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安倍首相は焦っているのか?

 首相就任時から「荷が重いのではないか」と思えた安倍首相が、参議院選挙を前にして、ここのところの逆風に焦り始めているのではないか。

 松岡農水相の自殺に際して、安倍首相としては、おそらく松岡氏の名誉のためのつもりで「緑資源機構に関して、捜査当局から松岡大臣の取り調べを行った事実はないし、これからも予定はないという発言があった」と述べているが、これは、捜査に関する情報をわざわざ聞いていたということであれば口外しない方がいいし、「この問題は、これ以上やるな」という捜査当局に対する意思表示だとしても問題である。そういうことがあっても、おかしくはない、という弁護が、或いは可能であるのかも知れないが、明らかに「言わない方が、いいことを、言っている」という意味で、安倍氏の能力又は精神状態の限界を示す発言だ。

 公的年金の納付記録問題についても冴えない。
 「(記録漏れを起こした)システムをつくった時の厚相は、いま口を極めて自民党を攻撃している菅さんだ」と2日に滋賀県での講演で言っているが、これは、効果的な反撃とは思えない。社保庁が問題になっている中で、この問題に手を付けなかった自民党政権の方が直接的に重い責任を持っていることは、国民にも明らかだろう。
 この種の本筋から外れた口先話で思い出すのは、森・元首相だが、彼も、同じ頃、地元の石川県連大会で、民主党に関して、「(社会保険庁職員の多くが加わる)自治労が民主党の支持母体であり、焦点をずらして社保庁が解散させられるのを避けるためだ」と述べている。日頃自分に向けられるような非難を相手方に向けるものの、結局、口先だけの反論にしか聞こえずに、かえって、「こんなことしか言えないくらい追いつめられているのか」という印象を与えて逆効果になる、というのが、「サメの脳みそ」と言われた森氏がよく陥るパターンだったが、同派閥の先輩後輩で、脳みそ的にもいい勝負であるためか、安倍氏が、批判に反撃する時の理屈の立て方(の、くだらなさ)は、森氏とよく似ている。

 また、5千万件を1年で照合するという話も、何を考えているのか、と思わせる。「ぼっちゃん総理」ゆえに、「願えば叶う。誰かが何とかしてくれる」と思っているのだろうか。そもそも、確認が難しいから宙に浮いているような記録を、どうやって1年で5千万件も処理するのか。

 「誰が何人でやるのか?」「いつからやるのか?」「一人で一日何件照合できるのか?」「お金は幾ら掛かるのか?」「それらをどうやって確かめたのか?」「確かめもしないで『1年』と言ったのか?」、と順々に追い詰められると、相当のダメージになるのではなかろうか。

 推察するに、安倍氏は、松岡農水相は参議院選挙まで引っ張って選挙後に外せばいいと思っていたのだろうし、民主党に対しては、小沢氏の個人的な問題を攻撃すればいい、というくらいに考えていたのではないか。
 攻めるのが民主党か、と思うと心許ないが、「消えた年金」も、松岡氏絡みの話題も、しばらくは関心が続きそうな情勢に見える。安倍氏には、突然の逆風だ。しかし、なぜ、急にこんな目に遭うのか?

 私は、永田町にも、霞ヶ関にも詳しくないので、断定的な事は言えないが、安倍内閣は、公務員の天下り人事に手を突っ込もうとしたことで、「お仕置き」を喰らっているのかも知れないとも思う。日本の実質的な支配者が、特定少数の黒幕ではなく、既得権を持った公務員の集合的意志だと考えると、納得できない話ではない。
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