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まめとら

 歌舞伎役者、市川右団次の弟子で虎三郎という男がおりました。コウシエンの門前の膏薬屋「本家びっくり膏」の息子で、この虎三郎、とんぼが切れるんですな。
 ある雨の夜のことです。チュウニチの道を歩いとると、傘がずっしりと重い。ははあ。まめとらがいたずらしよったな。そのまま、ポーンととんぼをきりました。すると、ギャといってのっぺりした顔の男がベンチに下がりました。
「ただいま。どないしたんや」
「お金があわんのや」
「あわんこともあるわいな。ごはんして」
「ただいま。おかん、きょうもうかん顔して。どないしたん」
「お金があわん。代わりに銭箱にボールが入っとる」
「ここは野球場やで。ボールぐらいあるわいな」
「おかん、きょうもかいな」
「背中に14と書いたのっぺりした顔の男の子が膏薬買いにきたんや。そしたらお金があわん」
「ええかげんにしいな。おかん。また14番の子かいな」
「そうやねん。とうとうその14番の子、ボール5個置いて行きおった」
「ほう、そら不思議やな」

「おおい。来てみい。ここで小虎が死んどるぞ」
 それへさして風船がぱらぱらぱら。
「それ見てみい、虎ファンの香典がようけ集まった」
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