雫石鉄也の
とつぜんブログ
県警対組織暴力
監督 深作欣二
出演 菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫、金子信雄、川谷拓三、室田日出男
監督、深作欣二、主演、菅原文太、脚本、笠原和夫、という「仁義なき戦い」シリーズのトリオによる東映実録路線映画。1970年代、「仁義なき戦い」をヒットさせた東映が、実録路線と銘打って、ヤクザの生態をリアルに描いた映画を何本か作った。この映画もそのうちに1本だが、小生はこの作品が一番よく出来ていると思う。
今回の主役はヤクザではなく警官だが、この映画は決して警察映画ではない。本作はあくまでもヤクザ映画である。舞台は倉島市という架空の都市だが、登場人物がしゃべっているのは、「仁義なき戦い」と同じ広島弁。石油コンビナートがあるし、どう見ても広島県。だからこの県警とは広島県警のことだろう。主役の菅原演じる久能巡査部長は倉島警察署の警官だが、映画は倉島署を警察署としてではなく、この街に複数あるヤクザの組同然として描いている。ヤクザも警察も同じようなモノということだろう。だから友好的な組とは、酒席を同じくしてツケは組にまわす。敵対する組には、カチコミのかわりにガサ入れをする。やっていることは組もサツもいっしょ。
だから久能たち倉島署のデカたちは、組関係者とズブズブ。飲食接待、金銭授受は日常茶飯事。特に久能は、ヤクザ抗争の一方の組、大原組の幹部広谷とは個人的な友情で結びついている。
こういう倉島署というより、倉島組といった方がいい倉島警察署に、異分子がやってきた。県警本部からやってきた若手エリートの海田警部補。海田はヤクザとの交際を一切禁止する。ヤクザと接触しなければヤクザの取り締まりができないと反発する、久能やベテラン刑事たち。海田はベテラン刑事を退職に追いやり、強引な取り締まりを続ける。
「ワシらヤクザは臭いメシ食うんが商売じゃけん。10年でも20年でも食うちゃる。じゃがな、あんたらがつるんどる議員や市長も臭いメシ食うてもらわんとな」
広谷が海田にいったセリフ。広谷の大原組は解散に追い込まれる。抗争の元となっていた倉島の海沿いの広大な土地は石油会社のモノとなる。
海田は警察を辞め、石油会社に天下る。エリートサラリーマンとなり部下たちと朝のラジオ体操。久能は田舎の派出所に左遷。不慮の死をとげる。
菅原文太がえらいハイテンションで突っ走る。大変な迫力の悪徳デカ。この迫力は「フレンチ・コネクション」のジーン・ハックマンに負けていない。特に秀逸なのは川谷演じる松井というヤクザを取り調べるところ。殴る蹴る服を脱がす。密室をいいことに大変な暴力をふるう。ここの菅原もすごかったが、それを受けた川谷もみごとなチンピラヤクザぶりで名演といえよう。
騒々しく、粗野で、乱暴で、下品で、そして滑稽で、哀しい傑作だ。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )
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宴会の座敷で中年刑事を投げ飛ばす場面は特によかった。
中年刑事投げ飛ばしシーンは、体育会系エリートのいやらしさいっぱいでした。
そして、やっぱり最後の、ラジオ体操が良かったです。
高校の時にバイトしたんですが、もう…
画面より客席の方が「密度の高い」館でした(笑)
この映画、ヤーさんの多いせいかブーイングが甚だしくブルいました。
でも、 自分達より警察の方が汚ない…てのが本職の方々はお気に入りらしく、
何度も上映されたんだよなぁ…
これと神器なき戦いシリーズが、清掃バイトの少年泣かせな作品でした。
でも、どっちも面白かったなぁ…
石井相互監督の「狂い咲きサンダーロード」です。たしか同監督の「独立博多愚連隊」との併映だったような…
私は清掃員を卒業していたので詳細は知らないのですが…
日大芸術学部の卒業製作として撮影された同作品を、監督の「狂映社」が売り込みにきて、社長が気に入ったとか…
ヒーローの仁さんがラストで披露する
全身革とプロテクターの勇姿は!マッドMAXの先を行っていた気がします。
チンピラさんの一人に「これSFってんだよな、他に面白いSFって教えろ!」
言われて、面倒なので大藪を渡したら、数週間後、サンドイッチマンをしている私の肩を叩き、
「大藪いいな!エスエフって面白いな!」
と言って、豚饅を差し入れてくれました。
いまさら、それはSFではありません…とは言えず困りました。
私の高校は、神戸の「庶民的なおじさんがたが集うまち」の近くにありました。
そのスジのおじさん、おにいさんが、よくそのへんをうろうろしておられました。なかなか面白い所でした。
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