goo

とつぜん上方落語 第6回 崇徳院

しかし、てったいのクマはんからすれば、なんとも面倒な娘やな、ちゅうこってす。ウチの若だんさんにひと目ぼれするんはええねん。なんぼでもひと目ぼれしたらええ。直接、本人に「好き」と素直にいえばええもんを、しちめんどくさいことに和歌なんぞに想いを託したもんで、こんな苦労するちゅうこった。
 若だんさん、高津のお宮で、水も滴るようなびちょびちょな美少女と出会う。その美少女、緋塩瀬の茶帛紗をわすれよる。で、その茶帛紗を手渡す。そのびちょびちょ美少女、短冊に和歌を残しよった。
「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の」これ、崇徳院さんの上の句なんですな。「われても末に逢わむとぞ思ふ」の下の句が書いてない。上の句だけ残したことは「また逢いましょう」というはんじもんでんな。
 びちょびちょ美少女もひとめぼれしはったかも知れんけど、ウチの若だんさんは、もっとひどいひとめぼれ。くだんの彼女を恋こがれて、とうとう寝ついてしもうた。あと何日かの命やて。恋わずらいは命には別状はないと思うけど。若だんさんを助けるには、そのびちょびちょ美少女を見つけ出して、想いを叶てやるしかないちゅうわけや。
 そんなわけで、てったいのクマはんが美少女探索を親だんさんから命じられたわけや。報酬は借金ぼうびきの上に過分のお礼金。さらには倉付の借家を5軒。クマはん親だんさんに、その上、欲に駆られた女房に尻をたたかれ大阪中を駆け巡る。
「瀬をはやみ」「瀬をはやみ」「瀬をはやみ」と声をからしてグルグルグル。人より場つうことで散髪屋になんべんでも入るから、ヒゲ剃り過ぎてアゴがヒリヒリ。
 クマはん、くたくたになってやっと、びちょびちょを探り当てたら、彼女も恋わずらい。なんのこちゃ。
「好きやねん」「わても」ですむことを、和歌なんかに託すから、こんな騒動になったんや。けど、クマはんは家持ちの家主はんになったんやろな。
 
 
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
« 名前のないボトル 焼肉丼 »
 
コメント
 
 
 
あのう? (アブダビ)
2016-11-20 01:22:13
崇徳院さんて檀ノ浦で三種神器と一緒になくなった天皇の事で?
10歳にもならず和歌をものとするとは。
でも海に従者に背負われて身を投げた時は在命していたわけだから「院」ではないような。
おくり名て院をつけたのかな?
どーも日本史の中世は解らない。
 
 
 
もとい (アブダビ)
2016-11-20 01:45:48
身を投げた時は在命なので→「在位」でした。
 
 
 
アブダビさん (雫石鉄也)
2016-11-20 04:45:44
壇ノ浦で亡くなったのは、安徳天皇で、崇徳院ではないです。
 
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。