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ライブドア・堀江裁判のここまでに思うこと

夕方、たまたまTVをつけたら、NHKの「クローズアップ現代」で会計監査の話をやっていて、ライブドアの話題が出てきた。そういえば、堀江貴文氏の裁判は、どうなっているのか、と、ちょっと久しぶりに思い出した。

東京地裁では、堀江貴文氏の公判が、例の公判前整理手続きのおかげで、急ピッチで進んでおり、一つの山場と見られていた、ライブドアの元No2.だった宮内氏が証人に立つ、堀江被告との「対決」が終わった。

物的証拠の乏しい裁判なので、宮内氏が証人に立って、何を証言するかが注目されていたが、印象としては「検察の失敗」という感じの展開になった。

宮内証人は、検察のシナリオ通り、堀江被告が粉飾決算を指示したという印象を与えるような証言をしたが、反対尋問で、株式の売却代金を自分(たち)の会社に一部環流させていた事実を指摘され、これを認めざるを得なくなってしまった。(それにしても、この種の人たちは、妙にフェラーリが好きですね)

ところが、宮内氏は彼の裁判にあって、横領では起訴されていない。

この状況から容易に推測できるのは、
(1)検察は宮内被告の横領(粉飾よりも刑が重い)を知りつつ、
(2)しかし横領ではなく粉飾で起訴する代わりに、
(3)堀江被告の裁判で検察側に協力せよ、
という取引をもちかけたのではないか、ということだ。

飛躍のある推測と思われる方が居られるかも知れないが、朝日新聞「AERA」の大鹿靖明記者の著書「ヒルズ黙示録」には、宮内氏らが株式の売却益を私的に流用していたかどうかは確信が持てないとしながらも、宮内被告らが海外に作ったペーパーカンパニーへの資金の流れが指摘されている。検察がこの点を看過して、宮内氏の取り調べを行ったとは考えがたい。また、堀江被告の裁判で宮内氏が簡単に認めたように、調べていれば、この点を明らかにすることは、そう難しくはなかったはずだ。

もちろん、今後の展開を見なければならないが、今の段階での印象は、検察側の捜査プロセス全体の適切性に大きな疑問符が付くし、したがって、検察側はかなり苦戦しているのではないか、ということだ。堀江被告が、「無罪」あるいは「微罪」という可能性がかなり出てきたのではなかろうか。

もちろん、その場合には、検察は相当の批判に晒されることになるだろう。

但し、仮に、堀江被告が刑事裁判で無罪になったとしても(もちろん有罪だとしても)、以下の問題が残ることを忘れずにいたい。

(A)先ず、違法行為を指示したか否かはともかくとして、堀江社長が、決算数字を操作して赤字を黒字に見せかけて、投資家を偽ったこと。このセコイ、インチキの事実は消えない。正直に赤字を出して、あとは正々堂々と(?)大風呂敷でカバーすれば良かったではないか。

(B)刑事事件としては無罪でも、監督責任も含めて、堀江氏の民事的な責任は、相当に大きいにちがいない。当事者同士の問題だから、第三者がとやかく言うことではないかも知れないが、「損害賠償」はあり得るだろうし、覚悟すべきだろう。

(C)検察の捜査プロセスは、本当に良かったのか? 投資家に対する賠償があるべきだとすると、その請求の何割かは、検察に向けられるべきかも知れない。ペイントハウスの粉飾(ざっと100億円)は行政指導で済み、ライブドアは強制捜査でざっと6000億の時価総額が飛んだ。扱いは、公平なのか? また、方法は適切だったのか? 仮に「国策捜査」的な意思が働いていたとすると、検察は不遜というべきだろう。

何はともあれ、今後の展開を見守ることにしよう。それにしても、大鹿記者の「ヒルズ黙示録」は見事な取材だ。強制捜査から、ここまでの裁判にいたるまで、事実の大枠はほぼこの本で捉えられており、基本的にこの本の枠内で物事が進んでいる。これだけの事実を掴んでいるのだから、ノンフィクション関係の賞をあげてもいいのではなかろうか。

ところで、村上世彰氏も公判で「全面否認」の方針を固めたという。いったん罪を認めて、何らかの時間稼ぎをするつもりだったのか、真意は分からないが、こちらの方は、「全面否認」されると検察は少なくとも苦労しそうであり、彼が交渉カードを持っていたと見ることが出来る。

こちらでも苦戦するようになるとすると、東京地検はどうするのだろうか。
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