そうすけ漫録

そうすけの一日の型録です。

そうすけマン 永遠の戦い

2006年08月10日 | 物語
そうすけは子供のころ、そうすけマンというヒーローであった。
ヒーローは闘わなければならなかった。
ヒーローは勝利しなければならなかった。

そうすけマンは毎日、次々と現れる妖怪、怪獣との戦いにあけくれた。
だが誰もそうすけマンの壮絶な戦いのことをしらない。

或るとき、そうすけマンは妖怪マクラヤミに倒されてしまった。
逃げても、逃げてもマクラヤミは追いかけてきた。
助けを呼んでも、唄っても、積み木を投げつけても、本を階段から投げ落としても、
マクラヤミは追ってきた。

そうだ。みないみないバリアを張ればいいのだ。
そうすけマンはタオルを口に加え、目を瞑り、念じた。
「みないみない、みないものはいないいないバリアー」
すると、どうだろう。マクラヤミは消えていったではないか。
光の世界がそうすけマンをつつんだ。

そうすけは再び勝利を手に入れたかのように思ったが、
実はこれは永遠の戦いの始まりであったのだ。

 子供だったいう過去の記憶は大人になるにつれて神話となった。
そうすけは自分がそうすけマンであったことさえ忘れてしまっていた。


2006夏。
そうすけは黄昏時に、ふと漠然とした不安に苛まれた。
公園のベンチが夕闇に浮かび上がってくる。
頭を抱える。胸さわぎがする。バリアが破れようとしていた。

「わうぉ~ わうぉ~ わうぉ~」
逃げろ、走れ、隠れろ、疾走せよ、失踪してしまえ!
「ぼばんば、ばんぼん、ぼんば、ばばっぼぼっ」
唱えよ、呪え、惚気よ、狼煙を上げよ!
「西から昇ったお日様が東に沈む!ボンボンバカボンバカボンボン」
尊敬する人は?パパ。パパは何でも知っている。でも知らせてくれなかった。いつでも仁木さんちの猫が教えてくれた。隻眼の猫はエメラルドをうめこむ。いつ言ったって同じだ。ヘィヘィホォホォ、よかった、よかった。パパは木を切る。

コロガッテシマエ、コロガッテシマエ、ビールバラマン、
赤イ入日ノナダラ坂、
ケッテモコロガヌモノナラバ
コロガッテシマエコロガッテシマエビールバラマン。

麦酒腹男が坂を転げ落ちていくことによって、バリアは張られた。タソガレドッキをやりすごしたのだ。
そして、そうすけの世界の平和は保たれたのであった。
ありがとう!麦酒腹男、坂がおわっているのに転がりつづけているなんて、すっごくない~ぃ。

闘いすんですんで日が暮れて、そうすけは夜の公園に佇む。
そうすけは麦酒男がそうすけマンの40年後の姿であることを知らない。


(だから、それが、どうしたんだよ) 
 意味を求める妖怪たちの声が響く。

(やんなっつぅ~の)
 怪獣たちが仁王立ち、吠える。

 戦いは永遠につづく。

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