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だらだらぼちぼち

シッカートとの遭遇

2016年07月20日 13時57分49秒 | 風景光景
4年前に京都で『ヴェネツィア展』を観覧した事がある。
あの時、ヴェネツィアゆかりの展示を観覧しながら、
『ヴェネツィア』って、昔、映画やTVで見た『ベニス』によく似た国だなぁ、、、、
あちこちに水路が巡っていて、ゴンドラに乗って観光する、あのベニスに、、、、、、
別々の国のはずなのに、どうしてこんなに似ているのだろうかなぁ、、、、、?
と、思ったのだ。

い、
い、
い、
今更、口にするのも恥ずかしいのだが、
何という事か、その直後まで、『ヴェネツィア』イコール『ベニス』なのだと気づかなくて、やたら一人で恥ずかしい気分に落ち込んでしまったのだ。
幸い、その誤りを口に出す機会がなかったので、ワタクシの社会的な評価に影響することはなかったのだが、、、、、、

          
で、今回、滋賀県の佐川美術館で『ヴェネツィア展』を観覧した。
4年前の京都とは別の展示だった。

当然ながらワタクシには、美術に関する知識やそれを鑑賞する能力はほとんど備わってはいないのだが、
先日の佐川美術館での『ヴェネツィア展』の展示の後半あたりで、思わぬ絵画に遭遇してしまった。

ヴェネツィアで描かれたとおぼしき、シッカートの作品が2点展示されていたのである。
大きなサイズの作品ではないが、どちらも女性を描いた絵画だった。
『シッカート』という名前に気づかなければ、スルーしてしまったかも知れない。

シッカートは、小説『検屍官』シリーズの著者であるパトリシア・コーンウェルによって、1冊のノンフィクションの主人公となっている。
パトリシア・コーンウェルの著書『切り裂きジャック』は、文庫本ではあったが随分と厚めの本だった。
ネタバレさせるわけにはいかないのだが、著者が画家シッカートに疑惑を持った経緯と、シッカートの幼少時からの生育環境をはじめ、その後の調査がハラハラするような筆致で進められていく。
最終的に、コーンウェル自身が自費で行った検査結果により、99%の確度を持つミトコンドリアDNAの一致などからシッカートを犯人としたのだ。
(何しろ年月を経ているし100パーセントの確証には至っていないし、当人はすでに死亡しているわけで、法的に真犯人と断定されたわけではないが)
(そうそう、ここまで書いてしまうとネタバレそのものではないだろうか、、、、、)

『切り裂きジャック』事件は、1988年にロンドンで発生した連続殺人事件だ。
被害者は売春婦ばかり5人だと推定されているが、5人以外にも切り裂きジャック本人によるのか、はたまた切り裂きジャックをまねた模倣犯による犯行かどうか疑わしい犠牲者もいるようで、果たして5人だけだとは断定されてはいないし、犯人も一人だけとは断定できないようだ。
発生直後から、前科のある者を中心に何人もの容疑者がリストアップされたのだが、事件は未解決のまま現在に至っている。
『切り裂きジャック』は、小説や映画では何度も取り上げられているので、ワタクシもその所業を知らなくとも名前くらいは聞いたことがあったのだが、
まさか、こういう論法で自信満々にシッカート=切り裂きジャック説をまとめる小説家がいるとは思いもしなかったので、強烈な印象を得た。
何よりもシッカートという画家が、歴史的に高い評価を受けた偉大な芸術家とも感じられないのに、切り裂きジャックその人であるとしたらどんだけ大きな名前になってしまうのだろうか?

『ベニス』イコール『ヴェネツィア』だと知った時の驚きは、パトリシア・コーンウェウル著の『切り裂きジャック』を読んだ驚きにはとてもとても及ばない。

さて、パトリシア・コーンウェルの小説『検屍官』シリーズだが、1作目を読んでみたときはなんとなく面白そうに感じたので、直後にブックオフでシリーズ全作を大人買いしてしまった。
その後、3作目までは読んだのだが、1作目の読後感と比べると、さほどあんまり面白くは感じられずに、シリーズ全作読破には至っていない。
これは、裁判時に死因などを推察証言する日本でいうところの『検死官』のイメージと、捜査権も逮捕権も認めれらているアメリカにおける『検屍官』という職業がずいぶん異なることからくる違和感に、ワタクシ自身の読書感覚が左右されているからだと思う。
実際、『検屍官』シリーズでは、主人公の検屍官が原発を破壊しようとするテロ組織と銃を手に対決する場面まであるのだから。