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NewsGyaO終了

2月の番組開始からほどない頃から、私がコメンテーターとして主に月・火・水の週三日出演していた番組「NewsGyaO」が先週末、9月29日をもって、いったん終了した。番組終了の話は、ある程度前に聞いていたのだが、番組スタッフや出演者でも事情を聞くタイミングにかなりの差があったらしいことと、正式発表がなされていなかったので(USENの株価が大きく動いている時期でもあったし)、これまで、このブログに書かずにいた。

私は、「ネットと放送の融合」というかけ声を実現するにあたり、(ライブドアや楽天のように)出来合いの放送局を買おうとするのではなく、「自分で作ってみようではないか」というUSENのGyaOに関するアプローチに好感を持っていたし、制作が難しく、また、費用もかかるであろうデイリーのニュース番組(しかも生放送)を立ち上げるという「正攻法」のアプローチも好ましく思っていたので、出られるだけ出ようと考え、週に三日間、出演させて貰っていた。

しかし、ビジネス的には、当面のUSENにとってはなかなか負担が大きかったようで、これは私の推測だが、USENをカバーしているアナリストの関心が集中しているであろう、「GyaOの黒字化はいつか?」という問題に対して、コストカットで答えを出すために、費用のかかるデイリー・ニュースから一時「降りる」と決断したのだろう。番組開始以来、8月上旬くらいまでは、現実もその後の計画としても、番組の時間枠やコーナーを拡充する方向に動いていたし、USENの新オフィスではGyaO用のスタジオを三つ作っている(現在は溜池に一つ。三つという話は、未確認の噂話なので、関心がある投資家はご自分で確認されたい)などとも聞いていた。NewsGyaOの打ち切りは、急に決まったものだろう。

「株価を意識すると、長期的な経営が出来ない」という事例として数えることも可能かも知れないが、それはそれとして、仕方がないとしたものだろう。大きな無理をせずに、GyaO自体を継続して、チャンスを待つことが重要だ。ただ、「NewsGyaO」という番組名は、GyaOをネット上の放送局として続ける以上、継続性を持たせたい名前だ。おそらく、何らかの形で、報道番組を立ち上げることになるのだろうから(たとえばウィークリーの)、連続性が切れる形になるのは、少々残念な気がする。

GyaOのような形でニュース番組をやろうとすると、幾つかの困難があるが、最大のものは、記者クラブの壁だったろうか。官庁関係にしても、自民党にしても、記者会見にカメラを入れて、出来れば質問もしたいわけだが、それぞれの主体に取材を申し込むと、「記者クラブの許可を得て下さい」ということになり、記者クラブの幹事会社(新聞社など)に問い合わせると、色よい返事が得られない。すると、自局(テレビマンの中には、GyaOをテレビ「局」と称することに抵抗感のある向きもおられようが、やっていることは「局」である)で使える映像を得ることが出来ないので、ニュースの画面としては、写真や建物の様子などを使うことになるが、ニュース番組としては辛い。

記者クラブは、一種の談合組織として、新規参入者に対する防護壁になっている。取材される側の都合を考えると、訳の分からない媒体やジャーナリストを排除できるので安心だし、記者クラブに参加しているメディアにとっても、取材が混乱を来さないという意味では、記者クラブは役に立っているのだろうが、ジャーナリズムの基本的なあり方としては問題だろう。長野県の前知事だった田中康夫氏が、長野県庁の記者クラブを廃止したが、これが本来の姿だと思う。長野県の場合、これでどうだったのだろうか。

何れにしても、個人のブロガー・ジャーナリストのようなものも記者会見への出席が認められるような方向のアメリカと較べても、日本のジャーナリズムは閉鎖的だといわざるを得ない。

もちろん、日本の現状には弊害がある。たとえば、前回の総選挙で、自民党圧勝の原因ともなった、小泉首相の記者会見は、彼に厳しい質問を浴びせることのない記者クラブ所属の記者達の協力によって、政権与党側にとって効果的なパフォーマンスに仕上がった。あの時に、何を訊かれても「どうして郵便局が役人でなければ出来ないのか、私には分からない。教えてくれ!」と言う小泉首相に対して、「総理、質問をはぐらかさないで下さい!」と言うような記者や、「郵政を民営化しても、同じ規模で行政と癒着した巨大独占企業が出来るだけではないのか」といった質問をする記者がいれば、印象は随分違うものになったと思う。

また、ニュースそのものの購入や、ニュースで使う映像の購入には、多額の費用がかかる。特に、後者に関しては、十分な動画映像を使えないため、たとえばスポーツ・ニュースのコーナーの制作上、大きな制約になった。スポーツコンテンツの映像に権利があるので、これはやむを得ないが、たとえばサッカーのワールドカップの時期には、他のスポーツニュースと大きな差が付く原因になった。スポーツ・コーナーの制作スタッフは、個人的には日本を応援しながらも、一次リーグでの敗退が決まって、ほっとした、というような案配だった。

新規参入で制作スタッフが少ないし(といっても、最後の打ち上げパーティーの出席者は70名以上になった。100人近くが、番組に関わっていたとみていいだろう)、多くの取材班をあちこちに差し向けるということは出来ないので、事件もののニュースが不得意だったのは、やむを得ない。もっとも、夕方の主婦向けの時間帯に放映するわけでもないので、殺人事件の現場や捜査状況などを細かく独自に取材する必要はなかったとも思う。

他方で、経済関係のニュースは、「それはどのような仕組みになっているのか」という話なので、原理的にそれほど差が付くわけではない。要は、伝える側が問題を良く理解していればいいし、必要があれば、的確に説明してくれる人を連れてくればいい。

また、インタビューについては、ゲストと聞き手の問題なので、上出来と不出来の両方があるが、企画次第では勝負になる。GyaOはアーカイブ機能がついているので、いわばVTRが自動的に回っているようなものだから、インタビューを資料的に残すことも出来る。もっと多用すれば良かったかも知れない。ネット関連の話題をニュースにした「ネット・ニュース」というコーナーも、時々後から見たくなるような内容(役に立つサイトの情報や、ノウハウなど)があった。GyaOは、ユーザーがネット上に自動VTRを持っているような仕組みになっているので、こうしたものは、必ずしもニュースという枠組みにこだわらずに、再チャレンジしてみる価値があるだろう。

また、どのみち素材映像などで予算のある地上波局のニュースには勝てないのだから、いっそのことニュースとコメントとの比率を後者重視に変えて、もっとその場でいろいろ考えてみる、というような井戸端会議的な伝え方でも良かったのではないかとも思う。

純粋にニュースだけを伝えるのか、ある程度中身に対する解説も加えようとするのか、番組によって差はあるが、既存の報道番組は、素材のVTRなどがパンパンに入って時間を食っており、内容についてその場で考えるというような余裕がほとんどないし、コメンテーターのコメントの大きな役割は時間調整である(そう考えると、分かりやすい)。内容の多くを出演者にゆだねるのは制作側としては不安が大きいかも知れないが、GyaOのようなチャレンジャーの場合、一つの方法としては、そうしたリスクを取っても良かったのではなかろうか。

USENとしては、月次なり、四半期単位なりで、まずGyaOを黒字化したいのだろうから、コストの掛かるデイリーのニュースをそのまま直ぐに復活させることはないだろうが、何らかの形の報道番組は遠からずまた始まるだろうから、これに期待したい。

個人的には、週に三日、数カ所ではあっても、ニュースにコメントするのは、面白い経験だった。ただ、午後8時半に赤坂溜池のスタジオに行き、9時半~10時15分に生放送、というタイム・スケジュールは、それなりに大きな制約ではあった。これが無くなると、友人と飲み食いすることがぐっと楽になるし、原稿書きに使える時間も増える。月に二回ほどコメンテーターを務めていた、日本テレビの夕方のニュース番組「ニュース・リアルタイム」のコメンテーターも9月で終了したので、この分の時間も増える。連載ものの原稿はもちろん〆切に間に合うように書いていたのだが、単行本の執筆が相当に滞っていたので、この時間的な余裕を全て飲み食いに回すのではなく、本の執筆に充てたいと思っている。

コメンテーターとしての反省記や、共演者の印象などは(週に三日、きれいな女性達に囲まれていたのだ!)遠からず、またこのブログに書くことにする。
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