles Mortes (Autumn Leaves)
7. I'm A Fool To Want You/I Fall In Love Too Easily
8. Lullaby Of Birdland
9. What A Little Moonlight Can Do
10. Love Vibrations
11. Polka Dots And Moonbeams (Around A Pug-Nosed Dream)
12. Sister Sadie

Dee Dee Bridgwater (vol)
Thierry Ellez (p)
Hein Van De Geyn (b)
Andre Ceccarelli (ds)

Produced by Dee Dee Bridgewater
Recording engineer : Pierre Jacquot
Recorded on December 8, 9 and 10, 1992 at Plus XXX Studio Pans France

Keeping Tradition (Reis)
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Emarcy / Umgd
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アル&ズートのコンビとブルース歌手との組み合わせは少し意外だが・・・

2015-06-14 | MY FAVORITE ALBUM
The Scene / Jimmy Rushing, Zoot Sims & Al Cohn

ライブに行くとアルバムではなかなか聴けない演奏が聴ける。ライブならではのハップニング的な演奏もあれば、思わぬ組み合わせが実現ということも。ジャズならではの楽しみだが、それは今も昔も多分同じであろう。

過去の夢の共演もアルバムになっていないと聴く事が出来ないというのが世間相場であったが、最近では昔のライブの演奏が発掘されアルバムになったりYouTubeで紹介されたりして陽の目を見ることも多い。このアルバムもそのような一枚だ。

テナーバトルのコンビといえば、アル&ズートが有名。アルバムだけではなく、当時はライブ活動も積極的にしていたようだ。その模様を収めた”Jazz Alive / A Night At The Half Note”も有名なアルバムだ。ここではフィルウッズの参加というおまけもついているが、ライブならではの楽しさを味あわせてくれるアルバムだ。

ブルース歌手に、ジミーラッシングという歌手がいる。ベイシーオーケストラの専属歌手として名を成したが、その後もスイング系のミュージシャンとの共演が多い。彼のニックネームは5x5、背が低くて超肥満、縦横(胴囲)5フィートという意味だ。この巨漢から生み出される歌声はブルースその物だが、バリバリのブルース歌手というよりジャズマンとの関わりが強い。少し毛色が違うように思うベニーグッドマンやデイブブルーベックなどとも共演しているが、意外としっくりくる。64年外タレの来日ラッシュのときには、エディコンドンのグループと一緒に来日している

そんなジミーラッシングとアル&ズートのコンビも共演している。ラッシングのラストアルバムにも2人が加わっているので付き合いは深かった。このアルバムもたまたま一緒にというではなく、それまでも良く一緒にクラブ出演をしていたようだ。

そのライブの演奏のアルバムがある。1965年、ニューヨークのクラブでのライブという以外詳細はアルバムにも記されていないが、71年に亡くなったラッシングの晩年の歌声だ。先日紹介したアルバム"Every Day I Have The Blues"が1968年の録音なので、その少し前という事になる。

バックが誰に替わろうともラッシングの歌声が変ることはない。反対にバックのプレーの方がラッシングに歌に引っ張られる。もっともブルースはジャズの一要素。洗練された白人バンドであっても、ブルースを演奏するには彼のような歌手とのコラボを望んだのかもしれない。ここでも、2人のテナーがいつになくブルージーだ。このアルバムもアル&ズートの演奏にゲストで参加しているというよりは、ラッシングのステージでアル&ズートのコンビがバックを務めている間に自然にステージ全体がラッシングの雰囲気に包まれるといった感じだ。



1. Deed I Do
2. Gee Baby Ain't I Good to You?
3. I Can't Believe that You're in Love with Me
4. I Want a Little Girl
5. The Red Door
6. Goin' to Chicago
7. I Cried for You
8. Everyday I Have the Blues
9. It's Noteworthy
10. Good Morning Blues

Jimmy Rushing (vol)
Zoot Sims (ts)
Al Cohn (ts)
Dave Frishberg (p)
Major Holley (b)
John Beal (b)
Mousey Alexander (ds)

Recorded live at New York 1965


THE SCENE
クリエーター情報なし
HIGH NOTE
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テナーバトルは良くある企画だが、プログラム構成の良し悪しで・・・・

2015-06-12 | MY FAVORITE ALBUM
Jazz Battle Series Tenor Sax / K.Saijo vs. H.Matsumoto

久々のブログ更新になる。というよりも、レコードを聴いたのも久しぶりだ。
3月で仕事を辞めたので自由になる時間が増えたと思ったのもつかの間、今月はボランティア作業に振り回されている。ボランティアとはいえ、責任ある立場で重要な決め事をしなければならないとなると仕事以上に気を遣うし疲れるものだ。じっくり聴く気もしなかった。

とはいうものの、気晴らしにライブには良く出掛けている。
昨日は、片岡雄三と林正樹のピアノのDuo。
珍しい組み合わせだが、その場で曲を決めながら即興演奏の極みのプレーを聴かせてくれた。実力者同士でなければできない芸当、なかなか聴けない演奏だった。

一昨日は、トロンボーンカルテットのVoltsに白石幸司のクラリネットが加わった演奏。これが予想以上に楽しかった。トロンボーンのアンサンブルは聴いていて心地良いが、リードやソロもトロンボーンとなると曲によってはここ一番の「華やかさ」と「キレが無い」を感じないでもない。フランクロソリーノのようなプレーヤーがいれば別だが。
ところがそこにクラリネット一本加わるとサウンドの魅力が一気に広がる。クラリネットとトロンボーンという組み合わせもなかなかいいものだ。
白石幸司はクラリネットで有名だが、ビッグバンドに加わる時はテナーも吹く。このテナーをなかなか聴けないが、先日トロンボーンの早川隆章と組んだクインテットで存分に聴く機会があった。スコットハミルトンとハリーアレンのコンビのイメージを、トロンボーンとテナーで再現というコンセプトのようだが、自分の好みのサウンドにこれも大満足だった。

スイング系といえば、先日鈴木直樹と青木研のクインテットの予定があったが、主役の一人鈴木直樹が病気療養中という事で、その日はピアノトリオに青木研のバンジョーという編成であった。これも珍しい組み合わせとなったが、一人減っても何とかなってしまうのがジャズの素晴らしい所、これも楽しいライブであった。

という訳で、ライブ続きであったので、久々に聴くアルバムもライブ物から。
テナーバトルというのはスタジオ、ステージを問わず昔から良くある企画だが、この演奏も松本英彦と西条孝之介という2人のテナーの組み合わせのライブ物。バトル物ではあるが、うまく企画・構成されているアルバムだと思う。

2人それぞれA面、B面に分かれての演奏。最初の対決は意表をつくボサノバ対決だ。どちらもリズミカルに切れ味のある演奏だ。次はバラード対決だが、甘い泣きのテナーではなく、クールで鋭いバラードプレー、といった感じで進む。
バックはどちらも前田憲男トリオが務めるが、西条孝之介は元々ウェストライナーズのメンバーでもありレギュラーカルテットでの演奏だ。

次は多少アップテンポでストレートな演奏だが、松本がスタンダードのスピークロウに対して、西条の方は前田憲男のオリジナルで応酬。

最後は、それぞれ2人の共演となるがこれは2曲とも前田憲男のオリジナル。名前のとおりハードバップの演奏。これにはトランペットとアルトも加わる。一方は多少モーダルな演奏で2人のバトルで締める。この頃の猪俣猛は良く聴いた一人だが、ここでも軽快なリズムで2人の演奏を盛り立ている。

バトルシリーズとして他の楽器でのバトルのアルバムもあるが、良き時代の楽しいアルバムだ。
ライブ通いをすると、当時の活気のあるライブを思い起こすが、どうも最近のライブ会場は寂しい限りだ。

たまたま今日オーダーしていた交換針も届いた。ライブ通いの延長上のアルバムで少しウォーミングアップしたので、ぼちぼち棚卸に復帰しようと思う。

1. Samba de Orfeu
2. My One And Only Love
3. Speak Low
4. We Dig Be-Bop
5. Recado Bossa Nova
6. You Don’t Know What Love Is
7. A Nimal Kingdom
8. Critic Age

Hidehiko Matsumoto (ts)
Kohnosuke Saijo (ts)
Teruyuki Fukushima (tp)
Hideyuki Kikuchi (as)
Norio Maeda (p)
Yasuo Arakawa (b)
Takeshi Inomata (ds)

Supervisor : Teruo Isono
Directed by Toshiaki Sugimoto
Engineer : Hiroshi Satoh
Recorded live at Birdland Roppomgi, Tokyo on Feb. 16, 1976
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