goo

別れのビーフシチュー


 俺か、俺は探偵さ。何してるかって、見りゃわかるだろう。ビーフシチュー作ってんだ。7年前まで、県警のコワモテのデカだった俺が、なんでこんなちんけな事務所のキッチンでシチューなんか作ってるかって。
 別にたいしたわけない。古いダチが来るんだ。そいつがビーフシチューが食いたいといったのさ。
 え、なぜデカを辞めたのかって。そんな大昔のことなんざ覚えちゃいねえさ。どうしても聞きたいか。よくある話さ。俺が悪いんだ。ヤマを追うのに忙しく、女房をかまってやれなかった。男ができた。その男が俺の上司だったのさ。
ま、いろいろあって俺は警察を辞め、探偵稼業を始めたわけだ。
 もうそろそろいいだろう。赤ワイン、パン、サラダを用意して、俺が持ってる一番きれいなテーブルクロスを敷く。
 お、電話だ。なにここまで来れないんだって。うん、そうか、そこで待ってろ。
 古いダチ、別れた女房なんだ。ここには来ない。このビーフシチューはお前が食ってくれ。俺は今から女房とデートさ。俺はもうここには戻ってこない。それ、食い終わったらサツに電話してくれ。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
« 2月6日(金... オレのちゃんこ鍋 »
 
コメント
 
 
 
Unknown (そのえだ園子)
2009-02-09 21:33:49
ハードボイルドな雰囲気出てますね~
事務所にいるお客がいったい何者で、サツに電話する理由がすごく気になります(*_*)
 
 
 
園子さん (雫石鉄也)
2009-02-09 21:48:08
背後の設定は、いちおう考えてありますが、秘密です。読む人のご想像にお任せしたいと思います。
 
 
 
Unknown (そのえだ園子)
2009-02-09 22:36:00
あ~センセ、ずるーい!

いずれショートショートでお待ちしております♪
 
 
 
園子さん (雫石鉄也)
2009-02-10 04:21:25
わかりました。近いうちに書いてここに掲載します。
 
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。