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とつぜん上方落語 第14回 千両みかん


みかんや。いまは真夏や。いまは知らんが、昔は真夏にみかんなんか食えんかった。季節はずれのもんを食いとうなるとこまりもんやな。春に松茸が食いたい。秋にたけのこが食いたい。冬にすいかが食いたい。
食いとうても食えん。見とうても見えん。会いとうても会えん。普通の人ならあきらめるけど、どうしてもあきらめ切れん人がおる。その人は大店のボン。あきらめきれんで、想い悩み、とうとう身体を壊しよった。
で、心配した親だんさんが、番頭にボンの悩みを聞きだしてもろたら、みかんが食いたいという。季節は真夏である。みかんなんてない。で、番頭、大阪中駆けずり回って、みかん1個手に入れてきた。みかん1個千両。これ1個千両。だったら1房百両。番頭みかん3房もってどろんしよった。
ちゅうのんが落語「千両みかん」や。で、これが現代では、ようある話やけどアイドルにあこがれ恋し、想い悩むボンやろな。
「総務部長」
「はい。社長」
「シンヤの具合はどや」
「あいかわらず引きこもっておられます」
「シンヤはワシの息子で、この吉田電気の副社長で、次期社長やで。はよナニが悩みか聞きだせ」
「社長、わかりました」
「なんや」
「シンヤくんはHDKのアミちゃんに恋こがれています」
「HDKというと、東淀川の地域限定アイドルのアレか」
「はい」
「いくら金使ってもかまわん、HDKのアミちゃんを連れて来い」
「着きましたよ。すみませね。アミさん」
 吉田電気の吉田社長は息子と握手させるためだけにHDKのアミちゃん呼ぶのに1000万つかった。
 アミちゃんを降ろした後、総務部長が車をガレージに入れようとしたところ、アミちゃんが座っていた後部座席に髪の毛が3本。
「アミちゃん呼ぶのに1000万。だったらこの髪の毛1本100万」
 総務部長、髪の毛3本持ってどろんしよった。
 
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