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日本型モノづくりの敗北?

2013年10月30日 | Weblog

 最近印象に残った本に、「日本型モノづくりの敗北 -零戦・半導体・テレビ」(湯之上 隆著)がある。エルピーダ-やルネサンスに国税を投入して日本の半導体産業の復活を目指してきたが、効果は全く出ていない。技術力には定評があるのに、何故アップルやサムソン、LGの韓国企業や鴻海等の台湾企業に収益や販売の面で大きく劣後しているのか、この本を読んで良く分かった。半導体の技術者として、モノづくりの内側から、日本企業の経営、技術開発、販売等の問題点に焦点を当てた名著である。今国会に産業競争力強化法案が提出されているが、これまでの延長線上で技術をとらえ、ただ単に財務や公的資金投入、減税という観点だけで日本のエレクトロニクス産業の再生を考えることには限界があるような気がする。

  世界一を誇った日本のDRAM等の半導体、テレビ、他エレクトロニクス技術が、ここのところ振るわない。シャープのリストラだけでなく、パナソニック、ソニー、NEC等家電メーカーの収益は低迷続きである。この数年、東アフリカ各国、ロシア、セルビア-等の旧東欧諸国に行く機会があったが、家電売り場にはほとんどサムスン、LG、アップル等の電化製品が売り場の中央を占めており、ソニー、東芝等のテレビやパソコンは売り場の隅に置かれていたことは印象的でした。また英国やスペインなどの先進国においても似たり寄ったりという状況です。

 新興国市場の急拡大で、低価格競争力が問われ、また家電製品のモジュール化で東アジアの国でほぼ同一品質の製品や一部部品が作られ、また携帯市場に顕著ですが、商品がグローバル化して規模の利益が急速に拡大しています。そのような環境で、日本に同一電化製品を作る複数の企業が存在し、狭い日本市場で「利益なき繁忙」に安住しています。先進国や新興国などに打って出るには、規模が足りなく、製造工程の合理化や製造メーカーの合併が必要です。たとえDRAMやマイコンを国の主導でエルピーダ-やルネサンスに集約したとしても、母体企業のカルチャーを引き継いだ技術者や他人員が他の企業から来た人たちと交わらないという湯之上氏の指摘は、目から鱗がでるようでした。というのは、日本のメガバンクもドラマ「半沢直樹」の描写や最近注目を浴びているみずほグループの不祥事のように、二つや三つの銀行が合併しても旧銀行の人事部や派閥が残り、余りにも内向きな抗争に明け暮れていて、銀行の合理化や競争力強化がなされていないことと瓜二つだからです。その意味で「日本型モノづくりの敗北」というよりも「日本型サラリーマン文化の敗北」にもつながると思います。

 これらの事象に関して、政治家として考えるべき点は、次の二つの点です。先ず、これまでエルピーダ-やルネサンス、あるいはあすか、あすかⅡなど多くのプロジェクトに多くの税金が投入されています。また今後も投入され続けようとしています。そして多くのプロジェクトが失敗することにより税金がどぶに捨てられました。これまでの経済産業省による事業再編が正しかったのかという点とこれからはどのような方向に舵をきるべきかという問題です。さらには、そもそも民間企業の経営や技術再編等にどのような形で関わるべきかという問題です。

 もう一つのサラリーマン文化との関係ですが、上場企業の取締役会に、独立(社外)取締役を複数選任することを会社法ないし東証の上場規則で義務づけることです。中立的な独立取締役を就任させることで、取締役会を身内の論理からより上場企業や株主、取引先等のステークホルダーへの貢献という論理に変わってくることが期待できると思います。