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SFマガジン2012年6月号


SFマガジン2012年6月号 №675  早川書房

雫石鉄也ひとり人気カウンター

ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち 仁木稔
 今月の読み切り短編はこれ1編。
 9.11が無かった近未来のアメリカ。社会は荒廃し人心は乱れている。単純労働には遺伝子工学で創られた亜人間が就いていた。彼ら亜人間は「妖精」と呼ばれ、一部の人たちから残虐なイジメを受けていた。その「妖精」を虐待する様子の動画がネットに公開され多くの人が目にする。

漫画
All those moments will be lost in time  西島大介
 あたりまえのことを、あたりまえに描いただけ。

連載

輝きの七日間(第14回) 山本弘
椎名誠のニュートラルコーナー(第31回)
なぜ賞味期限があるのに供養期限がないのか。夢はお骨仏だ。  椎名誠
パラフィクション論序説(新連載)             佐々木敦
現代SF作家論シリーズ 監修 巽孝之
第17回 筒井康隆論「筒井康隆とマルチメディア・パフォーマンス」
                       ウィリアム・O・ガードナー 
SFのある文学誌(第6回)                長山靖生
是空の作家・光瀬龍(第5回)               立花ゆかり  

 トップ頁のいつものイラスト。今月号は緒方剛志が「ねじまき少女」を描く。主人公エミコのヌードのイラストだが、これじゃただの淫乱な女子中学生である。エミコは苦労人だから、もっと大人だろう。
「ハヤカワSFシリーズ Jコレクション」が創刊10周年となった。それを記念した企画が特集。
 同シリーズ最新刊の2冊の作者、倉数茂と法条遥へのインタビュー。大森望のエッセイ「Jコレクション10年史」そして、Jコレクション既刊作品完全レビュー。といった内容。こうして見るとまさに玉石混交。功罪あい半ばといったところか。上田早夕里、伊藤計劃といった作家を世に出した功績は大きい。
また、小説だけではなく、漫画、戯曲といった毛色の違う表現方法で創造したSFを供給した姿勢は良し。ただ、SFの本質とは何かを見失わないで欲しい。大森がエッセイで書いていたが、早川の日本SFの叢書は、「日本SFシリーズ」「日本SFノヴェルズ」「新鋭書き下ろしSFノヴェルズ」が「Jコレクション」以前にある。こうして見ると早川書房の日本SFへの貢献は大きい。
「椎名誠のニュートラルコーナー」は愛読している。今回は死んだあとの話。江戸時代は、人が死ぬとそのへんに死体を捨てていたらしい。だから、まわりに人骨がゴロゴロあるわけ。落語「骨つり」(草深い武蔵野はアズマエビスのイナカ落語では「野ざらし」)は本当の噺だったのだ。ただし、骨が河原に捨て置かれるのは本当で、骨に酒をそそぐと、夜中に美人の霊が「おみ足などさすり」に来るかどうかは定かではない。もし河原で骨を見つけたら試してみたらいかが。
「是空の作家・光瀬龍」いよいよ、光瀬さんが柴野拓美、星新一といった人たちと接触。「宇宙塵」に入会するくだりに入った。ますます興味深くなってくる。今後の連載が楽しみ。
 筒井康隆論。筒井康隆論になっていない。筒井がマルチメディアをいかに使い、いかに関わったかを書いただけ。筒井康隆という作家は全く論じていない。巽さん、ちゃんと監修してください。
「SF挿絵画家の系譜」連載74回を数えて、大橋博之が何をやろうとしているのか判ってきた。いままでは前ふりで、これからいよいよ本題へと入る。楽しみである。大橋さん、期待している。がんばってください。
 リーダーズ・ストーリイは、このブログの友好ブログ「サイトーブログ」の斉藤想さんが入選。入選作の「独立宣言」スケールの大きなアイデアのショートショートとなっている。ラストは手塚治虫の「火の鳥 未来編」を思わせる壮大なオチだ。
「サはサイエンスのサ」の鹿野司の文章。前から気になっていたが、今月号は特にひどかった。冒頭を引用しよう。

 季節の変わり目のせいか、ちょっと体調不良気味なもんで、今回はこれまでの進化の話の続きを一回お休みして、もう少しややこしくない話にさせてちょんまげ。  引用終わり。

 ふざけるな。「ちょんまげ」とはなんだ「ちょんまげ」とは。もっと真面目に書け。読者は自分と同輩か年下の者ばかりではないぞ。年上の者もいることを忘れている。年下の者に「ちょんまげ」などといわれるおぼえはない。
 小生もこのブログでふざけた文を書くこともある。しかし、読者を愚弄する文は書かないよう気をつけているつもりだ。鹿野の文章を読むと愚弄されたような気がする。確かに四角四面なクソ真面目な文章は読んでいて面白くない。ハメを外す必要もあろう、ふざけた文章も面白い。しかし、一線を越えて悪ふざけになってはいけない。鹿野の文章は明らかに一線をこえて、ただの悪ふざけだ。この鹿野司は、どうも文筆家としての資質に疑問を感じる。
 
 
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
こんばんは (ゲコゲコ)
2012-05-22 23:41:39
「SFマガジン」ですか・・・。
昔、一時毎月買って読んでいたことがありました。
最近は、掲載されている作家の名前も知らない名前ばかりになってしまいました。

「サはサイエンスのサ」こんな題の作品が昔あったような……。フレドリック・ブラウンだったかな? ブラッドベリだったかな? 違うなあ・・・。
アカン。思い出さん。
しょうもない野球の試合ばかり見とらんと、たまにはSF小説でも読んでみるとしましょうかねえ。
 
 
 
ゲコゲコさん (雫石鉄也)
2012-05-23 09:49:03
SFマガジン、私は、もう40年以上、毎月欠かさず買って、読んでおります。
こうなると惰性で読んでいるところもあります。
「ウは宇宙船のウ」ですね。ブラッドベリです。
阪神は、ま、あんなものですね。
私にとって、弱い阪神を応援するのと、SFを読むのは、昔から並行してやってきたことですので、特段の感慨はありません。
SF、お読みになるの、賛成です。
 
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