雫石鉄也の
とつぜんブログ
真夜中のコンビニ
カーナビが故障した。地図も持ってない。スマホで現在位置を見ようと思うが電池切れ。ようするに、ここがどこか判らない。深夜だ。午前2時半。山の中。1車線の山道。この道を走りはじめてずいぶん時間がたったように思う。
他の車を見かけなくなって1時間以上になるのではないか。先を行く車も、後ろから来る車も、すれ違う車もない。
横の藪の中で時々光るモノがある。なにか獣の目だろうか。月は出てない。新月だろうか。空は晴天だ。おそろしいばかりの星空。
この車はハイブリッドだ。ガソリンの残量はたっぷりとある。ガス欠の心配はない。走り続ければ、いずれ人里に出るだろう。とはいいつつも、いつまでたっても同じ風景がえんえんと続く。生まれた時からこの道を走っているような気がする。死ぬまで走らなくてはならないような気がする。
お腹がへってきた。そういえば、ずいぶん前にドライブインでラーメンを食べたな。あれから何も口にしていない。車内にはなにも食べ物はないはずだ。助手席に置いたバックを探ってみたが、アメ玉1個入ってない。
困った。こんな山の中、店なんかないだろう。走れども走れども山道が続く。左右は藪。両側はうっそうと木が林立している。上空には長くリボン状の夜空が続いている。そこは宝石箱をひっくり返したような星空。光があるのは天だけで、逆に地上は闇に包まれている。
ごく小さな光の点が見えた。上ではない。星の光ではない。その光は地上にある。獣の目か。違う。もっと大きい。光はだんだんと大きくなる。
建物が見えてきた。道の左側に木も藪もないところがある。広場になっていて、そこにコンビニがある。広場は駐車場だ。
日本全国どこにでもある、ごく普通のコンビニだ。真夜中の山奥。そこだけは、都会の街角が切り取られて、ポンと置いたようだ。
広い駐車場があり、その奥にコンビニの建屋がある。こうこうと明かりがともり、そこだけ真昼のようだ。
なぜ、こんなところにコンビニが。そんな疑問も浮かんだが、ともかく空腹だ。駐車場に車を停めた。車を停めるのはいつ以来だろう。エンジンをきって車の外に出る。ずうっと回っていたエンジンが止まった。車外は物理的な圧力を感じるほどの静寂。世界は静寂という物質で満たされている。
コンビニの建屋に入る。自動ドアが音もなく開く。週刊誌、簡単な文房具、カップラーメン。飲み物、お菓子。レジの横には、おでんが湯気をたてている。から揚げがケースに入っている。
レジのカウンターの向こうに店員がいる。若い女性だ。向こうを向いて、なにやら商品の整理をしている。ともかくなにか食べたい。
「すみません。おでんください」
「はい」
店員がこちらを向いた。衝撃。目が二つ。二つ目小僧だ。
「お、お化けだ」
腰を抜かしながら走った。週刊誌の棚にぶつかった。床に散乱した週刊誌の表紙のモデルは二つ目ばかりだった。
こけつまろびつ車にたどりついた。エンジンをかけてヘッドライトを点灯。三つのLEDライトが前を明るく照らす。なんか視界がおかしい。さっき眼鏡を壊したらしい。三つある眼鏡のレンズのうち真ん中のレンズが壊れていた。
しかたがない二つの目で運転する。この山道からなんとか抜け出そう。
他の車を見かけなくなって1時間以上になるのではないか。先を行く車も、後ろから来る車も、すれ違う車もない。
横の藪の中で時々光るモノがある。なにか獣の目だろうか。月は出てない。新月だろうか。空は晴天だ。おそろしいばかりの星空。
この車はハイブリッドだ。ガソリンの残量はたっぷりとある。ガス欠の心配はない。走り続ければ、いずれ人里に出るだろう。とはいいつつも、いつまでたっても同じ風景がえんえんと続く。生まれた時からこの道を走っているような気がする。死ぬまで走らなくてはならないような気がする。
お腹がへってきた。そういえば、ずいぶん前にドライブインでラーメンを食べたな。あれから何も口にしていない。車内にはなにも食べ物はないはずだ。助手席に置いたバックを探ってみたが、アメ玉1個入ってない。
困った。こんな山の中、店なんかないだろう。走れども走れども山道が続く。左右は藪。両側はうっそうと木が林立している。上空には長くリボン状の夜空が続いている。そこは宝石箱をひっくり返したような星空。光があるのは天だけで、逆に地上は闇に包まれている。
ごく小さな光の点が見えた。上ではない。星の光ではない。その光は地上にある。獣の目か。違う。もっと大きい。光はだんだんと大きくなる。
建物が見えてきた。道の左側に木も藪もないところがある。広場になっていて、そこにコンビニがある。広場は駐車場だ。
日本全国どこにでもある、ごく普通のコンビニだ。真夜中の山奥。そこだけは、都会の街角が切り取られて、ポンと置いたようだ。
広い駐車場があり、その奥にコンビニの建屋がある。こうこうと明かりがともり、そこだけ真昼のようだ。
なぜ、こんなところにコンビニが。そんな疑問も浮かんだが、ともかく空腹だ。駐車場に車を停めた。車を停めるのはいつ以来だろう。エンジンをきって車の外に出る。ずうっと回っていたエンジンが止まった。車外は物理的な圧力を感じるほどの静寂。世界は静寂という物質で満たされている。
コンビニの建屋に入る。自動ドアが音もなく開く。週刊誌、簡単な文房具、カップラーメン。飲み物、お菓子。レジの横には、おでんが湯気をたてている。から揚げがケースに入っている。
レジのカウンターの向こうに店員がいる。若い女性だ。向こうを向いて、なにやら商品の整理をしている。ともかくなにか食べたい。
「すみません。おでんください」
「はい」
店員がこちらを向いた。衝撃。目が二つ。二つ目小僧だ。
「お、お化けだ」
腰を抜かしながら走った。週刊誌の棚にぶつかった。床に散乱した週刊誌の表紙のモデルは二つ目ばかりだった。
こけつまろびつ車にたどりついた。エンジンをかけてヘッドライトを点灯。三つのLEDライトが前を明るく照らす。なんか視界がおかしい。さっき眼鏡を壊したらしい。三つある眼鏡のレンズのうち真ん中のレンズが壊れていた。
しかたがない二つの目で運転する。この山道からなんとか抜け出そう。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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凄くスリルが迫って来て面白かったです。
作品の朗読のお願いです。
どうぞよろしくお願いします。
ところで、私は二つ目ですが雫石さんはどちらでしょうか?
楽しみにしてます。
私はメガネをかけてますので、四つ目です。
でも、最近は老眼で、本を読むときは二つ目です。
一体何が出てくるのかと思ったら、二つ目^^
彼らからすれば、私たちも化け物なんですね。
自分では、少々ムリオチかなあと思っています。
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