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大いなる惑星


 ジャック・ヴァンス  浅倉久志訳    早川書房

 昨年、96歳で亡くなったジャック・ヴァンスの初期の長編である。冒険SFである。冒険小説もSFも大好きな小生としては、いつか読みたいと思いながら46年も積読していた作品。ヴァンス師匠が亡くなったのをシオにこのたび読んだしだい。
 ヴァンスは異郷作家という異名がある。どこやらとも知れぬ人外の土地を設定して、そこにエキゾチックな物語を展開する。この作品も異郷作家の魅力が堪能できた。
 舞台は「大惑星」地球の10倍の表面積を持つ広大な惑星。でかい惑星だが金属資源がないから科学技術がない。
 この「大惑星」にも地球からの植民者はいるが、こいつらはみ出し者。勝手気ままに広大なこの惑星の表面で暮らしている。各地に集落、大きいものは国といっていいモノまで。貴族なるモノがいる所もあるし、蛮族となっている連中もいる。その中に、自ら「皇帝」となり、ご禁制の金属製の武器を持ち込んで「大惑星」統一の野望を持つ者がいるらしい。
 地球政府が調査に乗り出した。ところが調査団を乗せた宇宙船は、「皇帝」の支配地近くに不時着。このままでは殺される。調査委員長クロード・グリストらをはじめとする一行は6万キロ離れた地球直轄地をめざして出発した。
 と、まあ、こういう話で、小生の大好きな冒険活劇である。もちろん、すんなりと旅をさせてくれない。奇妙な風習を持つ集落やら、凶暴な蛮族、一行にひそんでいるらしい皇帝のスパイ。油断ならん交易商人の集団。まぎれこんだ現地の美しき娘。大河に棲息する巨大な肉食動物。なんやかんやと出てきて読者のご機嫌をとりむすぶ。調査団のメンバーも、脱落するもの、現地に留まる者、死ぬ者、だんだん減ってくる。そして皇帝の手の者が明らかになる。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (悠々遊)
2014-03-27 09:22:52
私の嗜好とはちょっと違う気もしますが、浅倉久志さんの訳だったら読んでみたいですね。
でも、ハヤカワのこのシリーズ、もう手に入りませんね。
 
 
 
悠々遊さん (雫石鉄也)
2014-03-27 09:34:22
私は面白かったです。浅倉さんの訳文はさすがに読みやすかったです。
私が持ってる本はハヤカワの銀背ですが、確か、文庫になってると思います。
 
 
 
やっと取りかかりました (アブダビ)
2015-12-12 00:27:46
読む本が沢山で…大薮春彦と西村寿行に最近ハマり、遅れまして。
私も管理人さんと似たくちで、この作品は未読なのです。
ヴァンスは苦手どころか大好きな作家で、
冒険の惑星、魔王子シリーズ、龍を駆る一族、その他短篇…とだいたい読んでいるのてすが、何故かこれには手を出しませんでした。
ブライアン・オールディスの「地球の長い午後」が理系の異世界ならば、ヴァンスは
文化系の異世界で、よくまあ…と呆れるくらいに変な部族とか出てくる。
感心しながら読んでるうちに半分来てしまいました。読了するのが残念で一息ついてます。
 
 
 
月の蛾 (アブダビ)
2015-12-12 00:36:19
ヴァンスの短篇の「月の蛾」は既読てしょうか?
惑星の住民が全て仮面を被り、楽器で感情を表現する世界。そこに新任の地球外交官が 、逃亡してくるテロリストを探さざる得なくなる。しかし全員が仮面を被る星で、どうやって探せば良いのだ?
そういうお話しでした。
こういう変な世界を文化人類学的に描かせるとピカ一ですね。
文化人類学者であるル・グィンみたいな緻密さはないのですが、思わず引き込まれる
異世界を描きますねえ…
 
 
 
読了 (アブダビ)
2015-12-12 08:57:20
SFの一つの味わいに、例えは「深紅の碑文」の海の民のように、変わった生態や環境の異世界を覗く事があると思います。
ヴァンスのそうした才能が、初期から本物だったのだと思う作品でした。
ハリスンの「死の世界」やハーバートの「デューン」をまた読みたくなりました。
 
 
 
アブダビさん (雫石鉄也)
2015-12-12 09:32:02
「月の蛾」残念ながら未読です。おもしろそうですね。
そうですね。異世界、おかしげな風習、奇怪な住民、異様な環境、これらを「体感」させてくれるのも、SFの魅力なわけですね。ジャック・ヴァンス師匠はそれに優れた作家でした。
 
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