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とつぜん対談 第123回 イカリとの対談

 ここは某国の領海です。確か、このあたりです。もう、かなり沖にでてきました。この海にその方は沈んでいます。今日の対談相手は海の底におられます。こういう場所の対談ですから海に潜らなくてはなりません。スキューバの道具を持ってきました。
 さて、潜水しましょう。7メートルの海底におられます。今日の対談相手はイカリさんです。

雫石
 こんにちはイカリさん。

イカリ
 はい。なんの用かな。

雫石
 少しお話させてください。

イカリ
 ワシは船から離れうち捨てられたイカリだ。ワシの話など面白くないだろ。

雫石
 いえ。イカリさんは海でのお仕事が長いんでしょう。ぜひ、お話をお聞かせください。

イカリ
 そうだな。ワシは海の仕事、それも船を係留させる仕事しかしたことがない。ワシはイカリだ。器用なことはできん。

雫石
 どんな船でした。

イカリ
 ワシは450Kgのイカリだ。そんなに大きな船ではない。

雫石
 貨物船ですか。

イカリ
 いいや。タグボートだ。

雫石
 タグボートというとどんな船ですか。

イカリ
 曳き舟だ。大きな船が入港したり出航したりする時、押したりして介添えする船だ。

雫石
 あなたがいた船はどんなタグボートですか。

イカリ
 春香丸という500tのハーバータグだ。働き者のいい船だった。神戸港で長年働いていたが、所属する海運会社が倒産して、中古船としてインドのムンバイに売られていった。

雫石
 ムンバイの船のイカリがどうしてこんな所に沈んでいるんですか。

イカリ
 ムンバイからさらにこの国の海軍に買い取られたのだ。

雫石
 海軍でタグの仕事ですか。

イカリ
 いいや。訓練用の標的だ。

雫石
 標的?

イカリ
春香丸はここの海軍の対艦ミサイルの標的になって沈没した。ワシはここに沈んでいるが船体は、ほれ、そこに沈んでいるだろ。
 

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown ()
2019-04-10 20:35:51
いかりは重たいだけに、そこに掛かる重力は、執着とか、意地を表しているように思います。

海軍話をしている処、愛国心もありそうですね。
 
 
 
隆さん (雫石鉄也)
2019-04-11 04:45:36
べつにイカリにそんな意味は持たせてません。愛国心は関係ありません。
 
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