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テンプル騎士団の遺産

スティーブ・ベリー 富永知子訳 エンターブレイン

 主人公コットン・マルローは元アメリカ司法省の秘密捜査官だった。今は退職してデンマークのコペンハーゲンに住んで古書店を営んでいる。
 司法省時代の上司ステファニーがコペンハーゲンにやってきた。彼女の目的はデンマークで開催される古書のオークションに参加すること。二人は旧交を温める約束をする。
 ステファニーの死別した夫は学者で作家だった。夫は700年前に消滅した「テンプル騎士団」に関する研究をしていて何冊かの著書もある。
 テンプル騎士団とは、聖地エルサレムを目指して旅行する巡礼の道中の安全を守るために作られた自警団。最初はたんなる自警団だったが、だんだんと人数が増え、それにともない富と権力と武力を増大させ、強大な力を持つキリスト教最大の集団となった。ところがフランス王フィリップ4世の陰謀によりメンバーの大半は逮捕処刑された。時の総長ジャック・ド・モレーも磔にされ火あぶりにされた。ところがテンプル騎士団が残した膨大な財宝の行方はようとして知れない。
 コペンハーゲンにやって来たステファニーな謎の怪人に襲われマルローに助けられる。マルローに塔の最上階に追い詰められた怪人は、謎の言葉を残して飛び降り自殺。
 いわゆる消えたお宝の争奪戦。エンターティメントの典型。もちろん主人公マルローは有能な捜査官だったから007みたいな活躍をする。悪役も出てくる。マルローを助ける謎の大金持ちも、トゥームレイダーのララ・クロフトみたいなべっぴんもでてくる。かわいそうな運命をたどる純粋な若者、謎に満ちた古い修道院、カーチェイス、銃撃戦、なんだかんだと、エンターティメントのお約束のモノがひととおり出てくる。出てこないのは色模様ぐらい。なんせマルローの相手役でヒロインのステファニーは60を超えている。えらい歳くったヒロインだ。別に60を超えたばあさんでも、書き方によっては非常に魅力的な女性に書けるのだが。で、面白かったかというと、面白くなかった。
 この手の話にはツボがある。そのツボを押さえれば面白くなる。まず、魅力的な悪役。どういうお宝か。そのお宝はどこに隠してあるのか。お宝にたどり着くまでどういう罠が仕掛けられているか。敵方の組織の正体は?主人公の味方協力者にどんな個性的な人物がいるか。
 この作品、これらのツボを外しまくっている。正直、アレ、と思わせたのはステファニーの××は××したはずだったが××だった。その××は実は××だった。というくだりぐらい。ま、おひまならお読みなさい。

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