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社会主義体制の崩壊と内戦

2010年12月11日 | Weblog
 前日に続きサラエボの特集です。写真は、1984年の冬季オリンピックと1992-1995年のセルビア軍により包囲されたサラエボの地図です。山岳地帯には、冬季オリンピック競技の開催場所と戦車のイラストが重なっています。
 内戦中、サラエボ市内は赤い線で記載されているように完全にセルビア軍に包囲されていました。右上に一箇所だけ空いている空間は、サラエボ空港です。国連軍が制圧し、人道的見地から空輸でサラエボ市民へ補給を行ないました。サラエボ空港の滑走路の下には、サラエボ市民と軍により密かにトンネルが掘られました。

 下の写真は、「トンネル」のあった建物です。銃弾の跡が残っています。このトンネルは、戦争中にサラエボ市民の生存のために必要不可欠なものでした。周囲をセルビア軍に包囲され孤立したサラエボ市民の食料、燃料等の生活必需品は、空輸による支援物資だけでは足りず、このトンネルを通って運ばれました。2年の間、毎日3000人の兵士が、50キロの荷物を担いで狭いトンネル伝いに物資を運んだとのことです。



 社会主義体制下でサラエボ冬季オリンピックを成功させた旧ユーゴスラビアは、ベルリンの壁崩壊後、社会主義体制が崩壊しました。それとともに民族問題が再燃し、内戦が発生したのです。内戦では、1万1千人以上の人が亡くなり、また同地域に住んでいたセルビア系住民を中心に難民、移民が発生しました。サラエボが首都となったボスニア・ヘルセゴビナは、内戦から15年経った現在もOHR(戦後日本のGHQと同様な組織)が戦後復興を監視している状況です。
 ユーゴスラビア時代には、かなり経済的、文化的に繁栄したこの地域も、内戦を経て厳しい状況に置かれています。戦争を行なった当時の為政者の責任は改めて重大であったと痛感させられます。

 今回の中央バルカン諸国の視察で、ヨーロッパの直面する問題が良く分かるようになりました。東欧社会主義国の民主化・資本主義化は現在も継続しています。多くの旧東欧諸国にとり、大きな目標がEU加盟です。前述したセルビアのニコラ・テスラ火力発電所が、脱硫設備を導入しようとしているのも、セルビアがEUに加盟するために環境問題でもEU基準を達成する必要があるためです。
 一方でEUでは、ギリシャ、アイスランドに続きスペイン等でも国の多重債務問題が発生しています。共通通貨EUROを導入しているので各国の経済運営がかなり難しくなっているのも事実です。このような状況で、旧東欧圏のEU加盟問題は益々複雑になってきているのも事実です。
 
 欧州では、20年以上の時間をかけて社会主義体制の崩壊に向き合い、何とか新しい体制を作りつつあります。その間大変な苦労をしているのも事実です。その点東アジアでは問題はこれからです。特に南北朝鮮問題は、これから数年が山場になるかもしれません。サラエボ、ベオグラードの悲劇を朝鮮半島で繰り返させないことが、東アジア為政者全員の課題であります。